スタンドを引き出す「矢」の原理と個性

■ジョジョの奇妙な冒険第4部から登場する「矢」は、生物からスタンド能力を引き出せる特殊な道具である。この道具は初期には「弓と矢」と呼ばれ、弓とセットで扱われていたが、重要なのは特殊な素材で作られた「矢じり」の部分だけである。

■そしてこの矢じりが生物に刺さると、その生物は「スタンド使いになる」か、さもなくば「死ぬ」。そうなる原理は以下に説明するとおり、極めて単純である。

■スタンド能力とは、物質世界のものとは異なるエネルギーを何処かから引き出し、そのエネルギーを使って発揮される力である。そしてその「何処か」とは即ち、生物の中にある「霊的な領域」である。そして「矢」は、物質世界から霊的な領域へとつながる「穴」を空ける機能を持つ。この結果その生物は強制的にスタンド能力を引き出されるわけである。

■ただしこの乱暴な原理ゆえに、スタンドの才能を持たない者が矢に射抜かれれば、形を成せないエネルギーが「穴」からだだ漏れに流出し、そのまま死んでしまうことになる。

■また矢は5部になってから、その素材の起源が明かされている。矢はグリーンランドのケープヨークという場所に数万年前に落ちた隕石から、古代人が作ったものである。そしてこの隕石の内部には、特殊な「ウイルス」が閉じ込められて眠っている。

■このウイルスが隕石と共に宇宙から飛来したものか、それとも隕石落下の影響で地球上のウイルスが変異したものかは不明である。ただいずれにせよ、このウイルスには普通のウイルスとは異なる「霊的な特性」がある。それはある種の生物が持つ「光に向かおうとする」性質にも似た、「霊的な領域に向かおうとする」特性である。

■この特性によって「矢」は生物に刺さる時、その生物の霊的な領域へと軌道を曲げられ、霊的領域につながる穴を開けることができる。またこの影響で、矢が刺さることによる肉体的な傷も、見た目よりは軽くなる。(そしてその傷もスタンド能力が目覚めた場合にはすぐ治るのだが、ここでは詳しくは触れない) 

■またこれに関連して、「矢」はただ単に隕石を「矢」の形に切り出しただけのものではない。未加工の隕石は例えるなら「磁石化されていない鉄」のようなものである。そしてこのような隕石でただ生物を傷つけても、スタンド能力を引き出すほど深く大きな穴を開けることはできない。(ただしそれで傷つけられた生物が死なずに済むかというとそうでもなく、霊的領域への浅く微小な穴が無数に開いて、やはり死んでしまう。113話で語られた、全身がトマトソースのようになって死んだケープヨークの作業員がそれである) 

■古代人は何らかの方法で、ウイルスが向かう「霊的領域への指向性」を磁石のように揃えた上で、「矢」の形に加工している。この結果「矢」は磁力のような力を得て、生物の霊的領域へと深く大きな穴を開けることができるわけである。

■古代人が作った矢は全部で6本あり、その一揃いは5部130話「ほんの少し昔の物語」で描かれている。その外観は、4本が全く同じデザインで、1本は前述の4本には無いパーツが付いており、残る1本の外観は他の矢の影に隠れて不明である。

■そしてこれら6本の矢には1本1本「個性」があり、それぞれで特性が異なる。ただその理由が、矢に閉じ込められているウイルスの量の差によるものか、あるいは矢の中のウイルスに複数の種類があってその配合によるものか、あるいはさらに別の理由なのかは不明である。

■では以下で、作中で描写された矢の特性を1本1本見ていく。

虹村形兆の矢

虹村形兆が所有し、ジョジョ4部の前半に登場するスタンド使いの多くを生み出した矢。作中で初めて登場したこの矢は矢としての最低限の機能、つまり「刺した生物からスタンド能力を引き出す」機能しか持たない。

このため形兆はこの矢でスタンド使いを増やすにあたって、「異常な者ほどスタンドが目覚める可能性が高い」という情報をもとに、異常な者を手当たり次第に射抜き、能力が目覚めなかった者を何人も殺す結果になっていた。

