儚き伴星ツェペリ一族

■「ジョジョの奇妙な冒険」という作品は知ってのとおり、ジョナサン・ジョースターから始まる「ジョースターの血統」が世代交代しながら主人公を務めていく一大叙事詩である。そしてジョジョ1〜2部と7部には、彼らジョースターの師匠や相棒として、準主人公のように振る舞う一族が登場する。それが「ツェペリの血統」である。

■ツェペリの血統として登場するのは、1部ではジョナサン・ジョースターの師匠ウィル・A・ツェペリ、2部ではジョセフ・ジョースターの相棒シーザー・アントニオ・ツェペリ、7部ではジョニィ・ジョースターの師匠兼相棒ジャイロ・ツェペリである。

■そしてジョースターとツェペリの、主人公と準主人公の立場を分けるものは、両者の「魂の輝き」の違いにある。

■ジョジョの初代主人公であるジョナサン・ジョースターは、子供の頃からまっすぐな性格と勇気と爆発力を備え、そして成人する頃には身長195cmの鍛えられた肉体と考古学研究の知性を獲得し、さらには「波紋法」という肉体内の生命エネルギーを操る才能もずば抜けていた。それゆえにジョナサンとその子孫たちの「魂」は異常なまでに強い輝きを放ち、どんな困難も物語の主人公のように実力と強運で乗り越えていく。

■その強力な生命の輝きは、ジョジョのテーマである「人間賛歌」の「理想」ともいえる。しかしそれは逆に言えば「現実的ではない」ということでもある。ジョースターの魂は強力すぎるがゆえに人としてのバランスを欠いており、良くも悪くも「いびつ」なのである。

■一方でウィル・A・ツェペリを始めとするツェペリの魂の輝きは、ジョースターのそれには遠く及ばない。しかしそこには人としての「正しく美しいバランス」がある。ツェペリの血統はジョースターに比べて良くも悪くも「常人」なのである。

■そしてこのようなツェペリにとって、1〜2部の「波紋法」や7部の「黄金長方形の回転技術」はうってつけの技能である。これらはどちらも、常人でも死に物狂いで何年も修業すれば獲得できる技能であり、また人の肉体に本来備わるエネルギーを「正しく美しく」引き出す技能でもあるからである。

■またこれは、ツェペリ一族が「スタンドの部」である3〜6部には登場せず、7部のジャイロ・ツェペリが鉄球の技術をメインに戦ったこととも関係している。スタンドとはその人間が持つ特徴的な部分だけをエスカレートさせて能力化したものであり、その性質上多分に「いびつ」である。このような力は「正しく美しいバランス」を血統として受け継ぐツェペリが持つにはそぐわないのである。

■ツェペリの家系は常人ゆえに、ジョジョ作中で「人の肉体と精神の現実的限界」を色濃く示す。悪鬼羅刹の力が跋扈するジョジョの世界ではツェペリの生命はシャボン玉のように儚く、いつか怪力乱神の力に真正面から砕かれ、残酷な死を迎える運命にある。

■しかしそれゆえに、弱き身でなお正義を貫くツェペリの生きざまは、ジョースター以上に鮮烈で美しい人間賛歌となる。ツェペリ男爵が語ったノミの例え話、「恐怖を克服する勇気の素晴らしさ」の話は、才能と強運に守られたジョースターよりも、ツェペリが語るにふさわしいものである。

■そして死の運命に為すすべもなく呑まれる彼らが最期に願うこと、それは自分の最期の行動が誰かに何かをつなげるような、「未来を託す」死となることである。それはジャイロの父親グレゴリオ・ツェペリが語った「ネットの向こう側に落ちるボール」に通じるものであり、そして儚い彼らに望める最大限の「奇跡」である。

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