セト神
SETHAN:嵐と暴力の神
Sephirah-No.5
本体名:アレッシー
38歳独身
能力:他者を子供以下に若返らせ、無力化する
スタンド形成法 | 射程距離 | パワー | 身体・能力作業体 | 4〜5m | 低 |
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当ページの要点
- ジョジョ3部に登場するスタンドは全て、「生命の樹」と呼ばれる図形に関係している。
- エジプト9栄神のカードのNo.5であるセト神は、生命の樹のセフィラのNo.5に配置される。
- セトのセフィラは成長するものが、成長に使う材料を広く把握した状態を表す。
- セト神は他者から「成長によって得たもの」を奪い取り、若返らせる能力を持つ。
セフィラ解説
ジョジョ3部に登場する22枚の「タロットカード」は、占いの道具としてよく知られ、それぞれのカードにはさまざまな解釈が与えられている。そしてその解釈法の1つに、『生命の樹』と呼ばれる図像を絡めたものがある。生命の樹とは、宇宙・生命・人類・個人など、この世界の中で進化・成長する全てのものが、成長する際に辿る変化の共通性を図像化したものである。「セフィロトの樹」とも呼ばれるその図は、「状態」を表す10個の円形「セフィラ」と、円形同士を結び「変化」を表す22本の小径「パス」から成り、タロットはパスの方に対応している。
一方、ジョジョ3部後半には「エジプト9栄神のカード」なるものが登場し、こちらはセフィラに対応する。そしてセフィラの5番目である「セト」は、「分割せしもの」を暗示するカードである(なお「セト」という名称は、セフィラをエジプト神話の神々に対応させたジョジョでの独自名称であり、正式なセフィラ名は「ゲブラー」(Geburah:峻厳)である)。
成長体が成長していくにあたって、分野内の材料をより多く把握することは非常に重要である。彫刻家がさまざまな形のノミを使って作品を彫り上げるように、蓄えた材料要素の多さはその先の成長を円滑に進める有効な武器となる。この時点での状態を表すのがセトである。
しかし材料を集め把握することは確かに成長の一種ではあるが、それらを何も考えずにただ使うだけでは、それらはただ自分に「外付け」されているに過ぎず、自分自身を成長させることはない。
材料は道具であれ知識であれ、深く触れ、深く考えることで、自分の内面と結び付いて知恵や体験といったより多くの情報をもたらす。それこそがその分野内での、自分の血肉に組み込まれる形での成長の始まりとなる。そしてこの「連結」によって成長体は、「混合せしもの」を暗示する6番目のセフィラ「クヌム」へと変化することになる。
スタンド解説
他者を「子供」以下の年齢に若返らせ、無力化できるスタンド能力。そのスタンド像は、「影」のように地面や壁に貼り付く薄っぺらい人間型で、その全身は飾り気も無くただ黒く、鳥のような嘴が伸びる頭部に付いた目だけが色を持つ。
本体のアレッシーは38歳のいい年をした大人であり、知識は年齢相応にあるが、知恵や人生経験はかなり未熟な、頭でっかちで幼稚な大人である。彼は大人の前では怖気づいてまともにコミュニケーションがとれず、子供のようなウソをついたり逃げ出したりする。逆に無力な子供相手には非常に強気であり、大人の知識量で責め立て、大人の体格で暴力を振るう。
そしてこの性格ゆえに彼のスタンドも真っ当ではない。彼の子供のようにちっぽけな精神エネルギーは、彼の足元にできる大人サイズの「影」と同化することで引き伸ばされる。そして「精神エネルギーの小ささ」と「スタンド体の大きさ」との不均衡によってセト神は、1つの異様な性質を得る。それは乾いたスポンジが水を吸い取るように、他者の霊体から「成長で得たもの」をごっそり吸い取る性質である。この結果その相手は自らの霊体に連動して、物理的な肉体まで若返ってしまうことになる(ちなみに霊体からの「成長で得たもの」の奪取はセト神が触れた瞬間に行われるが、肉体の若返りはその後数秒かけて起こり、その間はセト神が触れている必要はない)。
セト神で若返らせられた相手は肉体とともに脳も若返り、大人の時の記憶もどんどん薄れ失われていく。そしてもし「スタンド使い」が、スタンド能力を獲得する前の年齢まで若返らせられると、当然その者はスタンドが使えなくなってしまう。また相手が子供時代からスタンドを使えても、スタンドの体と精神力も持ち主に応じて若返ってしまう。そしてアレッシーはこのように無力化した相手をいたぶる。
