ブローノ・ブチャラティの分水嶺

■ブローノ・ブチャラティはジョジョの奇妙な冒険第5部「黄金の風」に登場する20歳の青年である。彼は心優しい性格でありながら、12歳のときに抜き差しならない状況からギャング組織「パッショーネ」の一員となり、裏社会で汚い仕事に手を染めながらも、自分なりの正義を守りながら生きてきた。

■そして彼はある日、パッショーネの一員である「涙目のルカ」が変死した事件の犯人を始末する命令を受け、その捜索の途中で5部の主人公ジョルノ・ジョバァーナに接触する。その際のブチャラティの性格は、以降の彼とは大きく異なるのだが、それは「演技」であり、また必然性のあるものである。(詳しくは後述する) 

■ジョルノに会う前にブチャラティが得ていた情報は、「ルカが変死した空港にジョルノがいた」「ジョルノという少年は15歳ながらチンピラまがいの悪事を働いている」の2つである。そしてブチャラティは前者に関しては、15歳の少年がルカの変死に関わった可能性はなく、しかし犯人を目撃した可能性はあると考えた。

■一方後者の情報はブチャラティにとって憂うべきものであった。ブチャラティはギャングの世界に少年が関わるべきではないと考えており、そのようなケースに自分が関わった際には真っ当な生き方に戻すのが自分の責務だと考えている。(これは後に描かれたナランチャの過去エピソードでもそうである) 

■そしてブチャラティはルカについて質問する前に、まずはジョルノがどの程度道を踏み外しているかを判断するため、人当たりのよい態度でジョルノに近づき、「1000万円拾ったらどうするか」「それを警官に見られたらどうするか」を尋ねる。

■真っ当な人間にとっては小金はまだしも大金をネコババするのは非常に心臓に悪い。ましてや警官に見られてなおネコババを試みようとは思わない。しかしジョルノはためらいなく「ネコババする」「警官に半分渡して目をつぶってもらう」と答える。そしてブチャラティは自分が持つ「ウソを見抜く」特技でそれが完全に本気の本音であると知る。

■この返答でブチャラティは、この少年の心がかなりまずいレベルまで悪に染まっていることを把握する。そこで次にブチャラティは、ギャングの本性をさらけ出したかのような冷酷な態度に切り替わり、持ってきた「ルカの目玉と指」、そして自分のスタンド「スティッキィ・フィンガーズ」のジッパーの能力でジョルノを脅す。またその際にブチャラティは、ジョルノがかいた汗を舐めてウソを見抜き、「ジョルノがルカに会っていた」ことを知る。

■ここからブチャラティがジッパーの能力でジョルノに行った「拷問」は、ジョルノに口を割らせるのは当然として、もう1つ目的がある。それはこの少年にギャングの世界の異常さを味わわせて二度と関わる気を起こさせないことである。つまりこの時点でのブチャラティはジョルノに悟られないように手加減しており、ルカに関する情報を聞き出せば解放し、後は更生してくれることを願って終わるつもりだった。

■しかしブチャラティの目論みは、ジョルノが「スタンド使い」であり、ジョルノ自身がルカを変死させたと知ることで崩れ去る。

■こうなってしまえばブチャラティはもうジョルノを見逃すことはできない。涙目のルカの横暴な性格を考えれば、この事件がジョルノの言うとおり「事故」だったのは間違いない。しかしどんな事情があろうと、相手が15歳の少年であろうと、ドロをぬられた組織は犯人を許さないことをブチャラティは理解していた。

■そしてジョルノが自分の身を守るためにスタンドで戦いを挑んでくるなら、ブチャラティは自分の手でジョルノを始末するしかない。それはルカが事故で死んだ責任を未来ある少年の命で贖うという組織の論理を、実行によって肯定することに他ならない。

■仮にここでブチャラティが勝ち、ジョルノを組織の面子を守るための生贄にしていたなら、ブチャラティがギャングの世界の中で何とか保ち続けてきた「正義の心」は折れてしまっていただろう。そしてその後の予想としては、「ボスの娘の護衛」をポルポから指示され、チームの何人かを犠牲にしながらもボスの下まで連れていき、そこで任務の目的がボス自身の手で自分の娘を始末するためだったことを知るだろう。

■そしてブチャラティは、ボスがボス自身を守るため15歳の少女を始末する行動に、数日前の自分が15歳の少年を始末した行動を重ね、正義の怒りを感じることができず見殺しにしていただろう。

■しかし実際には、ブチャラティはジョルノとの戦いの最後に、「正義の心」から生まれた一瞬のためらいでジョルノに敗れ、その後ジョルノに予想外の提案を受ける。それはブチャラティにとって、ギャングの世界で「ゆっくりと死んでいくだけだった」心が生き返る出来事であり、そして彼はジョルノの共犯者としてボスに反逆する正義の戦いを始めることになる。

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