チャリオッツ・レクイエム CHARIOT REQUIEM

2017/10/15公開

本体:レクイエム自身

元となったスタンドの本体はジャン・ピエール・ポルナレフ、
過去の戦闘の負傷のため車椅子で生活している

能力:「矢」を守り続ける影のように真っ黒な守り人を作り出す

形成法射程距離パワー
光球 能力顕現体 各生物の背後なし
C・レクイエム 身体同形体
(が大量に重なったもの)

当ページの要点

  • レクイエムとは地球上の全生物の「集合無意識」から引き出される超能力である。
  • 集合無意識には全生物の精神が混ざり合って「均質化」されたエネルギーが眠っている。
  • チャリオッツ・レクイエムは暴走しており、周囲の生物の肉体と精神を「均質化」しようとする。
  • その能力は「前奏曲」「本編」と段階を踏んで発揮される。

灰色の未来

「生命の進化」は我々が生きるこの地球上で、数10億年に渡って行われてきた。その道のりは全体的に見てある一つの方向、より複雑な構造の生物を創造し、より高度な自由と、より幅広い適応力を獲得するという方向へ進み続けている。それはこの宇宙における進化・成長の「正しい方向」といえるものである。

しかしこの進化という現象は、真っ直ぐな水路を流れる水のように滑らかに進むことは難しい。なぜなら生命は、原子や分子という物理法則に支配される物質を材料にして作られているからである。例えばレゴ細工はレゴブロックの形状の制約を受け、作れない構造があったり、遠回しな作り方をしなければならない構造がある。

これと同じく生物の構造も、材料となる物質の制約を受け、その結果作られる生物は、生命の理想から多かれ少なかれ外れた、「いびつさ」や「醜さ」を抱えたものにならざるを得ない。

そしてこの物理的制約は、「生命進化の道」における「地形的障害」となって、生命の「正しい方向」への進化を妨げる。このため生命は時として、障害物に阻まれて「正しい方向」へ抜け出ることができずに延々さまよい続ける「灰色の未来」に陥ったり、いつの間にか「悪しき方向」に針路を取る「真紅の未来」へと進んでしまったりする。

「灰色の未来」での生命は、進むべき方向はわかっているが、その方向に破壊不可能な壁があって先へと進めない状態である。このときに必要なことは、一度思い切り道を踏み外して抜け道を探すことである。それができずにいつまでも壁の近くでまごついていれば、生命の勢いは少しずつ失われ、熱湯が冷めきってしまうような終局を迎えることになるだろう。

能力解説

チャリオッツ・レクイエムは、ジョジョの奇妙な冒険第5部「黄金の風」に登場する、ジャン・ピエール・ポルナレフのスタンド「シルバーチャリオッツ」を特殊な「矢」で貫くことで発現した、「レクイエム(鎮魂歌)」と呼ばれるスタンドを超えた存在である。

その特殊な矢は、古代人が作り出したとされるスタンド能力を引き出す6本のうちの1本であり、この1本には他の矢とは異なる特別なパーツが付いている。

生物を矢で貫くことによって発現する「スタンド」は、その生物一個体の「個性」が能力となって引き出されたものである。それに対して、スタンドをさらに矢で貫いて引き出される「レクイエム」は、生物の精神のさらに奥深く、地球上の生物すべてに共通する「集合無意識」から引き出される。つまりレクイエムは集合無意識を本体とする能力である。

地球上の生命進化とともに成長してきた集合無意識には、「正しい方向」へ進化しようとする力が備わっており、上手く使えば強大な邪悪を滅する切り札となる。しかし一方で集合無意識は、地球上の全生物の精神を混ぜ合わせて「均質化」したものであり、本来霊的な領域にあるべきそれを物質世界に呼び出せば、パンドラの箱を開いたような「災厄」をもたらす恐れもある。つまりレクイエムの力は両刃の剣であり、軽々に使われるべきものではない。