ただしセト神による「成長で得たもの」の奪取は、相手の「肉体やスタンド」からではなく、相手の「影」からしか行えない。これにはジョジョの世界で「生物の影」が持つ、特殊な性質が関係している。
「影」という名の侵入経路
「霊的なエネルギー」が存在するジョジョの世界では、生物が作り出す「影」には特別な力がある。かの世界の生物はスタンド能力の有無にかかわらず、その肉体から常に微弱な「霊的なエネルギー」を放射している。それは太陽や照明などの物理的な「光」に簡単に打ち消されるほど弱いものだが、「影」の中ではわずかながら力を残せる。そして影の中で物質表面に貼り付いた霊的なエネルギーは、そこに「影の主」に対する「微弱な写し身」のようなものを作り出す。
影という写し身は通常は、単にそのような霊的現象というだけで、それ以上の意味は持たない。しかしジョジョの世界の一部の者は、この写し身を感知したり、干渉できる力を持つことがある。
霊的な写し身である影は「影の主」とつながっており、しかしそれは影の主の制御外にある。この面で影は、堅固な要塞の誰も知らない抜け道のようなものである。そして影に干渉できるスタンド能力はこの侵入経路を通じて、影の主の隙を突いた能力効果を与えることが可能となる。
スタンド解説(2)
アレッシーはその精神のちっぽけさゆえか、「真っ向」や「正々堂々」という言葉とは程遠い姑息さゆえか、自分や他者の「影」に宿る微弱な霊的エネルギーを感知し、干渉することができる。これにより、彼はまず自らのスタンドエネルギーを自分の影に流し込んで「影のスタンド」を作り出し、次いでこれを「他者の影」に重ねて相手を若返らせる能力を発動できる。この強力かつ問答無用な能力は、本来なら相手の「霊的な抵抗力」に阻まれて通用するはずのないものである。しかしセト神は相手の影という「裏口」から干渉を行い、まんまと相手を術中に落とせるのである。
「影のスタンド」であるセト神は、通常はアレッシーが地面に落とす影と同じポーズを取り、ただ頭部だけが前述した鳥の形となり目が浮かび上がる。一方でセト神は本来の影の形を変えて動くこともできる。そしてセト神は相手を若返らせようとする時には、アレッシーの足元から自らを長く伸ばして相手の影に重なる。その射程距離は約4〜5mである。
ちなみにセト神の体は、霊的なエネルギーを吸収するのと同じように「光」も吸収すると考えられる。このためこの「変形した影の形」はたぶん一般人にも見ることができる。
セト神が影を通じて奪える「成長で得たもの」の量は、ほんの一瞬でも相当な量に上る。作中ではポルナレフ(20代前半)と承太郎(17歳)の影に一瞬触れただけで、彼らを7歳前後まで若返らせていた。
ただしセト神は相手の年齢が若くなるほど、相手が生を受けた瞬間の「核」だけの状態に近くなるほど、「成長で得たもの」を奪うのが難しくなり、奪える量が減っていく。このため作中でのセト神は7歳前後のポルナレフを、再度一瞬触れても4歳程度まで、さらに一瞬触れても3歳程度までしか戻せていない。また子供のポルナレフを助けて巻き込まれた20代前半と見られる女性は、大きさ3cm足らずの胎児の姿にまで戻されたが、そこまで戻すのにセト神は10数秒の接触を要している。
また若返りの能力が維持されるアレッシーからの射程距離はおそらくそれほど長くはなく、せいぜい100m以内と思われる。そして相手が射程距離から出るかアレッシーが気を失うかすると能力は解除され、相手は大人の体と記憶を取り戻してしまう。
なおセト神は若返らせる能力以外の攻撃手段として、アレッシーが手にした斧などの「武器」をセト神の影の形に外付けして、それで攻撃することもできる。この時セト神は、武器を持った腕だけを物質表面から持ち上げて立体化させ、それを振り回す。ただしそのパワーはせいぜい人間並といったところであり、また影のスタンドを持ち上げるのは精神負荷がそこそこ高いらしい。このためこの手法は(子供になった)相手のスタンドと戦う時にのみ用いられ、それ以外はアレッシー自身が武器を振り回す。
ちなみにセト神は薄っぺらな時、立体化している時を問わず、敵スタンドから攻撃されればアレッシーにダメージを返すと考えられる。このためセト神が(大人の)スタンド使いに影を重ねて若返らせようとする際には、いかに相手の隙を突くかが重要となる。
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