グリーン・ドルフィン・ストリート刑務所の場所と施設構造
グリーン・ドルフィン・ストリート刑務所は、ジョジョの奇妙な冒険第6部「ストーンオーシャン」の主な舞台となる、アメリカ合衆国フロリダ州の刑務所である。
その正式名称は「州立グリーン・ドルフィン・ストリート重警備刑務所」、略称は「G.D.st JAIL」である。また海岸から数100m離れた島に建てられた、洋上の監獄であるこの刑務所は、通称「水族館」とも呼ばれている。
G.D.st刑務所は、6部の主人公である空条徐倫が収監され生活する女子監を始め、男子監、工場、その他いくつもの棟で構成されている。そして棟の配置やつながりを示す、上空からの俯瞰図や見取り図は作中で何度か示されているが、それらの作画にはかなり食い違いが多く、刑務所の全体像を掴み難い。
また詳しくは後述するが、この刑務所の「棟の配置の設定」は、6部の前半で一度大きく変更されている。
そこで当ページではその変遷を追いながら、この刑務所の正確な施設構造がどのようなものであるかを解説していく。またそれに先がけて、G.D.st刑務所が建っているグリーン・ドルフィン島の場所についても解説する。
グリーン・ドルフィン島の場所
G.D.st刑務所が建てられているグリーン・ドルフィン島は、フロリダ半島の大西洋に面した東海岸の、沖合数100mにある。そしてその正確な場所を示した地図は、作中に3つある。10話「グリーン・ドルフィン・ストリート刑務所」と11話「面会人 その1」の間のページのもの、102話「脱獄へ…」のもの、114話「スカイ・ハイ その3」と115話「スカイ・ハイ その4」の間のページのものである。
半島内にある円形の湖(オキーチョビー湖)との位置関係を見ると、6部序盤の1つと6部後半の2つとで微妙に位置が変わっているが、これは後の情報が正しいと考えるべきだろう。それに従えばGD.st刑務所の場所は、我々の世界でのパーム・ビーチあたりということになる。また6部序盤のほうの場所はジュピターアイランドあたりである。
なおフロリダ半島の東海岸は全体的に、海岸線を細長い島が取り囲む奇妙な地形になっている。このような地形は「沿岸州(えんがんす)」と呼ばれ、沿岸州と本土に挟まれた水域は「潟湖(せきこ)」(英語ではラグーン)と呼ばれる。潟湖は海水と淡水が混じった水域であり、すぐ下で説明するグリーン・ドルフィン島内の湿地も、海水の場所と淡水の場所が入り混じっている。
グリーン・ドルフィン島の敷地
グリーン・ドルフィン島はその全域が刑務所の所有地であり、その敷地面積は1話で説明されているとおり、120平方kmと非常に広大である。島の形状は作中で示されていないため不明だが、おそらくは上述したフロリダ東海岸沖の沿岸州を構成する島の1つとして、南北に長い形状と思われる。
ただこの120平方kmの敷地のうち、刑務所の建造物が占めているのは、連絡橋でフロリダ半島と結ばれている島の入口部分の、1km四方に収まるか収まらないかくらいのごく一部にすぎない(詳しくは後に示す全体俯瞰図1および全体俯瞰図2を参照)。そしてこれらの建造物はすべて有刺鉄線付きのフェンスで囲まれている。
その外には囚人が作業する農場などもあるが、こちらの総面積もせいぜい1〜2km四方といったところである。
そして島のそれ以外の土地は、ほぼ手つかずの自然状態であり、またそのかなりの部分は半ば水に沈んだ湿地になっている。そういった部分も敷地面積に含むため、グリーン・ドルフィン島の敷地面積のうち、きちんとした陸地といえる部分は、おそらく3〜5割程度と思われる。
連絡橋
刑務所のメインゲートとフロリダ半島を東西方向に結ぶ橋。途中にある小さな中洲を橋の足場として利用するため3回ほど大きく曲がっている。全長はたぶん500mほど(前述したグリーン・ドルフィン島の場所での、海岸から沿岸州までの距離がおおよそそれくらいである)。
女子監見取り図
11話「面会人 その1」で示された見取り図。徐倫の囚人監房である「206号監房」を始め、ここまでの作中に出てきた「食堂」「ガンポイント前の廊下」「公衆電話」「図書室」の場所が示されている。またこの先の作中に出てくる「面会室」「医務室と病室」「運動場」「給食運搬用のエレベーター」の場所も示されている。
なおこの見取り図には「部分」と但し書きが添えられて、1階と2階が描かれている。そして但し書きのとおり、この見取り図は女子監全体の一部でしかなく、実際の女子監には3階もある。また面会室の左側の破線で描かれた先には、さらに(少しだが)建物が続いている。
またこの見取り図は建築図面のように正確なものではなく、それぞれの場所の位置関係を示したものに過ぎない。このため部屋の大きさの比は適当である。例えば図書室は、作中の描写では少なくとも10m四方の広さがあるが、この見取り図では通路の幅や囚人監房の広さを基準にすると、数分の1以下の広さにしか描かれていないことがわかる。
