ハイウェイ・スター HIGHWAY STAR
本体名:噴上裕也 <フンガミ・ユウヤ>
暴走族の少年
能力:スタンド使いから養分を奪い、本体の負傷を癒やす
スタンド形成法 | 射程距離 | パワー | 射程・パワー増加法 |
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身体・能力顕現体 +α(本文参照) |
杜王町内 | 低 | 全操作分離 |
当ページの要点
- 杜王町という土地には、「知性」という力が大地に長年留まり続けて生じた意識体が存在する。
- この意識体のうち大地の表層部分は、地上に生きる「人間の肉体」を強く記憶する機能を持つ。
- ハイウェイ・スターの人型スタンドは、大地の表層に宿る「人体の記憶」に大きく依存して形作られている。
- 瀕死の本体から発現したハイウェイ・スターは、自身の「エネルギー的なマイナス」を埋めるべくスタンド使いから養分を奪おうとする。
知性の大地とその表層
ジョジョの世界には、世界をあまねく満たし、物質や生物に宿っている霊的な力である「知性」なるものが存在する。知性はそれが宿った物質・生物の構造などを情報として「記憶」し、またその情報を周囲に信号として「発信」する性質を持っている。
そして知性は、人々が集まり、住まい、社会を形成する土地の「大地」の中に、その土地固有の巨大な意識体を生じさせる。この「知性の大地」は、過去にその土地に生きた者たちの生活習慣・しきたり・精神性といった諸々を記憶しており、その情報を今現在その土地に生きる者たちに発信する。
この影響によりその土地の住人は無意識的に、その土地で受け継がれてきた精神性に従う傾向が強くなる。またその傾向は、大地に生える「木」のように先祖代々その土地に「深く根ざす者」ほど強くなる。
こうしてその土地は緩やかにしかし確実に、この「知性の大地」にして「大地に根ざす者たちの隠れた領主」である存在、「木と土の王」の力に治められていく。
ただし「木と土の王」のうち、上記のような「頭脳」的役割を果たすのは大地の奥深くの部分であり、大地の表層部分はまた違った機能を持っている。その部分は生物の皮膚感覚のように、より即物的に「人間の肉体」を感じ取り、記憶している。
また人体の中でも特に地面に近く、大地を踏みしめる「足の形」は、「活動する人間の象徴」として一層強く記憶されている。
スタンド解説
ハイウェイ・スターは、ジョジョの奇妙な冒険第4部「ダイヤモンドは砕けない」の登場人物、噴上裕也のスタンドである。
そのスタンド体は「足跡型」と「人型」の2つの形態を持つ。足跡型は、2〜3cmの厚みを持った足跡の形状をしており、その体色は均質に黒ずみ、そしてこれが何10体も集まって成る群体型スタンドである。一方の人型は、足跡型が円盤型に変形しながら積み重なることで形作られる。その姿は、足跡型と同じ皮膚色をした裸の人間の姿で、体表には人間の形状を保持するかのように白いロープ状のものが巻き付いて、全身に菱型の模様を形作っている。
暴走族である噴上裕也は、杜王町北西部の「二ツ杜トンネル」でバイク事故を起こし、意識不明の重体になっていたところを「矢」で射られてこのスタンドを発現した。また杜王町の大地に空けられた大きな穴であるこのトンネルで発現したハイウェイ・スターは、噴上裕也を本体とすると同時に、杜王町の大地に宿る「知性」という力が作り出す意識体、「木と土の王」とも深くリンクしている。
そして「木と土の王」の表層部分が記憶する「人間の肉体の記憶」と、事故で死にかけていた噴上裕也とが組み合わさった結果、ハイウェイ・スターは1つの異様な性質を獲得する。その性質とは、スタンド体が「マイナスの生命エネルギー」を持つことである。
仮に本体の生命エネルギーを数値化するとして、全く負傷していない時を100、瀕死の時を10とする。本来なら本体が瀕死であれば、人型スタンドも同じ負傷状態、10の生命エネルギー値で出現する。しかしハイウェイ・スターは大地の表層が宿す人体の記憶により、常に生命エネルギー値100の時の姿、負傷していない姿を保っている。その差分である90は「人体の記憶」だけで作られた空っぽの器であり、それをこのスタンドは「マイナスの生命エネルギー値」として持つことになる。
そしてこの性質によってこのスタンドは、「プラスの生命エネルギーを持つ者」と重なることで、そのエネルギーを吸収する体質を持つことになる。
ハイウェイ・スターには、噴上裕也の無意識と、「木と土の王」の意識が混ざりあった「本能」が宿っている。そしてこの本能は、自身の生命エネルギー値のマイナスが強いほどにハングリーさを増し、生者の肉体に食い込みそのエネルギーを奪って、マイナスを埋めようとする。
ハイウェイ・スターに食い込まれた生者は、生命力・気力・精力などのエネルギーを急速に奪われ、10秒程度で身動き一つ取れないほど衰弱してしまう(この時その生者の肉は、色を抜かれたかのように半透明化して、中の骨が透けて見える)。
