大地に潜むは八百万の顔の狂気、地上に立つは一つの仮面の正義。
クレイジー・ダイヤモンド CRAZY DIAMOND
本体名:東方仗助 <ヒガシカタ・ジョウスケ>
ジョセフ・ジョースターの息子、プロフィールJC29巻P75、エピソードJC35巻P57〜
能力:破壊された物や生物を直す
スタンド形成法 | 射程距離 | パワー |
---|---|---|
身体同形体+α (本文参照) |
2m | 高 |
当ページの要点
- ジョジョの世界には「知性」という世界を満たす力が存在する。
- この「知性」は世界のあらゆる物体に浸透して宿り、その構造を記憶する。
- クレイジー・Dは破壊された物体の中にある「知性」の記憶を基に、物体を修復する能力を持つ。
- またその修復には仗助が暮らす「杜王町の大地に宿る知性」も重要な役割を果たす。
知性の大地
ジョジョの世界には、世界をあまねく満たし、物質や生物に宿っている霊的な力である「知性」なるものが存在する。知性はそれが宿った物質・生物の構造などを情報として「記憶」し、またその情報を周囲に信号として「発信」する性質を持っている。
そして知性は、人々が集まり、住まい、社会を形成する土地の「大地」の中に、その土地固有の巨大な意識体を生じさせる。この「知性の大地」は、過去にその土地に生きた者たちの生活習慣・しきたり・精神性といった諸々を記憶しており、その情報を今現在その土地に生きる者たちに発信する。
この影響によりその土地の住人は無意識的に、その土地で受け継がれてきた精神性に従う傾向が強くなる。またその傾向は、大地に生える「木」のように先祖代々その土地に「深く根ざす者」ほど強くなる。
こうしてその土地は緩やかにしかし確実に、この「知性の大地」にして「大地に根ざす者たちの隠れた領主」である存在、「木と土の王」の力に治められていく。
スタンド解説
クレイジー・ダイヤモンドは、ジョジョの奇妙な冒険第4部「ダイヤモンドは砕けない」の主人公、東方仗助のスタンドである。このスタンドは破壊された物質や負傷した生物を「元どおりに直せる」能力を持つ。
クレイジー・Dは、特撮ヒーローの着ぐるみのような姿を持つ人型スタンドである。肉襦袢に覆われたようなその全身は、筋肉の盛り上がる部分はダイヤモンドのように青みがかった白色の装甲を被せたようになっており、それ以外の体表は血肉の色のように赤みがかっている。またその頭部は装甲と同色の兜で目と口元以外が隠されている。そしてそれら全身の装甲は、頭頂部や肩の部分など、所々が「ハート形」になっている。また後頭部の下方からはパイプが6本伸び出て、それらは背中の中央上部辺りへと繋がっている。
仗助は、母親である東方朋子が暮らす4部の舞台、杜王町で生まれ育ったが、彼の父親はジョジョ2部の主人公ジョセフ・ジョースターである。そしてジョースターの血を引く彼は、4〜5歳の時にDIOという男から発信される「邪悪な波動」を受けて高熱を発し、50日間生死の境をさまよった(ジョジョ3部の空条ホリィと同じように)。
まだ幼児だった仗助は肉体的にも精神的にもホリィより弱く、そのままではDIOが殺されることになる50日後を待たずして死ぬか、あるいはDIOの思念に洗脳されてしまうしかなかった。しかし彼はそのどちらにもならず生き延びる。そのきっかけとなったのは、彼が病院に運ばれる際にその手助けをした一人の少年である。
少年のヒーローのような行動を心に焼き付けた仗助は、その記憶をひたすら思い返してDIOの邪悪な波動に抵抗する。そしてそれが彼に一つの変化を起こす。その変化とは、自分の母親側の血筋、祖父以前の代から杜王町に暮らす自分の血筋を通じて、杜王町の大地に宿る「知性」という力が作り出す意識体、「木と土の王」からの情報も受信できるようになったことである。
