科学力と愛国心の奇跡ルドル・フォン・シュトロハイム

■ジョジョの奇妙な冒険第2部「戦闘潮流」に登場するルドル・フォン・シュトロハイムは、主人公ジョセフ・ジョースターと共に超常生物「柱の男」と戦うナチスドイツの軍人である。

■彼は最初は生身の人間として登場したが、柱の男の一人サンタナとの戦いで、髪をむしられたり脚を切らせたり肉体を乗っ取られかけたりした果てに手榴弾で爆散し、肉体を完全に失う。しかし彼はナチスドイツの科学力で機械化人間として蘇る。

■復活したシュトロハイムの姿は一見すると人間のままであり、頭部から胸にかけては生身の皮膚をしているが、軍服と手袋の下は完全に機械化され、機械体がむき出しになっている。またその頭部は右目から右耳周辺が機械に覆われている。

■機械体となった彼は柱の男とも渡り合える怪力を備え、また上半身だけになっても死にはしない。さらに胴体には重機関砲、右目には紫外線照射装置、腕にはロケットパンチなどが仕込まれている。

■「肉体賛歌」がテーマとされるジョジョ1〜2部の世界では、シュトロハイムの機械体は一見かなり逸脱している。しかしジョジョ2部は2000年の眠りから覚めた柱の男に対して、人類が同じく2000年の成果で立ち向かう物語である。それは波紋戦士の一族が受け継いできた「波紋法」であり、ジョセフが駆使する「手品や奇術のトリック」である。同様にシュトロハイムは人類が発展させてきた「科学力」の立場から柱の男に立ち向かう存在なのである。

■ジョセフはシュトロハイムが死にかけの肉体を機械で補って生き長らえたと考えていたようだが、実際の彼は肉体的には死んでいる。彼が自爆に用いたドイツ製のM24型柄付手榴弾は別名「ポテトマッシャー」と呼ばれ、文字どおりジャガイモを潰すように肉体を木っ端微塵にする。万に一つ脳などが爆破から免れていたとしても、赤道に近いメキシコの真昼では早々に細胞レベルで死んでしまったはずである。(ちなみに彼が爆散したドイツ軍の秘密施設にスピードワゴン財団が到着し、石化したサンタナを回収したのは数時間後のことである) 

■ではシュトロハイムがどうやって復活できたのかといえば、それはナチスドイツのオカルト的科学研究が生んだ、「霊的な技術」によるものである。

■ジョジョ作中でのナチスドイツは、ヒトラー総統の思想のもとに国家規模で大真面目に超常科学を研究していた。そしてジョジョの世界には実際に超常的な力が存在している。結果この異端の研究は実を結び、ナチスはオカルトの力を加えた世界一の科学力を得る。そこで生まれた技術の1つが、「魂を機械体に宿らせる」技術である。

■人間の「魂」は本来であれば、「自分の肉体」それも「生きている肉体」にしか宿れない。ゆえに肉体が生命活動を停止すれば、魂は肉体を離れてこの世から去ってしまう。このような魂を、ナチスドイツの医学薬学科学力を結集して、死した肉片と機械で作り上げた体に宿らせる技術によって、シュトロハイムは蘇ったのである。彼の顔など生身に見える部分は、おそらくは爆散後に残った皮膚などを防腐処理して利用したものであり、機械体に魂を呼び戻し、定着しやすくする役割がある。

■この霊的な技術では、魂と機械体は神経的に繋げられている。このためシュトロハイムは機械体を生前の肉体と変わらず自在に動かせる。そして機械体が受けたダメージや寒さもある程度感じ取れる。

■また柱の男カーズによると、シュトロハイムの体は「体温」を発していない。(発していたとしてもせいぜい小型照明器具程度の温度である) このことからシュトロハイムの体は内燃機関ではなく、「霊的なエネルギー」を主動力としていることが分かる。

