それは人の理を超えて、世界と共に歩む力を持つ者。
それは人の善悪を超えて、世界を導く宿命を持つ者。

ザ・ワールド THE WORLD:世界
Tarot-No.21

2017/01/19改訂

本体名:DIO <ディオ>

ディオ・ブランドーの頭部とジョナサン・ジョースターの肉体を持つ吸血鬼

能力:時間の止まった世界で自分だけが動ける

スタンド形成法射程距離パワー
身体同形体 10m

当ページの要点

  • ジョジョ3部に登場するスタンドは全て、「生命の樹」と呼ばれる図形に関係している。
  • タロットのスタンドは生命の樹の図上で「変化」を表すパスに対応する。
  • 「世界」のパスは成長するものが、自身に新たな自由を獲得させる「変容」を行う。
  • ザ・ワールドは「止まった時間の中での活動」という無敵の能力を獲得した人型スタンドである。

タロット解説

ジョジョ3部に登場する22枚の「タロットカード」は、占いの道具としてよく知られ、それぞれのカードにはさまざまな解釈が与えられている。そしてその解釈法の1つに、『生命の樹』と呼ばれる図像を絡めたものがある。生命の樹とは、宇宙・生命・人類・個人など、この世界の中で進化・成長する全てのものが、成長する際に辿る変化の共通性を図像化したものである。

「セフィロトの樹」とも呼ばれるその図は、「状態」を表す10個の円形「セフィラ」と、円形同士を結び「変化」を表す22本の小径「パス」から成り、タロットはパスの方に対応している。(また3部後半に登場する「エジプト9栄神のカード」はセフィラに対応している) 

そして22枚のタロットのうち、「総括せしもの」を暗示する「アトゥム」のセフィラと、「遊離せしもの」を暗示する「オシリス」のセフィラを結ぶ「世界」は、「構成要素の変容」を暗示するカードである。

生命の樹の最後に位置する「世界」のパスで起こる変化は、イモ虫がサナギの中で蝶に変態するかのような変化である。成長体は「世界」の前段に位置する「星」が暗示する「浄化」と「太陽」が暗示する「融和」によって、単純かつエネルギーに満ちた状態となる。また「世界」の左右に位置する「月」が暗示する「脱出」と「審判」が暗示する「補強」によって、外界から隔離された状態となる。そしてこれら4つのパスに囲まれた「世界」で成長体は、「自分」だけに集中し、自分が内包する要素から辿り着ける自然な姿へと様変わりする。

この「生まれ変わり」ともいえる変化こそが、「世界」で起こる「変容」である。そしてこの変容によって成長体は、今までの自分にはなかった何らかの「自由」を獲得する。イモ虫が蝶になることで空へと飛び立てるように、変容は成長体に新たな分野への道を拓くのである。

ただし変容した成長体には「得るもの」だけでなく「失うもの」もある。蝶がもはや青葉を食べられないように、成長体は大きく変容するほど大きな何かを失うことになる。

人の心の在りようは成長とともに変わり続け、いつしか自分を「過去の自分」とは別人にさえしてしまう。しかしその喪失は成長に伴う必然である。人に宿る知性の目的が、より高等な自由を獲得し、より多くの物事を知ることにあるのなら、自分がより自由な存在に生まれ変わる機会は迷いなく十全に実行されるべきである。そしてその意志は自分ひいては世界を、さらなる成長に導くだろう。

スタンド解説

■ザ・ワールドは、ジョジョの奇妙な冒険第3部「スターダストクルセイダース」にラスボスとして登場する吸血鬼、DIOのスタンドである。

■DIOは3部から遡ること100年前のジョジョ1部に登場するディオ・ブランドーという男の頭部と、1部の主人公ジョナサン・ジョースターの肉体を持つ。そしてここでは詳しく解説しないが、ジョジョの世界には運命を操る「神」が存在し、ディオは「運命を操る神の叡智を知る者」であり、ジョナサンは「神の目を惹きつけるまばゆい生命力を持つ者」であった。DIOはこの2つを兼ね備える者であり、また吸血鬼である彼は人間離れした怪力を有し、さらにはほぼ不老不死である。

■ザ・ワールドは、本体DIOのこのような人間の域を超えた力を体現するかのような姿を持つ人型スタンドである。その姿は黄金の一色に染まり輝き、全身の筋肉ははち切れんばかりに逞しい。さらに胴体や前腕などを覆う装甲や、首の背面を巡る太いパイプ・背中に取り付けられた2本のボンベなどが、このスタンドを同身長・同体格の「スタープラチナ」より巨大に見せている。またその両手の甲には、時計の文字盤を模した飾りが付いている。