女子監の外観
女子監の外観は、12話「面会人 その2」から15話「面会人 その5」にかけて、男子監の囚人ジョンガリ・Aの視点で何度か描かれている。そしてこの外観の建物は、後の全体俯瞰図1および全体俯瞰図2にも描かれている。ただ全体俯瞰図2のその建物は女子監ではなかったりする(詳しくは後述する)。
面会室周辺見取り図
17話「面会人 その7」で示された見取り図。女子監見取り図では省略されていた面会室先の通路や部屋が描かれている。また面会室先の通路からつながる、別の建物の一部も描かれている。これは後に示す全体見取り図に書かれているとおり「管理ジェイル」である(管理ジェイルはまだ有罪が確定していない容疑者の拘置や裁判を行う施設である)。
なお女子監と管理ジェイルをつなぐ通路には、6部後半の96話「JAIL HOUSE LOCK! その1」でエンポリオ少年が語った、「スタンド使いの脱獄を防ぐ特殊な力を持った扉」である「地獄の門」がある。
全体俯瞰図1
21話「エルメェスのシール その1」冒頭に描かれた、G.D.st刑務所のほぼ全体を南側上空から見た俯瞰図。刑務所全体の俯瞰図は作中で2度だけ描かれており、これは最初の1つである。
まず建物群の中央にある背が低い建物は「工場」である。そしてその左(西)にある建物は「女子監」で間違いない。なぜならその外観は上で示した女子監の外観とおおむね一致しており、また女子監見取り図にあった「(右に行くと)工場へ」という記載とも一致するからである。そして面会室周辺見取り図にあった男子監の方向の記載から、女子監の下(南)方向にあるL字型の建物が「男子監」ということになる。
ただし本ページの冒頭で説明したとおり、ここでの建物の配置は(すぐ下の全体見取り図のタイミングで)大きく変更されることになる。
全体見取り図
40話「サヴェジ・ガーデン作戦(中庭へ向かえ!) その1」で示された、刑務所のほぼ全体が描かれた見取り図。刑務所全体の見取り図としては作中で唯一のもの。方角は書かれていないが、連絡橋の場所を見てわかるとおり上が西、右が北である。
ここで刑務所の各建物の配置は、21話の全体俯瞰図1までとは完全に様変わりする。例えば工場の場所は、女子監見取り図では女子監から見て面会室の反対側、つまりこの見取り図では下(東)方向になくてはならないが、中庭を挟んだ右(北)方向に移動している。また男子監の場所は、面会室周辺見取り図では女子監から見て運動場方向、つまりこの見取り図では左(南)方向になくてはならないが、下(東)方向に移動している。
そして以降のストーリーはこの見取り図に従って進行することになる。
ただこの見取り図も、女子監見取り図と同じく建築図面のように正確なものではなく、それぞれの建物の大きさの比は不正確である。また後に作中で描かれていく建物内部の描写との食い違いもいくつかある。例えばこの見取り図では中庭への入口は部屋のような空間になっているが、後に描かれた実際の場所はただの通路だったりする。
ところでこの見取り図の、女子監・中庭と男子監との間には、用途が書かれていないエリアがある。このエリアにあるのは後に出てくる「警備モニター室」「礼拝堂」「墓地」「工作室」である。このうち礼拝堂は、6部のラスボスであるエンリコ・プッチ神父が拠点としている場所である。
また女子監と中庭に挟まれたスペースには、女子監の西端から礼拝堂エリアに行ける長い通路が通っている。そして女子監側からこの通路に入る場所にある扉はたぶん、後の59話「その名はアナスイ」で、ナルシソ・アナスイが看守たちを倒して開けた扉だと思われる(この扉は女性囚人が自由に礼拝堂に行ける朝食前以外の時間帯は閉鎖されているらしい)。
洗たく場手前の見取り図
44話「サヴェジ・ガーデン作戦 その5」で刑務所の警備モニターに映っていた、洗たく場手前の通路の見取り図。この通路は徐倫がサヴェジ・ガーデン作戦で、女子監から中庭に向かう際に通った通路である。
まずこの図の「6-A」にある凹字型のものは、徐倫が看守に賄賂を渡した受け付けである。そしてその後徐倫は、右にまっすぐ進んで洗たく場へと入る。
そして洗たく場内の、徐倫が入ったのと反対側の壁には、中庭への通路に出る扉がある。つまりこの通路と洗たく場があるのは、全体見取り図の「医療監房」の中である。
なおこの洗たく場はとても広く、20数m四方以上の広さがある。つまり全体見取り図に描かれている医療監房の建物は、実際はもっと大きいはずである(そうでないと洗たく場と手前の通路が入り切らない)。
中庭俯瞰図
