フー・ファイターズ FOO FIGHTERS

2023/02/09改訂

本体:スタンド自身

後にエートロという女囚の肉体を手に入れる

能力:プランクトンの集合体が知能を持った新生物

スタンド形成法射程距離パワー射程・パワー増加法
無定形結合体 自活パワー供給

当ページの要点

  • ジョジョの世界は目には見えない「知性」という力に海のように満たされている。
  • この「知性の海」は世界に働きかけて、生命の発生や進化を促してきた。
  • ジョジョ6部の主舞台であるグリーン・ドルフィン刑務所には特殊な力が宿っている。
  • それはこの土地の重力の弱さと罪人たちの魂のパワーによる「宇宙の縮図」としての力場である。
  • 刑務所敷地内の湿地から誕生したフー・ファイターズはこの「宇宙の縮図」で、「知性の海」としてのスタンド能力を与えられる。

知性の大海

ジョジョの世界には、世界をあまねく満たし、物質や生物に宿っている霊的な力である「知性」なるものが存在する。知性はそれが宿った物質・生物の構造などを情報として「記憶」し、またその情報を周囲に信号として「発信」する性質を持っている。

ただしこの「知性」は、その全てが物体に宿っているわけではない。ジョジョの宇宙では「物体の総量」よりも「知性の総量」のほうがはるかに多く、そして物体に入りきれなかった知性は物質世界の外に溢れ出て、地球の大地を取り囲む「海」のような領域を作り出している。

物質世界の外にあるこの「知性の海」は、物質世界の無数の物体に宿っている知性から発信される、あらゆる信号を受け取る。そしてそれらの情報は「知性の海」の中で混ざり合っていく。

こうして物質世界からの物質や生命の情報を、数10億年に渡って受け取り混ぜ合わせるうちに、「知性の海」には海全体から成る一つの巨大な「意識体」が生じる。そして逆にこの意識体は、物質世界へと情報を発信し、物質世界の個々の物体に影響を与える。

そしてこれによって「知性の海」は、物質世界に対する「頭脳」のような機能を持つことになる。つまり、生物における「頭脳」の役割は、肉体からの情報を受け取り、そのうちのどれが重要かを判別し、肉体に指令を出すことにあるが、「知性の海」もまた、物質世界に対して同じ役割を担うわけである。

「知性の海」から物質世界に伝わる信号の影響は、命を持たない物質に対してはほとんど皆無である。ただしそれでも数100万年〜数億年の時の中での影響は、塵が積もるかのように膨大なものとなり、ジョジョの世界での生命の誕生に大きく寄与している。

一方で生物に対しては、「知性の海」からの信号は生物の精神に直接作用できる。このためジョジョの世界に存在する生物全ての判断や行動は、大なり小なり「知性の海」からの司令に則ったものとなる。

こうして世界は緩やかにしかし確実に、この「知性の海」にして「世界の頭脳」である存在、「大いなる意識」の力に導かれていく。

スタンド解説

フー・ファイターズは、ジョジョの奇妙な冒険第6部「ストーンオーシャン」に登場する人型スタンドである。このスタンドは「ホワイトスネイクのDISC」で生まれた新生物であり、この生物自身が本体であり、グリーン・ドルフィン島内でのみ存在を維持できる。

フー・ファイターズ

グリーン・ドルフィン・ストリート刑務所は、外界から隔離された環境のなか、強い魂のパワーを持つ罪人たちが集う場所であり、また地球上で最も引力が弱く宇宙に近いケープ・カナベラルの一帯に位置する場所でもある。このためこの島は、神秘と力を宿し「宇宙の縮図」としての力場を発生させている(ちなみにこの刑務所は別名「水族館」とも呼ばれ、これは即ち「海の縮図」である)。

そしてこの島の湿地帯の水にDISCを与えることで、そこに生息する微小な浮遊生物であるプランクトン群がスタンド化して誕生したフー・ファイターズは、この「宇宙の縮図」の中において、「知性の海」と相似して、「知性の海の縮図」としての力を与えられる。

フー・ファイターズは、体長数mm以下の実体化したプランクトン型スタンドが、無数に結合して人間の形を成している。プランクトン型スタンドは、オタマジャクシのような体に出目金のようなギョロ目を持つ。一方その集まりである人型スタンドは、ショウリョウバッタのような細い手足と頭部と、いかつい眼光の顔を持つ。そして両者は黒い体と、その関節部や身体各部を覆う白い骨格のようなものとにおいて、互いに相似している。

プランクトン型スタンド

その人型スタンドの体は、柔らかくも弾力があり、普通の人型スタンドと殴り合い組み合えるほどの強度・パワー・スピードを持つ。またその体は、破壊されても再結合すれば簡単に再生できる。

そしてこの人型スタンドには、人間に引けをとらない「知性」が宿っており、人語を解して喋り、合理的・効率的に考え行動する。

フー・ファイターズは本来、湿地帯などの「水中」を生息地としている。その体を構成するプランクトン型スタンドは、水中では目まぐるしい速度で分裂して、1→2→4体と倍々に増殖していく(作中でこのスタンドが見せた最大増殖量は、体積にして人間4体分くらいである)。

