スタンド使いの特異な「自然治癒」能力

スタンド使いとは、ジョジョの奇妙な冒険第3部「スターダストクルセイダース」から登場する、いわゆる超能力者である。彼らが操る超能力「スタンド」は、物質世界のものとは異なるエネルギーを霊的な世界から引き出すことで発揮され、このエネルギーで物を壊したり燃やしたりできる。

そしてこの霊的なエネルギーは、スタンド能力以外にもいくつかの効果をもたらす。その1つが「スタンド使いの自然治癒力の向上」である。

ジョジョの世界の生物はスタンド能力の有無に関わらず、肉体と同じ姿の「霊体」を持っている。そして霊体は物質世界とは異なる「霊的な世界」に存在し、そこから物質世界の肉体に重なっている。仮に物質世界と霊的世界をそれぞれ1枚の紙であると考えるなら、物質世界の紙に描かれた肉体と、霊的世界の紙に描かれた霊体は、常に重なり続けているのである。

霊的世界にある霊体は、物質世界の肉体が傷ついても傷つかない。またスタンド使いが物質世界に出現させたスタンドで敵の肉体を傷つけても、その霊体までは傷つかない。そして霊体には、傷ついた肉体を霊体の姿のとおりに修復しようとする力がある。ただしその力は一般人では非常に弱い。その一方で、霊的な世界からエネルギーを引き出せるスタンド使いでは、霊体から肉体に伝わるエネルギーも強く、修復力は目覚ましいものとなる。

この原理によって発揮されるスタンド使いの自然治癒能力は、作中の描写を見る限り相当に高い。例えばジョジョ3部でポルナレフは、エボニーデビル戦で足の肉を大きく切り落とされ、布で巻いて応急処置を行い、その直後にはけっこう普通に歩けている。そしておそらく彼はこの時、切り落とされた肉を元の位置にはめ込んでいる。一般には切り落とされた肉を再びつなぐには、血管や神経を縫合する外科手術が必要となる。しかし生まれついてのスタンド使いである彼は、自分の場合そうしておけば肉が自然につながることを知っているのである。

足の肉を切り落とされたポルナレフ
布で縛るだけで済ませるポルナレフ

またジョジョ6部では、スカイ・ハイ戦で腐り落ちたエルメェスの指を、空条徐倫のストーン・フリーの糸で縫いつなげるという応急処置も行われている。そしてそれでエルメェスの指は問題なく動かせるようになっている。

腐り落ちたエルメェスの指
糸で縫いつなげられたエルメェスの指

このようにスタンド使いは戦いでの負傷を、一般人よりはるかにぞんざいな処置で、しかも早期に回復できる。ただこの特異な自然治癒能力をもってしても、失われた指や手足を新たに生やすのは、流石に不可能である。


ちなみにこれに関連して、スタンド能力を引き出す「矢」に刺されてスタンド使いになった者は、その直後に矢に刺された時の傷が治る。そしてこの時の治癒力は、それ以後に獲得する自然治癒能力より劇的である。これはおそらく、非スタンド使いからスタンド使いに変わる瞬間、霊的世界から奔流のように溢れ出るエネルギーによるものである。それゆえにこの効果が表れるのはスタンド使いになった時だけである。

「矢」に射られた山岸由花子の体験談

たださらにその例外として、すでにスタンド使いになっている者でも、そのスタンドが「絶大な進化」を遂げた時には再び劇的な治癒力が発揮される。作中ではこの現象は、ジョジョ5部でゴールド・エクスペリエンスがレクイエムに進化した時のジョルノ・ジョバァーナと、6部でC-MOONがメイド・イン・ヘブンに進化した時のエンリコ・プッチに現れている。

スタンド進化直前の負傷したジョルノ
スタンド進化後の傷が治ったジョルノ