社会の表に生きるを統べるはあまねく照らす正義の光。
社会の裏に生きるを統べるは闇に燃え立つ邪悪の業火。

ブラック・サバス BLACK SABBATH

2023/02/09改訂

本体名:ポルポ <Polpo:蛸>

超肥満体の男、巨大ギャング組織「パッショーネ」の幹部にして入団試験官

能力:組織への入団希望者を特殊な「矢」で射抜き、スタンド使いに変える

スタンド形成法射程距離パワー射程・パワー増加法
身体拡張体
+身体・能力加形体
100km以上
(本文参照)
切離パワー供給
+全操作分離

当ページの要点

  • ジョジョ5部に登場するスタンドのほとんどは、3部のスタンドと同じく「タロット」に対応している。
  • ただしそれらタロットは通常の解釈ではなく、より邪悪な解釈を与えられている。
  • ブラック・サバスが対応するタロットは「太陽」であり、その暗示は「悪融和」である。
  • ブラック・サバスは組織への入団希望者をスタンド使いに変えることで、組織を強く大きくしていく役割を持つ。

邪悪の樹(読み飛ばし可)

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宇宙・生命・人類・個人など、この世界の中で進化・成長する全てのものが、成長する際に辿る変化の共通性を図像化したものである『生命の樹』。ジョジョ3部のスタンドに深く関係するこの生命の樹には、「邪悪の樹」と呼ばれる上下逆さまに描かれた亜種が存在する。邪悪の樹とは、例えば社会の中で反社会的な組織が成長していくように、成長するものの一部が全体に反した成長を行うさまを表したものである。

「クリフォトの樹」とも呼ばれる邪悪の樹は、「邪な状態」を表す10個の円形「クリファ」と、それを結び「悪しき変化」を表す22本の小径「パス」から成る。そのパスに対応する22枚の「タロットカード」のうち、「邪に卓越せしもの」を暗示するクリファと、「邪に総括せしもの」を暗示するクリファを結ぶ「太陽」は、「構成要素の悪融和」を暗示する。

反社会的組織が邪悪な成長として行う「悪融和」は、「社会全体」とその「一部」である自分との狭間にいる者たちに働きかけて、自分の側へと強く引き込むことで行われる。例えば新興宗教が信徒に対して社会の法より自分たちの教義を優先するよう教え込むのは悪融和の好例である。この悪しき融和によって反社会的組織は、引き込んだ者たちを自分の言いなりになる体の一部として、より大きくより邪悪に栄えることになる。

そしてこの段階の反社会的組織が最も警戒することは、引き込んだ者による「裏切り」である。反社会的組織は社会全体の側に比べて「弱い」存在である。裏切る者がたとえ組織にとって「末端」でしかなかろうと、裏切りの内容によっては組織の命取りになることは充分ありうる。ゆえに反社会的組織は末端の者に対して、裏切りの対価が命で贖われるなどの警句によって深く釘を刺す。

一方で反社会的組織は、末端の者が社会と問題を起こした際には基本的に薄情である(たとえ問題を起こした原因が組織の命令に忠実に従ったためだとしても)。この理由も反社会的組織の弱い立場ゆえである。「弱い」組織にとっては末端の者を守るために社会と戦うよりは、自己防衛を優先して末端をトカゲのしっぽのように切り捨てたほうがはるかに安全策なのである。

しかし末端を使い捨てにしていくこのような環境では、人材は育ちにくく組織は主に物量面でしか成長できない。これは反社会的組織に限らず、社会全体においても同じである。社会が質的に成長するには、まず社会を構成する個々人の「質」が高まらねばならない。そしてそのために重要なことは、社会が傲慢と独善によって個々人に隷属と犠牲を強いることではなく、社会が個々人に安全や安心を与えて「信頼」を獲得し、ともに対等に歩む道を示すことである。そしてその心が世界の中で保たれるならば、世界は邪悪に道を踏み外すことなく、正しい道を成長していけるだろう。

スタンド解説

ブラック・サバスは、ジョジョの奇妙な冒険第5部「黄金の風」の登場人物、ポルポのスタンドである。

ポルポ

人型スタンドであるブラック・サバスは、貴族の装束のような黒い帽子と黒いマントを纏っている。またその口内には、生物からスタンド能力を引き出せる特殊な「矢」が収まっている。そしてマントの襟首や手の甲には、矢じりのマークが紋章のようにあしらわれている(なお、本体のポルポは体重数100kgはあろうかという超肥満体だが、スタンドのほうは普通の体型である)。