過去の戦闘で片目・片手・両足を失ったポルナレフは、シルバーチャリオッツも同じ姿となってほぼ再起不能の状態にあった。このためシルバーチャリオッツから発現したチャリオッツ・レクイエムは暴走し、世界に災厄をもたらす。その災厄とは、周囲のすべての生物を肉体的・精神的に「均質化」してしまうことである。


「矢」に貫かれたシルバーチャリオッツはまず、「正しい方向へと進化した力」を自身に宿らせようとする。しかしチャリオッツの器不足ゆえにそれは失敗し、チャリオッツはドロドロに溶けながら周囲に光を放つ。この光は「正しい方向へと進化した力」の表れであり、チャリオッツから周囲に拡散されたそれは、チャリオッツの周囲にいる全ての生物の「精神の背後」に「光の球」を作り出し、そこに留まる(なおこの光球は誰にも存在を自覚できないという性質があるが、それについては後述する)。

ピンポン玉ほどのこの光球は、個々の生物の頭部の背後からその精神を照らして「影」を作り出す。そして全生物が作り出す無数の影はチャリオッツのいる場所で交わって影を濃く深くする。これによってチャリオッツは「精神の影の集合体」として、ドロドロの状態から再生する。

こうして再生したチャリオッツ・レクイエムは、シルバーチャリオッツとは全く異なる姿を持つ。その外観は服を着た人間のようであるが、その全身は衣服も肌も余すところなく艶のない黒色に染まり、まるで黒いプラスチックのようである。その頭部はつば広の帽子を目深に被っており、奥に見える顔は全くの無表情で眼光も見えない。またその両肩には大きな円形の飾りが3つずつ計6つ付いており、首筋には「矢」を押し付けた形のアザがある。

そしてC・レクイエムは自分の存在を維持するため、自分を生み出した「矢」を手に持ち、それを守り続けようとする。

なおこの姿を得たC・レクイエムは本来の本体であるポルナレフから自立した独り歩きの状態となり、その後はポルナレフが死のうと消滅することはない。またC・レクイエムの体は「実体化」しており、一般人にも見たり触ったりできる。ただこれは「物質化」ではなく、周囲の全生物に「影」として認識されることによって、まやかしの存在力を得ているだけである。その証左としてC・レクイエムには太陽光による影はできない。

そして物質世界に顕現したC・レクイエムは、自らの体を「門」にして集合無意識の領域から「均質化されたエネルギー」を大量に引き出す。これによってC・レクイエムの周辺地域はこのエネルギーに満たされ、「均質化の力場」が作り出される。その半径は少なくとも数km以上に及ぶ。

作中でC・レクイエムは夜間に発動され、周辺地域の全生物は、耐え難い脱力感と眠気を感じて為すすべもなく「眠り」に落ちている。これはおそらく「均質化のエネルギー」によって、「生物は夜眠る」という平均的な本能が強力に刺激されたためである。そして全生物は夜が明けるまで眠り続けることになる。

またC・レクイエムは周囲の生物を眠らせると同時に、生物たちの精神を「別の肉体に入れ替える」ということも行う。これはC・レクイエムの目的である「肉体と精神の均質化」の一環である。通常生物の「精神」と「肉体」は互いに互いを補強しあって自分の「個性」を強く保っている。C・レクイエムがこの保持力を破って「個性を奪う均質化」を行おうとすると、かなり時間がかかってしまう。

そこでC・レクイエムはこの保持力を削ぐために、彼らを眠らせて精神と肉体のつながりが弱まった隙に乗じて精神の入れ替えを行い、精神と肉体に大きな齟齬を生じさせることで、均質化を行い易くするのである。

この精神の入れ替えは、単純に近くで眠った二者間で行われ、三者間以上で行われることはない。また生物としての構造があまりに違いすぎるもの同士での入れ替えは起こらず、人間が犬猫や亀などと入れ替わることはあるが、昆虫は昆虫同士でしか入れ替わらない。