ただし吸収したエネルギーのうち、スタンド体であるハイウェイ・スターに有用なのは「スタンドエネルギー」のみである。つまり他のスタンド使いからスタンドエネルギーを「養分」として吸い取ってはじめて、ハイウェイ・スターは自身のマイナス値を「埋める」ことができる。
そしてこのスタンド体のマイナス値が減ると、その量に応じて本体噴上裕也の負傷も急速に治癒していく。ちなみに作中で噴上裕也は、重体で入院中の状態からスタンド使い2人分の「養分」を奪ったあと、「あと2〜3人分で全快する」と推測しており、つまり重体からの全快にはスタンド使い4〜5人分の養分が必要という計算になる。
ところでこのスタンドが生まれた「二ツ杜トンネル」の中は、杜王町の「大地の表層」であると同時に、杜王町の大地に囲まれることで「大地の深奥」に近い性質も持っている。それは人体において、鼻の穴の奥の皮膚が脳に隣接しているのと似ている。それゆえにこのトンネル内でのハイウェイ・スターは、「木と土の王」の頭脳的側面の影響を強く受け、高い知能を発揮できる。そしてこのスタンドはトンネルの壁の中に1つの「部屋」を作り出し、その中で獲物となるスタンド使いが訪れるのを待ち受ける。
ハイウェイ・スターが作り出す部屋は六畳ほどの広さを持ち、それがトンネル内の壁に埋まるように存在している(その部屋は現実世界には存在しない「幽霊」のような異空間であり、これと同種のものはジョジョ作中にたびたび登場する)。室内のトンネル側の壁には扉と窓が1つずつあり、室内には一通りの家具があり、ハイウェイ・スターはその一つである大きな衣装箪笥の中に潜んでいる。
この部屋ができたもともとの理由はおそらく、事故を起こした噴上裕也が意識不明で病院に運ばれる際に、ハイウェイ・スターが「木と土の王」とのリンク状態を保つためにトンネルに残ろうとし、その滞在場所として作られたと考えられる。しかしその後でこの部屋には「木と土の王」によってもう1つの役割が与えられる。それは「養分」を持つスタンド使いをおびき寄せる「罠」としての役割である。
スタンド使いが二ツ杜トンネルを通り、この部屋を見つけると、部屋の中にはそのスタンド使いを引き寄せるのに適した「幻覚」が、「木と土の王」の記憶情報から引き出され、描き出される(例えば岸辺露伴がこの部屋を見つけた際には、彼が探している殺人鬼吉良吉影の姿が幻覚として描き出されていた)。そしてスタンド使いがこの部屋に入ると、ハイウェイ・スターは相手に襲いかかり、養分を奪う。
またこの時ハイウェイ・スターは、部屋に入った相手の「匂い」を記憶する。そしてもしスタンド使いが罠の部屋から逃げ出した場合には、ハイウェイ・スターは足跡型の姿に分裂して、相手を猟犬の群れのように追いかけ始める。
ただし相手を追いかけてトンネルから離れたハイウェイ・スターは、「木と土の王」の頭脳とのリンクが弱まって知能が大きく低下し、覚えた匂いを何も考えずに追いかけることしかできなくなる。
つまり追跡中のハイウェイ・スターはいわゆる「遠隔自動操縦型」のスタンドとなる。また本体の噴上裕也は、このスタンドがトンネル内で「木と土の王」に操作されている時も、トンネル外で「遠隔自動操縦型」として活動している時も、スタンドの状況を知ることはできない(ただし自分の肉体の回復具合から、誰かから養分を奪ったことは把握できる)。
杜王町の「大地の表層」とリンクしているハイウェイ・スターは、杜王町の全域を射程圏内とし、地面を蹴り進んで走行する。その走行速度は最大で時速60km(100mを6秒)に達する。このためハイウェイ・スターに追いかけられるスタンド使いは、バイクなどを使わなければ簡単に追いつかれてしまう。
ちなみにこの時速60kmという速さはおそらく、人間やチーターの限界走行速度がその肉体構造に依存するのと同じく、ハイウェイ・スターの構造とパワーに依存したものである。足跡型のスタンドの群れは、互いに引力を働かせてゆるやかな一つの塊となって走行し、一つの足跡が地面を蹴るとそれは塊全体を前方に押し出す力となる。
ハイウェイ・スターはパワーは低いながらも多数の足で常に連続して地面を蹴り出せるため、その走行速度は人間より速くなる。その結果としての限界が時速60kmというわけである。そしてこの走行原理によってハイウェイ・スターは、人間と同じく静止状態からの走り出しでは、最高速に達するまでに数秒の時間を要する。
またハイウェイ・スターはスタンドの足で走るだけでなく、杜王町内の任意の場所に「テレポート」することもできる。これはこのスタンドにとって、杜王町の大地が「もう1つの本体」といえる存在だからである。つまりスタンド使いが、例えば頭から引っ込めたスタンドを足元から再出現させるかのように、ハイウェイ・スターは杜王町の大地にいったん引っ込めば、別の場所から再出現できるのである。