■またザ・ワールドの頭部は鼻先から上がマスクで覆われ、その顔は感情を表すことなく厳格さを漂わせている。(余談だがこのマスクを正面から見た形は、『生命の樹』下部の「塔」から「世界」までのパスが構成する図形に良く似ている) 


■ザ・ワールドは空条承太郎のスタンド「スタープラチナ」と同じタイプの、「人型スタンドの限界性能」に達したスタンドである。そのパワーはロードローラーを持ち上げられるほど強く、そのスピードと精密動作性は数10本のナイフを瞬時に正確に標的に突き刺すことが可能である。そしてそれらを基盤とした戦闘能力も当然非常に高く、繰り出される拳の一打一打は速く重く、特に両拳による連打(通称「無駄無駄のラッシュ」)の威力は凄まじい。

■また吸血鬼である本体DIOは、その体内に他者から奪った膨大な生命エネルギーを蓄えており、拳が砕けようと腹に大穴が空こうと短時間で負傷を再生でき、脳を大きく損傷しない限り死ぬことはない。この性質はザ・ワールドの側でも同じである。ただしそれと引き換えにDIOもザ・ワールドも「太陽光」および太陽光と同じ波長を持つ「波紋エネルギー」を弱点とし、それらを受ければその体は蒸発するように消滅してしまう。

■なお、スタープラチナとザ・ワールドを比べる限り、本体が強靭な肉体を持つ吸血鬼であるという優位性は、人型スタンドの性能には特に寄与していない。これはおそらく人型スタンドに込められる生命エネルギーの許容量に限界があるためである。ただ代わりにザ・ワールドの射程距離は、通常の人型スタンドの2mを大きく上回る10mにも及んでいる。


■そしてさらにザ・ワールドはこの「究極の人型スタンド」によって、普通のスタンドの次元を超えたとある「自由」を能力として獲得している。それは「ゼロの時間内で動く能力」、「全てが静止した世界で自分だけが活動できる能力」である。これは作中では(厳密には語弊があるのだが)「時間を止める能力」と言われている。

■DIOが初めてザ・ワールドの特殊能力を体験したのは、ジョジョ3部の最終決戦の半年ほど前であり、それは「周囲の世界が止まって見える」という認識から始まった。そしてDIOは魔女エンヤ婆の助言のもとに、この「静止した世界で思考できる」状態から、「そこでスタンドを動かし物体に作用できる」状態を経て、「本体も同様に活動できる」状態へと能力を開花させていく。

■ザ・ワールドの能力の持続時間、つまり「時が止まった世界」でのDIOの体感時間は、ジョナサンの肉体がDIOの頭部に「馴染む」につれて伸びていき、3部の最終決戦でジョースター一行と戦った時点では「5秒」である。さらにその戦いの終盤には、ジョセフ・ジョースターの生き血を吸ってさらに一段肉体が馴染んだ結果、「9秒以上」にまで伸びている。(ちなみにDIOは作中で「いずれは1分…10分…1時間と動けるようになってみせる」と言っていたが、この確信に満ちた願望がどこまで実現可能なのかは不明である) 

■なおこの能力は前述したとおり、「ゼロの時間内で動く能力」であり、全世界あるいは全宇宙の時間を力任せに止めているわけではない。(いかにDIOが人間を超えていようと一個の生物にそれほどのパワーはない) またこの能力は当然のことだが間髪入れず連続使用することはできず、時が動き出してから再度使用するには、最低でも数拍の間を置かねばならない。


■ザ・ワールドの能力で作られる「静止した時の世界」では、ザ・ワールドとDIOのような「動ける者」以外のすべての物体は時が止まった状態となり、物理的な分子運動から精神的な思考活動まで全てが凍りついている。ただしこのままでは動ける者から見て静止した世界は絶対零度に固まってしまうはずだが、実際はそうはならない。

■この能力の発動中は、動ける者の周囲の「空気」や、動ける者が「干渉しようとする物体」だけは、分子的な挙動をある程度取り戻す。これはザ・ワールドの能力が現実世界と「歯車を噛み合わせる」過程で、「静止した世界」に自然に生じた法則である。この法則によって動ける者は、静止した世界で他の物体への作用を通常空間とだいたい同じに行える。またこれ以外にも、静止した世界には通常空間とは異なる法則がいくつか働いている。

■まず、静止した世界では時間的な「因果」も停止しているため、動ける者の動作に伴って間接的に起こった現象は、時が動き出すまでは「結果」が保留される。例えば動ける者が止まった時の中でマッチを擦っても時が動き出すまでは「火が点く」ことは無く、紙を水に浸しても時が動き出すまでは「水が染み込む」ことも無い。また、動ける者が例えばナイフを「手にしたまま」物を刺すことは普通にできるが、ナイフを投げて「手から離れる」と、それは標的に近づくほどに「因果の抵抗力」のような力を受けていったん止まってしまい、時が動き出すと同時にスピードを取り戻して、標的に刺さることになる。