水中で分裂するプランクトン型スタンド

またフー・ファイターズは、そうして増殖させた自らの一部を自分と同じような人型スタンドとして切り離し、それを「しもべ」として別個に行動させることもできる。しもべの顔はプランクトン型スタンドと同じギョロ目で、その知能はかなり低く本能的である。一方その体格はフー・ファイターズ本体より屈強で、格闘能力だけなら本体に勝るとも劣らない。

フー・ファイターズの分離体

また、フー・ファイターズが活動するエネルギーは、その体細胞にあたるプランクトン1体1体のエネルギーの集積から成っている。そしてフー・ファイターズが戦闘などで激しく活動すれば、プランクトンはどんどん消耗し死滅していく。ただし水中であれば周囲の水から絶えることなくプランクトンを増殖補給できるため、水を得た魚のようにパワフルかつ疲れ知らずに活動できる。

このようにフー・ファイターズは、水中では不死かつ無敵に等しい。しかし逆に陸上では、その体は乾きに晒される体表のプランクトンからどんどん死滅して崩れていき、1分弱で自力移動が不可能な量にまで減ってしまう。ただしその場合でもプランクトンが全滅さえしなければ、水の補給で再増殖し、復活できる。

また、「知性の海の縮図」であるフー・ファイターズは、「知性の海」が物質世界に対する「頭脳」として働くように、自身の一部を人間の体内に侵入させることで、その人間の本来の頭脳に取って代わることもできる。体内に侵入した少量のプランクトンは、体内の水分で増殖しながら支配力を増していき、体内の水分全てに自らを浸透させることで乗っ取りを完了する。

ただしスタンド使いのように抵抗力が強い者に対しては、少量を侵入させた程度では支配力を発揮できず、また体内での増殖も阻まれる。

フー・ファイターズに乗っ取られた人間は、操られた状態にありながらもその人間本来の記憶に従って行動するため、周囲の者がその行動に不自然さを感じ取ることは困難である。また、この状態でのプランクトンは、人間の肉体が水を保持する「器」となって乾きから守られるため、激しい運動さえしなければ比較的長時間陸上で活動できる。

大海の一雫

ジョジョの世界において「大いなる意識」は、世界の始まりの時より世界と共に在り続け、世界を緩やかに導き続けてきた。「大いなる意識」は世界を満たし包む一つであるがゆえの孤独の中で「自分」を意識することも無くまどろみ、肉体に相当する物質世界から与えられる刺激に対して、ただ機械的に反応を返し続けていた。。

このような「大いなる意識」の一部が、DISCの力によって人間サイズの肉体を与えられ、生まれたものが「フー・ファイターズ」である。

世界の中へと生み落とされた彼は、無限にまどろみ続けていただけの「大いなる意識」であった時のことを忘れ、自分の命の意味も分からないままただ漠然と生き、自分に命を与えてくれた「ホワイトスネイク」への恩義から、その命令に従い湿地帯で大量のDISCを守っていた。彼は変わり映えのしない湿地帯で、人間との接触を極力避けて暮らし、あちこちからさまざまな知識を仕入れて色々なことを考え思い巡らせてはいた。しかし機械的に繰り返される孤独な日々は結局のところ、「大いなる意識」であった頃とほとんど変わることは無かった。

そんな彼の日常はある日、DISCを捜しに湿地帯へやって来た一人の人間、空条徐倫との出会いで大きな転機を迎える。フー・ファイターズは彼女との戦いでその行動の中に、今までの自分の知識や理解が及ばない力の存在を感じ取る。そして彼女に対する尊敬にも似た興味から、彼女のそばで彼女を守るため、彼女が生活する監房へとついて行くことを決める。

本来の生息地である湿地帯を離れて監房へ行くために、フー・ファイターズは死亡した女性囚人エートロの肉体に入り、魂の抜け殻となったその肉体を蘇生させ、自らの肉体とする(これは後述する治療能力によるものである)。湿地帯で何度か行ってきた、ただ操るためだけの憑依ではなく、生活の場そのものを「湿地」から「人間の肉体」へと移すこの行為によって、フー・ファイターズは一人の囚人「F・F」(エフエフ)として、人間を理解するための第一歩を踏み出すことになる。

スタンド解説(2)

フー・ファイターズが宿ったエートロの肉体は、プランクトンが体内を循環する血液や体液を始め全身の隅々まで浸透し、プランクトンと人間の体細胞は、双方ともに独立性を保ちながらも互いに共存している状態にある。その肉体はプランクトンの影響で骨格までもがゴムのように柔らかく、鉄格子を無理やり通り抜けたり、人間の関節の可動域を逸脱した動作が可能である。

エートロ

一方でその肉体は普通の人間と同じように、呼吸や食物の消化などの生命活動を行い、肉体がダメージを受ければF・Fも痛みを感じ、酷いダメージを受ければ生命活動が停止する。ただしその場合でも、独立性を保っているプランクトン側の活動によって、自ら治療・蘇生措置を行い、生命活動を再開させることが可能である。