これを利用すればハイウェイ・スターは、仮に時速80kmのバイクに乗った相手に大きく引き離されても、相手のだいたいの位置を予測してテレポートして、距離差をリセットできる。
追跡中のハイウェイ・スターはそのパワーの低さゆえに、障害物を破壊したり透過したりはできず、厚手のガラス程度で簡単に移動を阻まれてしまう。一方でスタンド使いの肉体に触れてからであれば、鼻先にある養分への飢えが勝り、力任せに透過して肉体に食い込んでくる。さらに肉体の各所から食い込んだ足跡型のスタンド群が、相手の肉体内で人型へと変われば、肉体を挟み込んで貫通するように人型になることができ、より強力に食い込んだ状態を維持できる。
とはいえやはりこの「物質に重なった状態」にはかなり無理があるため、例えば相手がその状態から時速60km以上で離れれば、ハイウェイ・スターはたやすく引っこ抜けてしまう。
なおハイウェイ・スターは、スタンド使いの「肉体」からはスタンドエネルギーを養分として問答無用で奪えるが、相手の「スタンド体」には接触しても養分を奪えず、また「スタンド能力」もそのまま受けてしまう。仮にスタンドエネルギーを原油と考えるなら、スタンド体やスタンド能力は原油を加工したプラスチック製品のようなものであり、ハイウェイ・スターはスタンドエネルギーそのものしか奪えないのだろう。
このようにハイウェイ・スターは相手スタンドの攻撃には基本無力である。ただ、本体が瀕死の時に発現したハイウェイ・スターは、本体にほとんど負荷を与えないように形成されている。前述したようにその姿は、杜王町の大地に記憶された人体の記憶情報に大きく依存して作られ、このためハイウェイ・スターが敵スタンドから殴られたりしても、その衝撃はそちらで肩代わりされて本体にはほぼ影響はない。これに加えてハイウェイ・スターは衝撃を受けると簡単に輪切りになってバラけるため、衝撃の大半は受け流される。これは相手スタンドの「能力効果」を受けた場合も同様である。
これらの性質によってハイウェイ・スターは、入院中の噴上裕也に負荷を与えず安静な状態に保ったまま、スタンド使いを活発に襲えるわけである。
そしてハイウェイ・スターは噴上裕也の負傷が完全に癒えた後も、そのままの姿で使用可能である。ただしマイナス値を持たなくなったそのスタンド体は、養分を奪う性質を失い、また本能的なハングリーさも失われている。このため自動操縦での追跡能力は大きく低下してしまっている。代わりにハイウェイ・スターは本体の意志で操作する遠距離型スタンドとして、本体またはスタンドが記憶した匂いを追跡する。
また噴上裕也が操作するハイウェイ・スターは普通の人型スタンドのように、他の物体を殴るなどして攻撃することもできる。ただしその体は前述したとおり、衝撃を受けると簡単にバラけてしまうため、本体の強い意志で腕がずれ動くのを抑えた上で殴らなければならない。そしてそれでもその攻撃力はせいぜい、生身の人間が負傷を恐れず全力で殴る程度である(作中ではコピー機を殴り壊すことができなかった)。
本体の噴上裕也は、スタンド使いになる前からかなり優れた「嗅覚」を持っており、スタンド使いになってからはそれがさらに鋭く人間離れしたものになっている。そして彼の嗅覚は、「物理的な嗅覚」と、物体から霊的に放射される「知性信号の受信による嗅覚」の複合として発揮されている。
また彼は甘いマスクを持つナルシストであり、彼をアイドルのように惚れ慕う3人の暴走族仲間の女性と常につるんでいる。そして彼はこの3人の女性だけでなく、杜王町の大地に宿る「木と土の王」にも愛されている。ハイウェイ・スターが「木と土の王」と深くリンクした能力を持つのはそれが理由なのであるが、それについてはまた別頁で解説する。
関連記事
- 『神拒む治外法権「杜王町」』
- 噴上裕也が「木と土の王」に愛される存在であることについて。
- 『バイツァ・ダスト』
- 杜王町に巣食う殺人鬼である吉良吉影のスタンド「キラークイーン」が、「木と土の王」の「祟り神」的な側面とリンクして生まれた能力。「過去」を爆破することで時間を1時間戻すことができる。
- 『クレイジー・ダイヤモンド』
- 壊れた物質や負傷した生物を「修復」できるスタンド。その修復にあたっては「木と土の王」から大量の記憶情報を吸い上げて情報を増幅する必要があり、「人体」を治す時には当然人体の記憶情報が吸い上げられる。
- 『ハーヴェスト』
- 甲虫のような姿を持つ数100体の小型スタンド群。「知性の嗅覚」によって小銭などを探すことができる。そのためか彼らの鼻は結構大きく立派に形作られている。
- 『エアロスミス』
- ジョジョ5部に登場するラジコン戦闘機型スタンド。周囲の「二酸化炭素」を探知する能力を持つが、それは二酸化炭素だけを嗅ぎ分けられる嗅覚によるものである。
- 『「無敵の遠隔自動操縦」という分類』
- 「遠隔自動操縦は本体に影響がない」とされている理由について。