吉良吉廣の矢

吉良吉廣が所有し、吉良親子やジョジョ4部の後半に登場するスタンド使いの多くを生み出した矢。この矢は形兆の矢と違い、「スタンドの才能を持つ者を方位磁針のように指し示す」機能がある。そのためこの矢は効率的にスタンド使いを増やすことができ、また相手が死ぬ心配もない。

またこの矢は4部終盤で、キラークイーンのスタンド使い吉良吉影の肉体に強く引っ張られて自動で刺し貫き、バイツァ・ダストという追加能力を引き出してもいる。

ポルポの矢

ポルポが所有し、ジョジョ5部に登場するスタンド使いのほとんどを生み出した矢。ただし作中ではこの矢は、ポルポのスタンド「ブラック・サバス」によってコピーされたものが使われている。

そしてこの矢は4部の2本とは異なり、生物の霊的領域のうち「邪悪な面」へと向かい、穴を開ける特性を持つ。この結果この矢で生まれたスタンド能力は、4部のものより邪悪で凶悪な能力が多い。

レクイエムの矢

上記3本の矢とは外観が異なる矢。他の矢じりは中央部に目立つ穴が空いているが、この矢だけはそこを埋める形で独特な形状のパーツが付いている。

この矢は2001年のジョジョ5部においてポルナレフが所有し、またジョジョ6部の過去回想の1980年代後半では、DIOからプッチ神父へと手渡されている。(ただし5部と6部の矢は別の矢である可能性もあり、その場合前述した外観不明の矢が同じパーツ付きの矢ということになる) 

この矢は6本のうちでおそらく最もパワーが強い。まずこの矢は吉良吉廣の矢のように、スタンドの才能が眠る者を方位磁針のように指し示すことができる。そしてもちろん通常の使用法どおりに、生物を刺してスタンド使いにもできる。(なおこの矢がプッチを刺してスタンド使いにした時にはこの矢の強力さゆえか、彼の二卵性の双子であるウェス・ブルーマリン(ウェザー・リポート)にもプッチと同じ場所に矢傷が表れ、スタンド使いに変えている) 

そしてさらにこの矢には、この1本だけに可能な機能が1つある。それはすでにスタンド使いになっている者から出現している「スタンド」を刺すことで、「レクイエム」と呼ばれるスタンドを超えた力を目覚めさせることである。

生物ではなくスタンドを刺して発現するレクイエムは、個々の生物の霊的領域よりさらに下層の領域、地球上の全生物の霊的な土台である、いわゆる「集合無意識」への穴を開けることで目覚める能力である。

そしてレクイエムの矢だけに付いている、昆虫か宇宙生物を思わせるパーツはおそらく、レクイエムによって物質世界に現出した集合無意識を、格納して留めおくための「器」である。集合無意識は人間とは全く異質の情報構造を持ち、それゆえにレクイエム化したスタンド使い本体の「脳」に直接収めることはできないのである。

このことは作中に登場した2体のレクイエムの描写とも符合している。集合無意識の制御に成功した「ゴールド・E・レクイエム」では、矢は本体であるジョルノ・ジョバァーナの精神に寄り添うように、ゴールド・Eの額に収まっていた。そしてジョルノの意識が及ばない「キング・クリムゾン」の能力下では、ジョルノの代わりに矢に宿る意識がゴールド・Eの口を借りて喋っていた。

一方で集合無意識が暴走した「チャリオッツ・レクイエム」では、能力によって生まれた黒い人型の像は、矢を手にして守り続けることしかできなかった。またこのレクイエムが持つ「攻撃を反射する能力」も矢に対してだけ発動され、黒い人型の像の方はどれだけ攻撃されても反射能力を使うことはなかった。つまりチャリオッツ・レクイエムにとって「守るべきもの」は全て「矢」と「矢の中」にあり、人型の像の中にはないわけである。


■なおジョジョ6部の序盤では、空条承太郎から娘の徐倫のもとに「矢の欠片」が送られ、徐倫他数名はこの欠片でスタンド使いになっている。この矢が上記の4本のいずれかなのか、あるいは残る2本のどちらかなのかは不明である。ただこの欠片の容器として用いられたロケットペンダントは、「レクイエムの矢」だけに付いている独特なパーツを模したデザインになっている。

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