神のささやきを聴く者ディオ・ブランドー

■ディオ・ブランドーは、ジョジョの奇妙な冒険第1部「ファントムブラッド」で、主人公ジョナサン・ジョースターと戦う宿敵である。畜生を絵に描いたようなダリオ・ブランドーを父に持ち、貧民街で育った彼は、心清らかな貴族ジョージ・ジョースターを父に持つジョナサンとは対照的な存在である。

■ジョナサン・ジョースターは、まるで物語の主人公が作者に守護されるかのように、ジョジョの世界の「神」に守護される存在である。彼の力強くまっすぐな「魂」は一等星のようにまばゆい輝きを放ち、その輝きは「神の目」を強く惹きつける。そして神は自らが持つ「運命を操る力」でもってジョナサンを導き、守護するのである。

■一方でディオの魂の輝きは、ジョナサンのそれには遠く及ばない。しかしディオにはジョナサンとは異なる魂の才能がある。そしてその才能を知るヒントは、彼の左耳の「3つのホクロ」にある。

■このホクロは、ジョジョの世界の人間の体内にごく稀に生じる、とある「霊的な器官」の影響が外に表れたものである。(カバンの中身がカバンの外観に膨らみを作るように) その霊的器官とは、神が発する微弱な波動を感知・解読する器官、即ち「神のささやきを聴く耳」である。

■この器官を生まれ持ったことでディオは、常に神のささやきを聴き続け、「神の叡智」を無意識に獲得する。それは神が永遠に等しい時をかけて培った、「物事を効率的に有意義な結果へと導く術」である。そしてディオはこの叡智を自分の人生に活かすことで、貧民街の劣悪な環境をクレバーにスマートに生き抜いていく。

■神の叡智は基本的に万能であり、応用次第でどのような物事に対しても効率的で優れた手法を得られる。例えばディオはジョナサンとのボクシングの試合で、20世紀に入ってから発達するとされるスウェーイングなどの技術を歴史に先駆けて見せているが、これも神の叡智をボクシングの身体操作にブレンドして編み出したものである。

■しかし一方で、無機質に結果だけを求める「神の叡智」は、過程や感情を重視する「人の正義」とは水と油のように相容れない。このため神の叡智のみに従って生きるディオは、人の世界では手段を選ばない「生まれついての悪」であり、また理性の仮面が剥がれれば未発達な感情をさらけ出したりもする。

■ちなみにディオのホクロを指摘した東洋人のワンチェンは、祖国で同じホクロを持つ者を見たことがあり、「その人物は波乱の人生を送ったが183歳まで生きた」と語っている。その人物もまた神の叡智によって、良くも悪くも常人には叶わぬ太く長い人生を謳歌したのだろう。

■「神の声を聞く耳」はあくまで神の波動を一方的に受信するだけのものであり、神の目を自分に向けさせたり、神自体を味方に付けたりすることは無い。しかし、ジョジョの第1話でジョナサン・ジョースターとディオ・ブランドーが出会ったことで、そこに1つの変化が生じる。

■その変化とは、ジョナサンに向けられていた「神の注視範囲」にディオが入ったことである。これによって神は、人でありながら神の叡智に従って行動するディオの存在を認識する。そして神は、この「神の叡智を宿す者」が、「輝く魂を持つ者」と「別々」であることに非効率さを感じ、その解消のために「両者の合一」を望むようになる。

■ジョジョ1部の最終盤で、頭部だけになった吸血鬼ディオはジョナサンに、「自分たちの関係は神によって計算されたもの」「自分たちは1つになるのが運命」と語り、ジョナサンの肉体を奪おうとする。そして、1部のラストでは失敗したかに思われたそれは実際には成功しており、彼は100年後の3部の時代に復活する。

■そして彼、「神の声を聴く頭部」と「神の目を惹きつける肉体」とが揃って誕生した「DIO」は、絢爛たる永遠を生きるため、神の叡智と神の守護のもと、世界の支配を目指すことになる。

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