48話「集中豪雨警報発令 その1」で、「ヤドクカエルの雨」が降っているときに描かれた、中庭を南側上方から見た俯瞰図。全体見取り図では「医療監房」と「工場」の建物の間には隙間があるが、こちらの俯瞰図だと建物同士は密着している。
前述したとおり全体見取り図での医療監房は本来の大きさより小さく描かれているので、実際にはもっと大きいそれは、工場と密着しているのだろう。
懲罰房棟周辺地図
76話「緑色の誕生 その1」と77話「緑色の誕生 その2」の間のページで示された、懲罰房棟周辺の地図。
59話「その名はアナスイ」で説明されているとおり、懲罰房棟、正式名称「厳正懲罰隔離房棟(ウルトラセキュリティハウスユニット)」は、女子監から520m離れたところにある。ただそれに続く「男子監運動場南方に位置する」という説明は間違っており、正しくはこの地図に書かれた方角を見てわかるとおり、「南方」ではなく「東方」である。
さらにこの地図のほうも、男子監と懲罰房棟の位置関係は正しいものの、距離は正しくない。この地図では両施設は100mほどしか離れていないが、実際には300m以上離れているはずである。なぜなら全体見取り図での女子監の東端(下端)から男子監の東端までは長くても200m程度であり、つまり男子監の東端から懲罰房棟までは、前述した520mから200mを引いて300m以上となるからである。
なお後に示す全体俯瞰図2では、女子監および男子監と懲罰房棟の距離は、おおよそ正しく描かれている。
懲罰房棟の外観
懲罰房棟の外観は、59話「その名はアナスイ」での正面(西側)から見たものを始め、64話「看守ウエストウッドの秘密 その5」では真上から見たもの、79話「ヨーヨーマッが来る! その2」では背面(東側)から見たものが描かれている。
これらを総合すると、懲罰房棟の形状は直方体に近く、また西側の外壁には大きな丸い穴が4箇所空いていることがわかる。棟の大きさは大ざっぱに、幅30m、奥行き40m、高さ25mほど。
懲罰房棟見取り図
上で示した懲罰房棟周辺地図から懲罰房棟の内部見取り図部分だけを抜粋したもの。これと懲罰房棟の外観および作中の懲罰房棟内部の描写を合わせると、内部の構造がある程度把握できる。
懲罰房棟の構造は大ざっぱには、「真上から見て凹字型のビル」になっている。ビル部分の内部は作中ではほとんど描かれなかったが、上で示した懲罰房棟の背面の様子から、3階建てくらいになっているようである。
そしてこのビルの凹み部分が向いている西側を、大きな丸窓がある壁で塞ぎ、凹み部分の上面を大きな天窓付きの天井で塞いで直方体にしたものが、棟の外観となる。
そしてその西側の出入り口から凹みの内側に入ると、まずは天井まで吹き抜けになった広間がある。
この1階広間からさらに奥の凹み部分は、1フロア分高くなっており、階段で2階に上がると、ここも天井まで吹き抜けになった広間になっている。そしてこの2階広間の左右と奥の壁一面には、囚人の入る独房が隙間なく並んでいる(なお見取り図では奥の壁には独房がないように描かれているが、これは誤りである)。
またこの2階広間の中央には下へと降りる階段がある。その先つまり2階広間の真下には、死刑囚を超高圧電気イスで処刑する「執行室」がある。
「エンポリオの階段」周辺見取り図
99話「JAIL HOUSE LOCK! その4」で示された、エンポリオ少年が暮らす「音楽室の幽霊」がある階段周辺の見取り図。「音楽室の幽霊」はこの階段の踊り場の壁から入ることができる、現実空間には存在しない部屋である。
まずこの見取り図が微妙に紛らわしいので念のため書いておくと、「エンポリオの階段」は2つ階段がくっついている内の、上に描かれている階段のほうである。そしてこの見取り図は女子監見取り図の1階の抜粋であり、つまり「エンポリオの階段」は女子監にある。
ところでこの図では左側に行くと「医療房棟」があるとされているが、これは女子監見取り図にあった「医務室と病室」のことだろう。一方右側に行くと工場へ行けるとされているが、その際には全体見取り図にあるとおり、「医療監房」を通過することになる。
つまりこの刑務所には「医療監房」と「医療房棟」があることになる。この2つにどういう役割の違いがあるのかは不明。
全体俯瞰図2
102話「脱獄へ…」で、徐倫がG.D.st刑務所を脱獄したときに描かれた、刑務所全体を南側の上空から見た俯瞰図。
棟の配置が全体見取り図に合わせられていたり、全体俯瞰図1の後に登場した懲罰房棟が追加されていたりと、ここまでの作中の情報が反映されている。
ただ一方でこの俯瞰図には、「女子監の外観が男子監で描かれている」などの作画ミスがある。この原因は、棟の配置は全体見取り図に合わせたが、作画は(棟の配置が変更される前の)全体俯瞰図1を見ながら描いたためと思われる。
参考のため、以下に全体俯瞰図1(再掲)、全体俯瞰図2の西側部分の拡大、全体見取り図(再掲)を置いておく。