広瀬康一とスタンドの関係

■ジョジョの奇妙な冒険第4部「ダイヤモンドは砕けない」に登場する広瀬康一は、それまでの荒木飛呂彦作品における、「魔少年ビーティー」の麦刈公一、ジョジョ1部のポコ、2部のスモーキー・ブラウン、3部の家出少女に連なる「一般人ポジション」のキャラクターである。

■しかし過去の彼・彼女らが「特殊能力を持たなかった」のに対し、康一は4部の序盤で「スタンド使い」となり、特殊能力で戦う側の役割も兼任することになる。それは杜王町という町を舞台に、日常生活に密着して特殊能力が描かれる4部ならではの展開といえる。

■ただし一般人のままスタンド使いになった康一のスタンドは、通常のスタンドよりはるかに「未熟」な状態で発現する。反面それゆえにそのスタンドは「大きな成長の余地」を残し、作中で幾度も成長を繰り返していく。

■では以下で、「一般人」の彼にどのようなスタンドが生まれ、どのように成長していったのかを詳しく見ていく。

エコーズACT0(卵型)

スタンド能力を引き出す道具である「矢」に射られ、スタンドを目覚めさせられずに死にかけていた康一が、東方仗助のスタンド「クレイジー・ダイヤモンド」の負傷を治す能力で救われた結果、発現した能力。その卵型のスタンドは康一自身が言うとおり何もできない。

このようなスタンドが発現したのは康一に「目覚めさせるべき能力」が無かったからである。スタンド能力には自分の個性を世界や他者に押しつける「エゴ」が重要である。しかし平々凡々な康一にはスタンド能力に変えるほどのエゴがなかった。このため康一のスタンドは、使い道のないスタンドエネルギーを殻に閉じ込めて安定状態を保つくらいしかするべきことがなかったのである。

しかしその一方で康一には、「エゴ」とは別の精神的才能、町や他人を危険を冒してでも守ろうとする強い「社会性」が備わっている。そしてそれが彼のスタンドに少し遅れて「能力」を与えることになる。

エコーズACT1(幼生体型)

ゆすりたかりに特化した小林玉美のスタンド「ザ・ロック」に攻撃された康一が、玉美に対する正義の怒りから目覚めさせた能力。空気や物体の微細な振動が生み出す「音」を塊にして捕え、繰り返し響かせることができる。

ただしACT1のスタンドパワーは通常のスタンドに比べて桁違いに低い。上述したとおりスタンドには「エゴ」が重要であり、それがスタンドに大きなパワーを与える。それがない康一は自分の精神から極めて低いスタンドパワーしか引き出せないのである。

エコーズACT2(小動物型)

康一を拉致監禁した山岸由花子にACT1の音の攻撃が通じず、康一が「より強い音」を願うことでACT1から成長して発現させた能力。ACT2が生み出す「音」は相手に強い「実感」をも与え、風の音で吹き飛ばしたり熱の音で火傷させたりできる。

ただACT2はACT1から成長してはいるが、スタンドパワーの低さは変わっておらず、スタンド体を凝縮してエネルギー密度を高めることで、強力な音を操れるようになっただけである。またこうして強化されてなお、ACT2が生み出す熱や風のパワーは康一単独で使う場合はかなり弱く、他者の「イメージ力」を利用してパワーを増大させるという特徴を持っている。

そしてACT1を変則的な手法で強化したACT2は、康一の「一般人としてのスタンド」の成長限界でもある。つまり康一が一般人であり続ける限り、エコーズはこれ以上成長できない。

なおACT2への成長に前後して康一は、自分の頭に植え込まれた由花子の髪の毛のスタンド「ラブ・デラックス」の呪縛から逃れるために、自分の髪を切って頭頂部が平らな髪型になり、その後もずっとこの髪型でいつづける。植物の成長がガラスケースの天井に阻まれているかのようなこの髪型は、エコーズの成長がいったん「頭打ち」になったことを良く表している。

エコーズACT3(人型)

殺人鬼吉良吉影のスタンド「シアーハートアタック」との戦いのさなか、ACT2から成長して発現した能力。物体に「重さ」を与え、その動きを阻害することができる。

成長限界に達していたエコーズがさらに成長できた理由はこの戦いの中で描かれている。まず康一はいっしょに戦っていた空条承太郎の忠告に反感を抱いて勝手に行動し、その結果を大きく後悔することになる。そしてその後康一は、承太郎の忠告をもとに敵スタンドの弱点を見抜き、また反社会的な殺人鬼のスタンドの横暴さに新たな怒りを燃やす。

この一連の出来事はつまりは、彼の中の「エゴ」と「社会性」を両立させ昇華させる通過儀礼である。その結果康一は、「自分独自の能力」をエコーズの進化形として生み出せたのである。

「エゴの領域」からスタンドパワーを引き出せるようになったことでエコーズのパワーは劇的に増大し、ACT1からACT2への成長でいったん小型化したスタンド体は、一転して本体と同じサイズの人型スタンドにまで大きくなる。そしてその能力も、ACT2のような他者の力を利用したものではなく、康一のスタンドパワー単独で生み出す重さをそのまま与えるものへと変わっている。

なおACT3には康一とは別の人格が宿っているが、この人格はおとなしい反面ちょくちょく英語の卑語を口にする。これはおそらく康一が社会性によって無意識に抑圧しているエゴが、回りくどく漏れ出ているものと思われる。

またACT3への成長に前後して康一の頭頂部が平らな髪型は、成長する植物がガラスケースの天井を突き破るかのように逆立つ。これはエコーズが成長限界を超えたことを良く表している。

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