そして仗助はこの能力で杜王町の大地から、あらゆる情報を無意識かつ無差別に受信し始める。これによりDIOの邪悪な思念は、杜王町の大地に記憶された「八百万の思念」でその毒性を薄められることになる。
そして50日後、DIOからの邪悪な思念は途絶えて仗助は高熱から快復するが、一方で杜王町の大地からの受信能力は絶えることなく働き続ける。50日間ひたすら行い続けたそれはもはや、自動的な性質として強固に定着され、仗助自身にも止めることはできなくなってしまっている。
しかしこの性質こそが、仗助のスタンド「クレイジー・D」の並外れてパワフルなスタンド体と、物体を修復する能力の礎となっている。そしてそれらには「知性」が持つ性質の一つである、「知性の引力」という力が深く関係している。
知性の引力
ジョジョの世界に存在する「知性」という力は、前述したとおりそれが宿った物体の情報を「記憶」し、またその情報を周囲に「発信」する。
そしてある物体から発信される知性信号が、「同じ知性情報」を宿す別の物体に届くと、それらは「引力」を発生させて互いに引き合う性質を持つ。そしてこの「知性の引力」は、物理法則において「重力」と「磁力」が別の引力であるように、あるいは神道において万物に宿るとされる神仏が「八百万の神」として分けられているように、それぞれの物体の素材や構造などに対して、無数の種類の引力が存在する。
ただそれらの引力は完全に別個に存在するわけでもなく、「近い」知性パターンのものは「同じ」ものより弱いながらも引力は働く。例えば「鉄」は同じ「金属」である「銅」や「アルミ」ともある程度は引き合うわけである(そしてさらに、例えば人間社会で知り合いの知り合いを辿っていくと全人類を結び付ける図が描けるように、無数の種類の知性情報もそれぞれの関連性を辿っていけば、あらゆる情報がつながることになる)。
ただし「知性の引力」は、物理的な力としては重力や磁力とは比較にならないほど弱く、通常は存在しないも同然である。
スタンド解説(2)
クレイジー・Dの肉襦袢をまとったようなスタンド体には、他の人型スタンドとは大きく異なる特徴がある。杜王町の大地から「八百万の記憶」を受信し続けているクレイジー・Dは、それらの記憶を常に体内に充満させている。そしてそれらの記憶に働く緩やかな「知性の引力」は、スタンドパワーを与えられて強い結合力となり、クレイジー・Dの体内に柔軟性を持った立体的な網目状の結合組織を作り出している。
これによりクレイジー・Dのスタンド体は、半ばゴムの塊のような「弾性」を有している。そしてこの性質はこのスタンドの戦闘力を、攻守両面において非常に強力にしている。攻撃に際してはその拳は、曲げや捻りの反動を加えて弾き出すように繰り出されるため、非常に鋭く重い。特に両拳による連打(通称「ドラララのラッシュ」)の威力は、空条承太郎の「スタープラチナ」にも引けを取らない。
また攻撃を受けた際には、その体は硬質ゴムのように衝撃を吸収するため、他の人型スタンドを大きく上回るタフさを発揮する。
ちなみに、このように強い弾力を持ったクレイジー・Dを仗助が動かすには、通常の人型スタンドより強い「精神の信号」が必要であると推測される。前述したクレイジー・Dの後頭部から背中に繋がるパイプはおそらく、頭部からの「精神の信号」を胴と手脚に強く送るための補助パーツである。
さらにクレイジー・Dは、全身を常に引き締め続けるこの「知性の結合力」により、「スタンド体の外見に本体側の負傷が反映されない」という異例な特徴がある。例えば本体の仗助が全身傷だらけで大量出血していようと、太ももが木片に貫かれていようと、クレイジー・Dの側ではそれらは引き締められ塞がれて、外見上は全く負傷していない姿を保ち続ける。