ブラック・サバス

本体のポルポは、イタリアのネアポリスを本拠地とする巨大ギャング組織「パッショーネ」の幹部である。そして彼は、幹部としての通常の仕事の他に、組織への入団希望者を面接してテストする「試験官」の仕事も行っている。このテストは基本的には組織への忠誠心を測るものであるが、それと同時に入団者を「スタンド使い」にする目的もあり、ブラック・サバスはそのために利用される。


テストにおいてポルポは、事前に用意した「発火機構を備えたもの」を試験者に持たせて面会を終える。そして面会後の試験者がそれを何らかの理由で「点火」すると、その炎の中からブラック・サバスが出現する(作中でのポルポは入団希望者のジョルノ・ジョバァーナに火の点いたライターを持たせ、火を点けたまま24時間後に戻って来るように伝え、ジョルノがそれを誤って消した後に「再点火」することでブラック・サバスが出現していた)。

ジョルノの試験に使われたライター

そしてブラック・サバスは、点火時に大きく燃え上がる炎に照らされた者を標的として、標的の「影」から「魂」を掴み引きずり出して、魂の頭部を口内から舌のように突き出す矢で射抜く。射抜かれた者はスタンドの才能を持っていれば「スタンド使い」になれるが、そうでなければ死ぬ。

魂の頭部を「矢」で射抜くブラック・サバス

なお、点火した者がすでにスタンド使いであった場合には、魂ではなく「スタンド」が引きずり出され、ブラック・サバスはそのスタンドを魂と同じように(何も考えずに)矢で射抜こうとしてくる。この場合、そのスタンド使いは自分のスタンドを使ってブラック・サバスと戦うことも可能である。ただもしこの状況で人型スタンドの頭部を矢で貫かれれば、当然その者は死んでしまう。


またブラック・サバスの能力は、人型スタンドを出現させるだけでなく、本体であるポルポの肉体にもある能力を与えている。それは「自分の肉体の全身と一部を相互補完できる」という能力であり、これは2つの能力効果をもたらす。

1つは、切り離した自分の肉体の一部から、全身を備えた人型スタンドを出現させることである。ポルポは作中でジョルノとの面会の際に「自分の指を食べて」いたが、こうして切り離され咀嚼された「肉体の一部分」は、事前に用意していた発火装置へ可燃性の燃料として混ぜ込まれる(知ってのとおり動物の肉の、特に脂肪分はよく燃える)。

自分の指を食べるポルポ

そしてこの発火装置が点火されると、その燃焼をエネルギー源としてブラック・サバスが出現する(ただし面会時はポルポが近くにいるため、そこで点火しても彼の制御によりスタンドは出現しない)。これはタコから切り離された足が、しばらくは勝手に動く現象に似ている。

もう1つの能力効果は、ポルポの肉体の手足など末端の一部分が欠損した時に、それを復元再生することである。タコが失った足を再生させるかのようなこの効果によって、ポルポは自分で噛みちぎった自分の指を再生させたのである(ただしこの能力効果は、頭部など重要器官の欠損は再生できない)。またこの再生能力は人型スタンドのほうにもあり、多少のダメージは短時間で自動的に復元する。


ブラック・サバスはいわゆる「遠隔自動操縦型」に分類されるスタンドである。そのスタンド体はエネルギー源である発火装置からはおそらく20〜30m程度しか離れられないが、一方で本体ポルポからの射程距離は非常に長い(ポルポが面会後の試験者の行動範囲を制限するのでなければ、射程距離は100km以上はあるはずである)。またこのブラック・サバスは上述したとおり、切り離された肉体の一部でしかないため、どんなダメージを受けてもポルポには何の影響もない。

ブラック・サバスは切り離された肉片から出現しているにも関わらず、簡単な「本能」を宿し自動的に活動できる。これはタコの足などにある「神経節」という器官と似た仕組みによる。神経節とは、神経が多く集まって「簡単な脳」のような機能を持ったもので、頭脳から下される司令を末端で補佐したり、頭脳が知覚できていないことに自動的に対処したりできる。

ポルポの肉体の末端に宿るスタンドエネルギーにも神経節と似た力が備わっており、これがポルポから遠く離れたブラック・サバスをロボットのように動かす本能となるわけである。

単純な神経構造で動くブラック・サバスは、反応速度が昆虫のように速く、また相手のスタンドを掴んだ後には、それを振りほどこうとする相手の動きにも機械のように瞬時に対応できる。この特性と、魂への作用に特化したスタンド体によりブラック・サバスは、本来は想定されていない他のスタンドとの戦いでも、素早い動きで渡り合い、タコが獲物を捕えるように相手スタンドを強力に押さえつけることができる。

そしてまたブラック・サバスには、「太陽の光を弱点とする」という特性がある。その特性は、かつてジョジョ1〜2部に登場した「闇の眷属」に近しいものである。

闇の眷属

この地球上における生命の進化は、基本的に物理法則に従って進んでいる。生命は物質の物理的・化学的な仕組みを正しく応用しながら、自らにより高度な自由を与えていく。それは「生命の正しい道」である。