■次に、静止した世界での「重力」は動ける者に対しては、「高さ」が変わらない限りは作用しない。このため例えばジャンプした状態で時を止めれば、動ける者は(時が止まっている物体と同様)空中に停止する。一方で動ける者またはその手で動かされた物体が「下」に移動してそれに働く重力が増せば、それには差分の重力が働いて落下し始めることになる。(ただしその速度は通常空間ほどではない) 

■この法則により、静止した世界で地面を蹴って「走る」には少しコツが要り、そしてコツを掴んでも通常空間で全力疾走するほどの速さでは走れない。その速さは作中の描写から見て、1秒間におよそ3〜4mといったところである。また磁石などの磁場にも重力場と同じ法則が働き、静止した世界で2つの磁石を近づければ、後は磁石同士が勝手に引き寄せあってくっつくことになる。

■なお、作中でのDIOと承太郎のように「動ける者」が2人以上いる場合、片方が能力を発動すれば、もう片方は「静止した世界」で最低でも、その光景を知覚し、思考を巡らすことができる。そしてその状態から「動く」ことも当然可能である。ただし相手の能力が解ける前に自分の動作時間に限界が来れば、そこで動きは止まり、知覚と思考ができるだけの状態に戻ってしまう。

「神」の名を持つ男

ザ・ワールドの本体であるDIOは、ジョジョの物語において1部の時代からジョースターの血統と戦い続ける宿敵である。その性格は常に合理的・効率的で自分に有利な結果だけを求め、そのためには人の世の法や情や倫理を一顧だにしない。(反面この合理性ゆえに彼は、たまに感情が昂ぶった時にはそれを上手く制御できないようである) 

このようなDIOの精神は言うまでもなく「人の正義」からは外れている。しかし一方でその合理的・効率的・大局的な思考は「神の正義」、即ち世界の細々とした物事より大局を優先して世界の成長を目指す在り方とは親和性が高い。「DIO」という単語はイタリア語で「神」を意味する。そしてその名を与えられた彼はまるで運命のように、「地上の神」とでも呼ぶべき生き様を見せることになる。

人として始まった彼の成長は、「地上の神」ヘ向かって「変容」を重ねていく。彼は成人するまでを狡猾な知略家として生きてきた。しかし彼はその生き方に限界を感じ、その折に「石仮面」の力と出会い、迷いなく人間をやめて吸血鬼となり、人間の宿命である「弱い肉体の器」と「限られた寿命」から解放される。

そしてその後も彼の心は変容を続ける。彼が人間だった時に持っていた、死別した母への思慕の情は、我が子を救うために懇願する母親を見る時には失われていた。彼がジョナサンの肉体を奪う時にジョナサンに抱いていた尊敬の念は、100年の時を経て海底から蘇った時には失われていた。彼にとってそれらは一時期に自分を動かす原動力とはなっても、後生大事に抱えておくほどの価値はないものである。

また彼は海底での100年の眠りのさなか、1つの悟りを得る。それは、自分がこの地上で永遠に生きるために最も必要なことは、「神に愛される」ことだという思想である。もしこの世界に神が存在し、運命を操作しているとするなら、神に重用されるだけの力と思想を持って歩むことが、神の庇護を得て自分を真に不滅たらしめると彼は考えた。そして彼はもとより神に似た大局的な考え方を持っており、そのように生きることが自分の運命であると確信する。

そしてそれを証明するかのようにDIOは、ジョジョの物語の中で幾度も蘇る。ジョジョ1部でジョナサン・ジョースターとともに散ったはずの彼は、その実この危機から逃れており、3部ではより強大な存在となって君臨する。3部で空条承太郎に完全敗北・消滅させられたはずの彼は、その実いくつかの遺物を残しており、それら遺物は6部で彼の意思のもとに世界を生まれ変わらせようとする。さらにそれが失敗した一巡後の世界でも彼は、同じ精神性を持った別人Dioとして存在し、再び覇道をやり直す。

また、彼の優れた知力とパワー、そして不要と見れば何者であろうと切り捨てる残酷さは、人の心のある側面に強く訴えかけ、一部の人々を強く魅了する。それらの人々にとってDIOは世界を真に正しく導く者であり、自分の命さえ喜んで捧げるに値する存在である。

「人の世の正義」は時代とともに移り変わり、それに呼応して正義を歩むジョジョの主人公も世代交代する。一方でDIOが宿す「神の正義」は時代がどれだけ変わろうと揺るがない。そして世界が、神が自らの代行者を再び地上に必要とする時、「DIO」はまた蘇ることになるだろう。

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