逆にクレイジー・Dが攻撃され負傷した場合には、そのダメージは当然本体にも返るが、スタンドの側は数秒もすれば「知性の結合力」で再度引き締められて元の姿を取り戻す。
そしてこの性質は、スポーツ選手が故障部位を補強するために付けるサポーターのような効果をクレイジー・Dの全身に与え、負傷による戦闘力の低下を大きく抑えることができる。
そしてクレイジー・Dが持つ「物体を直す能力」も、「知性の引力」にスタンドパワーを与えることで行われる。クレイジー・Dは、物質や生物などの物体に触れることで、その物体に対応・関連する知性情報を大地から大量に受信することができる(この性質は父親ジョセフのスタンド「ハーミットパープル」によく似ている)。
そしてクレイジー・Dはその大量の知性情報にスタンドパワーを加えて物体に流し込むことで、その物体内に「記憶の引力場」とでも呼ぶべきものを作り出す。この「記憶の引力場」は、強力な電磁石が周囲の鉄をパワフルに引き寄せるように、同種の知性情報を宿す物体にのみ働く「記憶の引力」を発生させ、それらを強力に引き寄せ、くっつける。これがクレイジー・Dの修復能力の原理である。
クレイジー・Dの修復能力は、物質や生物の損傷がどれほど酷くても、物体内の「知性」に破壊されることなく残っている「その物体の構成情報」によって、元の構造を取り戻させて復元することができる。またその修復には「記憶情報の部分差」も非常に重要な役割を果たす。例えばバラバラに破壊された物体が直る時には、その物体「全体」が一つの塊に戻るべく強く引き寄せ合うのと同時に、その「部分」部分は「記憶情報の部分差の一致」によって、さらに強く引き寄せ合う。
これによってバラバラに破壊されていた物体は、ジグソーパズルのピースが正しく噛み合わされ完成されるように、正確に各部分が組み合わされる。そしてさらに「記憶の引力」は、組み合わされた部分の断面の、原子レベルでの結合状態すらそのパワーと記憶の部分差とで精確に復元し、以上をもって物体は「元どおりに直る」ことになる。
ただし仗助が「怒っている」時に修復能力が発動された場合には、破壊された物体が「歪な形」に直ってしまうことが多々ある。これは修復能力が雑に働いた結果、その物体本来の形状やディテールを無視して直ってしまうからである。
クレイジー・Dが生み出す「記憶の引力」のパワーは非常に強く、200kg近いバイクも引っ張り寄せ、ひしゃげた鋼板も力任せに元どおりに曲げ戻す。またその直すスピードも非常に速く、対象の破壊度合いや破片の散った範囲の広さにもよるが、完全に直るまで大体は数秒足らず、長くても10秒弱しかかからない。
ただし「記憶の引力場」のパワーは磁力と同様に距離に反比例して弱くなる。このためバラバラにされた破片が100mも離れれば、それが紙切れ一枚程度の重さでも引き寄せることはできない。
なお、2つ以上に分かれた物体が直る際には、基本的には「重い方」に「軽い方」が引き寄せられる(どの断片に「記憶の引力場」が与えられたかは関係ない)。これは磁力において「引き寄せる側」になるのが「磁力の強い方」ではなく「重い方」であるのと同じ理屈である(軽い方に重い方を引き寄せたければ、軽い方をクレイジー・Dで抑えておくなどする必要がある)。
クレイジー・Dの修復能力は、破壊された物体に流し込む「記憶情報」のコントロールにより、いくつかの変則的な手法での修復も可能である。まず可能なのは「物体の一部分だけを直す」ことである。例えばクレイジー・Dが車をバラバラに破壊してタイヤも破壊し、そのタイヤに「タイヤの記憶情報」だけを流し込めば、車本体は引き寄せられずにタイヤだけが直る。
またクレイジー・Dは、破壊した物体に対して「その物体の別の状態」の記憶情報を流し込むことで、物体をある程度ではあるが「変質」させることもできる。作中でのクレイジー・Dはこの手法で、料理を調理前の食材に戻したり、アスファルトをコールタールに戻したりしている。これらの変質は一見すると修復の範疇を越えているようにも思えるが、実際には「焼け焦げた物」を直して焼ける前に戻すのと大差ない。