そして入れ替えられて目覚めた生物たちは、その後しばらくしてから「肉体と精神の均質化」が始まる。その現象は生物自身が直接均質化されるのではなく、肉体の脇から「別の肉体が現れ出てくる」という形で起こる。別の肉体はその生物が均質化された姿であり、知性のない不気味なうめき声を上げ、そして本来の肉体もこの侵食で意識が虚ろになっていく。

作中ではこの変質が行き着くところは描かれなかったが、最後には別の肉体が本来の肉体と完全に入れ替わってしまうと見て間違いない。またスタンド使いは一般人よりも侵食への抵抗力は高いが、それでも最後の訪れが多少遅れるにすぎない。

そしてこの終局を阻止するには、C・レクイエムから「矢」を奪って災厄を中断させるしかない。しかしそれは正攻法では不可能に近い。その理由は矢が「全生物の影の集合体」であるC・レクイエムによって「共有」された状態になっており、誰か一人が矢を「独占」することを阻止するからである。

まずC・レクイエムの戦闘能力自体は全く脅威ではない。「均質化された精神」を持つC・レクイエムには「意志」と呼べるものは特になく、矢を手にしたまま当てどなくゆっくり歩く程度の行動しか取らない。またC・レクイエムは自身への攻撃に対しては反撃することはなく、手足をもがれようが頭を撃ち抜かれようがやられるままである(ただC・レクイエムは「実体を持った影」でしかないため、これらの負傷は10秒程度で自然に復元する)。

問題はスタンド使いがC・レクイエムから矢を奪おうとするか、C・レクイエムが落とした矢を拾おうとする時である。「精神の影の集合体」であるC・レクイエムには、矢を取ろうとするスタンド使いの精神の影も含まれている。それを通じて「矢を取ろうとする行動」を感知したC・レクイエムは、そのスタンド使いが持つスタンドを操り、矢を取るのを妨害する。この妨害行動は、スタンド使いが矢に向ける力が強いほどに強まり、下手をすると自分のスタンドに殺されてしまう。

ちなみにC・レクイエムの能力下では、スタンド使いが持つスタンドのパワーは劇的に増大している。これはC・レクイエムを通じて集合無意識の領域から溢れ続けている「無個性なエネルギー」が、スタンド使いたちに共有資産として与えられているためである。逆にC・レクイエムの側はこのエネルギーを利用して、矢を取ろうとする者のスタンドを本体の意に反して操れる。

一方でスタンド能力を持たない「一般人」が矢を取ろうとした場合には、C・レクイエム自身がスタンド使いのスタンドと同じ役割を果たし、全力で襲い掛かってくる。そしてこの時のC・レクイエムは、その一般人を完全に始末するまで攻撃をやめない。

また生物が小石などを矢にぶつけようとした場合には、その物体が瞬間移動してその生物にぶつかり返ってくる(この現象はジョルノ・ジョバァーナのスタンド「ゴールド・エクスペリエンス」で生み出された生物が初期に見せていた攻撃反射に似ている)。

このようにC・レクイエムの能力は「矢を守る」という点においては無敵に近い。だがこの能力には簡単な抜け道があり、それは前述した「光球」を破壊することである。ただしこの手段は気付くのが容易ではない。

個々人の精神の背後にある光球は、背後にあるため当人には知覚できず、また他者の光球は見えないという性質がある。このため誰も光球の存在と、それによってC・レクイエムが作られているというからくりを知ることはできない。だがもし誰かがこの真実を暴き、自身の頭部の背後を自身のスタンドで攻撃すれば、光球は簡単に破壊される。

そして全生物の誰か一人でも光球を完全に破壊すれば、C・レクイエムが得ていたまやかしの存在力は失われ、その体は爆散して消滅する。そしてC・レクイエムが作り出していた力場内には霊的なエネルギーの風が吹き荒れ、入れ替わっていた精神は風に乗って本来の肉体へと戻り、変質していた肉体も元どおりに治る。

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