パール・ジャム PEARL JAM
本体名:トニオ・トラサルディー
世界各地で修行を積んだイタリア料理人
能力:肉体の不調や病気を治す料理を作る
スタンド形成法 | 射程距離 | パワー | |
---|---|---|---|
パール・ジャム | 能力顕現体 +α(本文参照) |
数m程度 | 低 |
料理 | 外体拡張体 | 数10m以上 | − |
当ページの要点
- ジョジョの世界の大地には、生命活動を促進する霊的なエネルギーである「大地の霊薬」が存在している。
- トニオはこの「大地の霊薬」を濃縮して果実型のスタンドとして生み出し、料理の材料として使うことができる。
- こうして作られた料理は「大地の霊薬」の効能により、常軌を逸した治療効果を発揮する。
大地の霊薬
ジョジョの世界には、世界をあまねく満たし、物質や生物に宿っている霊的な力である「知性」なるものが存在する。この知性はそれが宿った物質・生物の構造などを情報として「記憶」し、またその情報を周囲に信号として「発信」する性質を持っている。
そしてこの知性は、例えば動物に宿ってその生命構造を記憶した後にその動物が死ぬと、死体が分解され土へと帰っても、土の中で動物であった時の生命構造を記憶し続ける。そして生命の自由を失った土の中でその知性は、再び生命の自由を得るために暴れもがき、そのエネルギーはその場所で起こる生命活動を促進する効果をもたらす。
「大地の霊薬」とでも言うべきこのエネルギーは、どの土地にも大なり小なり存在し、食物連鎖によって人々が口にする食材の中にも宿る。ただしそのエネルギーは非常に微弱であり、生命の歴史の中では塵が積もって山になるかのように大きな効果を発揮するが、人々の日常的な食事の中では、目に見えるほどの効果を発揮することは無い。
スタンド解説
パール・ジャムは、ジョジョの奇妙な冒険第4部「ダイヤモンドは砕けない」に登場するイタリア料理人、トニオ・トラサルディーのスタンドである。
イタリアで生まれ、中国・アマゾン・アフリカなど世界中で料理の修行を積んできた彼は、その技能の発展形としてスタンド能力に目覚めた職人のスタンド使いであり、4部では杜王町にイタリア料理店を開いている。
世界各地をめぐって「食」を深く探求し、調理技術だけでなく薬学や食物連鎖によるエネルギーの循環にまで知識と体験を深めたトニオは、ジョジョの世界において土へと帰った生物が大地に残す、霊的な生命力の残滓である「大地の霊薬」を知覚する才能に開眼する。
さらにトニオは、大地に溜まっているそのエネルギーを吸い上げ濃縮して「果実型のスタンド」として生み出すスタンド能力を獲得する。そして彼はその果実型スタンド、パール・ジャムを自分の料理に食材として使うことで、料理に尋常ならざる「薬効」を与えることができる。
パール・ジャムのスタンド体は、ミニトマトサイズの小さく丸い果実に顔と腕を付けた姿をしており、「ヘタ」に当たる部分からは茎のような突起物が伸び出ている。果実の表面にある顔は、つり上がった目と牙の生えた口から成るコミカルながらも凶暴な顔立ちをしており、果実の下方両脇から生える小さな腕は、人間のそれと変わらない肩・上腕・前腕・5本の指を備えている。またその両手の甲には、パール・ジャムの果実とヘタの形状をそのまま小さくした形の飾りが付いている。
「生物の死体」を源とする「大地の霊薬」から作り出されているこのスタンド体には、その顔立ちどおり少しばかり凶暴な「本能」が宿っており、トニオのそばでは大人しいが、目の届かない場所では「ギッ」と唸ったり「メッシャアーッ!」と叫んだりする。また、このスタンドの半ば人型のような姿は、「大地の霊薬」に残る「生物だった時の記憶」を反映したものであり、トニオの身体との対応によるものではない(つまりこのスタンドが砕かれたり食されたりしてもトニオへのダメージはない)。
トニオは店での接客にあたり、まずは相手の「両手」を見て、相手の肉体がその時に抱えている「不調」や「病気」を見極める。この特殊技能は、「大地の霊薬」の存在に気付いたのと同じく、トニオの霊的な知覚能力によるもので、肉体内の生命エネルギーの循環の乱れや停滞から問題のある身体箇所を特定していると考えられる。そしてその上でトニオは、相手の不調や病気をひととおり治療できるコースメニューを組み立て、調理に移る。