さらにクレイジー・Dは、物体を変質させる能力を使った究極的な技として、人間を物質内に「封印」するという芸当も可能である。この技で封印された人間は生命活動をほぼ停止し、その物質に囚われた半ば幽霊のような存在として生き続けることになる。作中ではこの技は、仗助の家族に危害が加えられた時に二回使用され、一人目の片桐安十郎は杜王町の路傍の岩に叩き込まれて慰霊碑にされ、二人目の宮本輝之輔はシュレッダーの紙に叩き込まれて本へと変えられ、杜王町の図書館に寄贈されている。
このようにクレイジー・Dの修復能力は比較的万能であるが、それでも「直せないもの」は存在する。まず直せないのは「部品が足りない物体」で、その部品の部分だけが足りない状態で直る。これには「記憶の引力」が及ばないほど部品が遠く離れてしまった物体や、「ザ・ハンド」のスタンド能力で削り取られ消滅させられてしまった物体が該当する。
また「死んだ生物」を直した場合には、肉体は元どおりに直せるが、「魂」が戻ってこなければ「生き返る」ことはない。また生物の「遺伝的な病気」も直すことはできない。それは「直す」というよりは生物の遺伝子を書き換えて問題なく機能させる「創造」に属する行為だからである。
さらにクレイジー・Dは作中で明言されているとおり、本体である仗助の負傷も直すことはできない。その理由は彼の肉体内の知性情報にある。前述したようにクレイジー・Dは常に大地から「八百万の記憶」を受信しており、その記憶は仗助の肉体にも流れ込む。この結果、仗助の肉体内に宿る知性は、「仗助の肉体の記憶」が「八百万の記憶」により限りなく薄められてしまっている。
それゆえに物体内の記憶情報を参照して「記憶の引力場」を作り出すクレイジー・Dの修復能力は、仗助の肉体にはほとんど効果を発揮できないのである。
関連記事
- 『ハーミットパープル』
- 仗助の父親ジョセフ・ジョースターのスタンド。ジョセフの肉体またはジョセフが触れた物体と同質の知性情報を宿す物体を「念写」できる。
- 『DIOの呪縛』(スタンド名なし)
- 仗助の異母の姉にあたる空条ホリィのスタンド。そのツタ状のスタンドはDIOの邪悪な思念をアンテナのように強力に受信し、ホリィの精神と肉体を衰弱させる。
- 『ザ・ワールド』
- 幼少時の仗助に邪悪な思念を送り込んだDIOが持つスタンド。ただDIOの思想は「人の世の正義」から見れば邪悪なものであるが、より大いなる「神の正義」から見れば必ずしも間違ってはいない。
- 『ゴールド・エクスペリエンス』
- ジョジョ5部の主人公ジョルノ・ジョバァーナのスタンド。ジョルノは仗助と同じく幼少期にDIOから発信される「邪悪な思念」を受け、いったんはそれに洗脳されるが、後にDIOの思想を自分なりに解釈した独自の哲学を編み出す。そしてジョルノはそれをきっかけに、「生物を生み出す」能力を獲得する。
- 『神拒む治外法権「杜王町」』
- 東方仗助の首の付け根にあるはずの「星形のアザ」が作中で一度も描かれなかった理由について。
- 『パール・ジャム』
- イタリア料理人トニオ・トラサルディーのスタンド。彼が作る料理にはスタンド能力が込められており、肉体の不調や病気を治す力がある。
- 『ハイウェイ・スター』
- 暴走族の少年、噴上裕也がバイク事故を起こして瀕死だった時に発現させられたスタンド。スタンド使いの肉体から「養分」を奪うことで本体の負傷を癒せる。
- 『キラークイーン』
- 物体を爆破して破壊する能力を持つスタンド。その本体吉良吉影は「杜王町の大地に宿る意識体」の一側面に愛され、運命的に守護されている。