■なお余談だが、シュトロハイムの階級は生前は「少佐」、復活後は「大佐」である。これは彼が肉体的に死んだ際に、日本で言う「殉職による二階級特進」と似た事由で昇進したのだろう。

■この技術はある種の不老不死を実現しているが、しかし機械体に魂が定着するには後述する稀有な適性が必要である。またこの技術には、「国家」が持つ霊的な力と、その状態も深く関係している。

■ジョジョの世界では「個々人の肉体」に霊的なエネルギーが宿るのと同じく、人が集まって作り出す「国家」にも霊的なエネルギーが宿る。そして当時のドイツは国粋主義と民族浄化によって、このエネルギーが悪い意味で高まっていた。(ただし普通の人間と同じく、国家に宿る霊的なエネルギーも通常は超常的な効果を発揮することはない) 

■また当時のドイツは戦争への機運が極限まで高まってもいた。戦争時の国家は平時と異なり、敵国に勝利するために国の物的・人的資源のほとんどは兵器や兵士に変えられ、戦争へと費やされる。そこには平時のような「緩い安穏」や「情という潤い」はなく、国の全てが鋼鉄の兵器のように「固く乾いた」状態となり、それは狂信的な「愛国心の炎」によって駆動される。

■シュトロハイムは柱の男という人類存亡の危機に優先的に携わってはいるが、それ以前に祖国ドイツに忠誠を誓い、他国と戦う軍人である。その愛国心は本物であり、国家のためなら自分の命も恐怖なく差し出せ、他国民の命を躊躇なく奪える。そして彼はこの精神性によって、「ドイツ国家と霊的に一体」となることに成功する。

■この結果彼の魂は、肉体を失っても国家とのつながりを保って現世に留まることができた。そして彼の魂は、戦争に突き進むドイツを象徴するかのような、固く乾いた兵器の機械体に宿ることができた。彼の復活劇は、彼の魂と祖国の状態が噛み合うことで実現したある種の奇跡なのである。

■そしてシュトロハイムは自分と一体化しているドイツ国家から「霊的なエネルギー」を引き出すことで、機械体の強度が及ぶ範囲でパワフルに活動できる。これは柱の男が体内に蓄えた莫大なエネルギーを、肉体強度の及ぶ範囲で引き出せるのと同じことである。

■ところでシュトロハイムは生前から肉体が「乾き気味」であったらしく、頻繁にうがいしたり、ジョセフに「髪の毛の水分が足りない」と言われたりしている。これは彼の固く乾いた魂が肉体にも影響を与えたためと推測される。あるいはさらに推測するなら、彼は生身のときから機械化兵に適した人材としてドイツ軍に見出されており、肉体の乾きは何らかの前処置を受けたためかもしれない。

■1939年に柱の男との戦いを終えたシュトロハイムは、ドイツ軍人としての職務に戻り、その後1943年のスターリングラード戦線で名誉の戦死を遂げる。彼がどう死んだかの詳細は不明だが、おそらくそこには「ドイツの弱体化」が大きく影響している。

■スターリングラード戦線は地獄のような消耗戦として有名であり、ドイツは国力を大きくすり減らした上で敗北した。そしてこの国力の弱まりに呼応して、シュトロハイムの魂が現世に留まる力と、国家から霊的に引き出せるエネルギーも弱まっていく。その中で彼は誇り高く戦い抜き、命を使い切ってこの世を去ったのだろう。

■そして機械化兵その他の超常的科学技術は、ナチスドイツの解体と共に散失する。ただしそれら技術の一部は、柱の男との戦いでナチスドイツと技術協力していたスピードワゴン財団に残る。

■例えばジョセフ・ジョースターがカーズとの戦いで失った左手の代わりに付けた「義手」は、元々はシュトロハイムを通じてドイツ軍に作ってもらったものであり、シュトロハイムの体と同じく「魂と機械を神経的に繋げる」方式によって動かせる。そして以降の義手のメンテナンス・修理・交換はスピードワゴン財団が行っている。

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