パール・ジャムの果実内には「大地の霊薬」のエネルギーが栄養素としてたっぷり詰まっており、トニオはそれを調理過程で料理の中に溶け込ませる(具体的な手法は不明)。こうして完成した料理は、外見的には普通の料理と変わりないが、「物質と一体化したタイプ」のスタンドのようなものになっており、その料理がもともと持っている薬理学的な効果が桁外れに増大している。
この料理が食されると、その物理的成分と「大地の霊薬」は1分足らずで肉体に常軌を逸した薬効を与え、患部での治療を開始する。その治療手法は絶大な治癒力に物を言わせたスクラップ&ビルドであり、不調な肉体部分を涙や垢などの老廃物として、あるいはより直接的な破裂などによって丸ごと体外に捨て去り、しかる後に失われた肉体部分を高速で再生する。
店内で繰り広げられるその光景は、第三者からは異様そのものにしか見えないが、治療されている当人はマッサージや整体を受ける時のような「疲れや痛みが流れ出ていく」感覚があるためか、比較的楽観的な反応を取る(作中での億泰がそうであったように)。そしてトニオもそれをわかった上で接客しているようである。
トニオが完成させた料理の中ではパール・ジャムの姿は見えなくなっているが、それが持っていた「牙の生えた口」と「複雑に形作られた腕」の機能は消えたわけではない。おそらくパール・ジャムのスタンド体は、その全身像と手の甲の飾りが示すように「自己相似」的な性質を持ち、料理の中に溶け込んだそれは見えないほど小さい無数のパール・ジャムとなり、ナノマシンのように分子レベルで作業を行っている。
そして分子サイズとなったパール・ジャムは、肉を破棄したければそれに噛みつき咀嚼して垢へと変え、歯などの硬い部位を破棄したければ全員で持ち上げて吹き飛ばし、その後に運んできた料理の成分や周囲の肉体内の成分を資材にして肉体の再生を開始する。分子サイズのパール・ジャムが持つ複雑な腕による再生作業は、パワフルかつ迅速かつ精密であり、再生された肉体部分は見た目に歪なところもなく、既存の肉体部分に完全に馴染んでいる。
またパール・ジャムは、破壊する肉体部位の周囲を、工事現場の保護ネットや交通整理のようにガードする作業も行っていると考えられ、工事に伴う出血や痛みは可能な限り抑えられている。
ところで、トニオが生み出すパール・ジャムのパワーは、「大地の霊薬」が多く溜まっている場所ほど強くなり、ジャングルのように生命が豊かに生まれ死んでいく場所では強く、「死体」を遠ざけられた町中では弱い。また人間の治療を主眼とするトニオの料理では、「人間の死体」から生まれた「大地の霊薬」が、油田のように消費されることなく溜まっている場所ほど望ましい。
そしてトニオは杜王町で開店するにあたって、当然そのパワーが強い場所を選び、作中では町外れの霊園のそばに店を構えている(「イタリア料理を食べに行こう その1」の冒頭に描かれた杜王町の地図では霊園(┴に似た地図記号)はかなり広く、そこには火葬が法制化される前に土葬された遺体がかなりあると思われる)。
トニオが作る料理の治療効果は、食材が持つ薬理学的な効能が高いほど、トニオの調理技術が高いほど、パール・ジャムのパワーが高いほどに増す(一方、作られた料理が時間経過で劣化したり、料理とトニオがあまりに離れすぎると治療効果は落ちる)。その治療効果は作中において、疲れ目・肩こり・下痢・水虫を容易く治し、永久歯の虫歯さえ生え変わらせるほどに強力である。ただこの能力にもやはり限界はあり、通常の医療が及ばない難病にはパール・ジャムも無力な場合が多い。
しかし難病が相手でも特殊な食材、地域の伝承として語り継がれるような「神がかりな力を持つ食材」を使えば、治療できる可能性はある。そのような食材が採れる場所は、人間の死体から得られる「大地の霊薬」が膨大に溜まっており、かつそれが食材に濃縮される環境が整っている場所であろう。そして「大地の霊薬」をたっぷり蓄えて生育した食材は、パール・ジャムと併せることで難病をも治癒する奇跡の料理となる。ジョジョの外伝「岸辺露伴は動かない」シリーズの一作「密漁海岸」で、トニオの恋人ヴェルジーナの脳腫瘍を治したクロアワビは、まさにそのような食材である。
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