しかしジョジョの世界では時として、「生命の正しい道」から外れ、然るべき過程を経ずして超常的な肉体能力を得た、「逸脱した生物」が生まれることがある。ジョジョ1〜2部に登場する吸血鬼や柱の男などの「闇の眷属」がそれである。しかしその外法の手段ゆえに彼らの肉体は、本来は生命に恵みを与えるはずの「太陽の光」と対立し、闇が光にかき消されるように、太陽光を弱点とすることになる。

そしてこのような「正しい道から外れた性質」は、人間の「精神」にも少なからず備わっている。非物理的な現象を起こす「スタンド」は、その表れの1つである。

ただし人の心やスタンドの「逸脱の度合い」は、闇の眷属のそれに比べればはるかに小さい。このため人間の肉体もスタンドも、太陽光によって弱体化したり消滅したりといったことは、普通は起こらない。

スタンド解説(2)

ブラック・サバスが口内に収めている「矢」は、本物の「物質」の矢ではなく、本体ポルポの持つ矢がコピーされたものである。そしてポルポが所有する本物の矢はおそらく、彼が矢に刺されてスタンド使いになった時に、彼の超肥満の肉体の中に埋もれたままになったと推測される。

こうしてある種運命的に「矢」を体内に取り込み、「スタンド使いを生み出すスタンド」となったブラック・サバスは、通常のスタンドよりも「大きく逸脱した力」を獲得することになる。

ブラック・サバスは本体ポルポの肉体能力と併せて、通常のスタンドに比べてかなり幅広い能力を持つが、それはこのスタンドの逸脱の度合い、闇の深さゆえである。それは重いブラックホールほど広い重力場の裾野を持つようなものである。

そうしてブラック・サバスは、入団試験者たちの魂を自分と同じ領域、つまりスタンドの領域へとアリジゴクのように引き込み、反社会的なギャング組織パッショーネを強く大きくしていく役割を担うことになる。

しかしそれと引き換えに大きく逸脱したそのスタンド体は、「闇の眷属」に近い性質となり、「太陽光」を弱点とする。このためブラック・サバスは直射日光を浴びると煙を吹き上げて蒸発し始め、10秒ほどで消滅に至る。ただしその耐性は吸血鬼やゾンビよりは高く、晴れた日中の屋外でも「日陰」であればダメージを受けることはない(ちなみにブラック・サバスが纏っている黒い帽子とマントは、日光を少しでも遮って人型スタンド部分を守るためのものである)。

直射日光に焼かれるブラック・サバス

「太陽光を弱点とする」性質上ブラック・サバスは、標的を矢で射抜こうとする時には「影の中」だけしか移動できない。またこのスタンドには影の強い場所を好む性質があり、広く濃い影に覆われた場所ではスタンドの全身を見せて地面や床の上に立つが、狭く弱い影の中では影の表面に貼り付いて縮こまる。また鉄柵のように隙間のある影の中では、タコのように影の形に合わせて自分の体を滑り込ませる。ただし小さい影に入っている時でも、標的を襲う時だけは、影の表面から大きく体を乗り出す。

なお「地中」など物質の内部は光が届かない場所であるが、ブラック・サバスは物質に対してはその内部に重なって存在できるほどのパワーはなく、つまり地中を移動したり物質内に逃げ込んだりはできない。またこのスタンドは最大限に縮こまっても、小石などの小さすぎる影や、石畳の隙間などの細すぎる影には入ることはできない。

入団試験者のもとで出現したブラック・サバスは、儀式めいた文言を口にしながら標的を「矢」で射抜き、その生死を見届けた後に発火装置内に引っ込む。また太陽光で消滅させられた場合は、「その」ブラック・サバスはそこで死ぬ。そしてどちらの場合でも発火装置の火は点いたままであり、もし火を消して再点火すれば、燃料内に残ったスタンドエネルギーから再びブラック・サバスが現れる。


ところでポルポが持つ「矢」は、パッショーネのボスであるディアボロが、組織を立ち上げる前に入手した6本のうちの1本である。そしてディアボロが1本だけ手元に残し、後にポルポに渡ったそれは、まず間違いなくディアボロ自身をスタンド使いにした矢でもある。

そしてこの矢によって生まれたスタンド使いのうち、ジョジョ5部作中に登場するのは、ディアボロ、ポルポ、(ジョルノ以外の)ブチャラティチームや暗殺チームなどのパッショーネ団員に、パッショーネが所有するスタンド使いの亀1匹を加えて、計22名である。

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「遠隔自動操縦は本体に影響がない」とされている理由について。
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