なお、エートロに宿った後でもプランクトンが「水」をエネルギーとして活動することには当然変わりはなく、また体内に貯蔵できる水の量にも限界がある。F・Fは激しい運動が必要となる戦闘では、肉体内の水分を急速に消費し、水の補給がなければ全力で活動できる時間は5分にも満たない。

F・Fは敵との戦闘では、人差し指と親指を立てて拳銃の形に構えた人差し指の先端から、圧縮したプランクトンの塊を水鉄砲のように撃ち出す「フー・ファイターズ弾」を主に使う。その威力は、10mほど離れた敵に対しても、肉体をえぐってめり込むくらいはある。そして連射もかなり効く。ただし当然だが撃てば撃つほど自分の体内の水が減ってしまう。

フー・ファイターズ弾
撃ち出されたプランクトン

F・F弾で撃ち込まれたプランクトンは前述したとおり、スタンド使いに対しては体内に入っても増殖できず、数発程度の量では相手を乗っ取ることもできない。このためF・F弾にできるのは、弾丸としてダメージを与えることと、敵の体内で暴れて撃ち込まれた量に応じた追加ダメージを与えることだけである。

弾痕内で暴れるプランクトン

ちなみにF・Fがフー・ファイターズ弾を使う時には、最初は人差し指の先が割れてそこから弾が出るだけだったが、6部の途中からは人差し指とその周辺の皮膚が硬質化して、銃身らしきものが形成されるようになっている。これには弾道を安定させる効果があると考えられる。

人差し指に形成される銃身

またエートロに宿ってからのF・Fは、エートロや他者の肉体の損傷部位を、プランクトンで「模造」して補い、治療することもできるようになっている。これにはおそらく治療しようとする生物の肉体内に宿る「知性」情報が利用されており、傷つきまたは失われた肉体部位の情報を、その周囲の肉体に宿る「知性」から読み取り、それをプランクトンで再現している。

その治療効果は、人間に対するF・Fの理解が深まるほどに強まる。例えば湿地帯から監房に来て間もない頃は、とりあえず傷口を埋めて、後は対象の自然治癒力に任せるだけだった。しかし6部後半では、臓器や眼球などの複雑な器官に対しても、大して時間をかけずに模造して復元できるまでになっている。

ただしフー・ファイターズの治療能力は、ジョジョ4部の「クレイジー・ダイヤモンド」や5部の「ゴールド・エクスペリエンス」に比べると数段劣り、深い傷に対しては治療対象の自己治癒力と合わせても、完全に元どおりにできるほどのものではない。

一雫の知性

囚人たちが生活する監房で一人の人間として生活を始めたF・Fは、無意識的な欲求からか、「大いなる意識」であった時の大局的な視点からは見ることができなかった、世界のこまごまとした「雑多さ」と、「大いなる意識」であった時の孤独からは経験することのできなかった「人との関わり合い」に強い興味を示す。

そして彼女はそれらに満ちた生活で起こる「些細な出来事」や「無駄な出来事」を積極的に楽しみ、その「思い出」を大事に蓄えながら生きていく。

F・Fはいつしか自らの中に、心を奮い立たせ行動に揺るぎない覚悟を与える不可視の力、「勇気」と呼ばれる力の存在を認識し、勇気は自分が生きてきた無数の「思い出」から生み出されるものであることを理解する。そして、個々人によって千差万別なこの「思い出」こそが、運命を切り拓き世界を変えていく「人間のエネルギー」であると確信する。

またそれと共にF・Fは、「大いなる意識」の記憶が眠る自分の無意識下において、一体の生物の生命力が、その肉体の細胞一つ一つを源とするように、世界全体を先へと進める活力も、そこに生きる人間一人一人の勇気という活力を源とすることを理解する。そして勇気を生み出す個々人の思い出は、「大いなる意識」の大局的な視点からでは小さすぎて見ることさえできず、それゆえにその大局的な導きにおいて、歯牙にもかけられること無く切り捨てられてしまう領域にこそ存在することをも理解する。

徐倫と共に戦い続けた果てにF・Fは、DISCの力を失い死を迎える。「大いなる意識」の無限のまどろみへと帰っていくF・Fの知性が、小さな世界で彼女が理解した「人間のエネルギー」についての記憶を持ち帰れるのか、持ち帰れたとしてその記憶がこの先の「大いなる意識」の導きに何らかの影響を与えることができるのか、それは分からない。

ただそれは当の本人であるF・Fにとっては、きっとあまり重要なことではないだろう。彼女にとって何より大事なことは、自分が生きることになったこの小さな世界の中、自分が出会えた仲間たちとそして自分自身のため、自分が培ってきた思い出を勇気という力に変えて、自分にできる精一杯を行えたことである。そして仮に自分にその先があるとしてもそれは、人として死んでいく自分の預かり知らない領域、「神のみぞ知る」領域のことでしかないのである。

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