サバイバー SURVIVOR

2022/04/05改訂

本体名:グッチョ

懲罰房棟の囚人

能力:周囲の人間を怒らせ、全力で乱闘させる

スタンド形成法射程距離パワー
能力顕現体 100m以上最弱

当ページの要点

  • ジョジョ6部の主舞台であるグリーン・ドルフィン刑務所には特殊な力が宿っている。
  • それはこの土地の重力の弱さと罪人たちの魂のパワーによる「宇宙の縮図」としての力場である。
  • 人を苛つかせる才能に長けた本体グッチョはこの「宇宙の縮図」で、「ビッグバン」としてのスタンド能力を与えられる。
  • その能力は、周囲の人間の「怒り」を爆発させ、リミッターの外れた怪力で乱闘させることである。

「原始の宇宙」のエネルギー

宇宙の始まりに起きたとされるビッグバン時点の「原始の宇宙」は、我々が生きる「現在の宇宙」に比べて、非常に単純な状態であった。ビッグバンから138億年を経た現在の宇宙には、100を超える種類の原子が存在し、さらにそれら原子を材料にした無数の種類の無機物や生命が存在する。しかし原始の宇宙には、水素とヘリウムしか存在しなかった。

また原始の宇宙は非常に高温で、膨大なエネルギーが沸騰し続ける混沌の状態でもあった。そしてその膨大なエネルギーは、「空間」が「不安定な状態」から「安定な状態」に変わる際に、空間そのものから生み出されたとされている。

空間を地面に例えるなら、安定した空間とは、地中の底の底までみっしりと土砂が詰まった地面である。対して不安定な空間とは、地中に空洞がある地面といえる。そしてこのように空洞がある地面は、崩れる時にエネルギーを生み出し、そして崩れた結果以前より安定する。

ビッグバンのエネルギーはこれと同じことが宇宙の空間において、何らかのきっかけで一気に起こったことで生み出されたわけである。

スタンド解説

サバイバーは、ジョジョの奇妙な冒険第6部「ストーンオーシャン」の登場人物、グッチョのスタンドである。このスタンドは「ホワイトスネイクのDISC」で与えられたものであり、グリーン・ドルフィン島内で効力が増大する。

グッチョ

グリーン・ドルフィン・ストリート刑務所は、外界から隔離された環境のなか、強い魂のパワーを持つ罪人たちが集う場所であり、また地球上で最も引力が弱く宇宙に近いケープ・カナベラルの一帯に位置する場所でもある。このためこの島は、神秘と力を宿し「宇宙の縮図」としての力場を発生させている(ちなみにこの刑務所は別名「水族館」とも呼ばれ、これは即ち「海の縮図」である)。

そしてこの刑務所の囚人にして、人を苛つかせる才能に長けた本体グッチョは、この「宇宙の縮図」の中において、宇宙の始まりに起こった大爆発であるビッグバンと相似して、「ビッグバンの縮図」としての力を与えられる。


「ビッグバンの縮図」であるサバイバーの最大の特徴は、「最も原始的なスタンドエネルギー」から作られたスタンドだという点にある。

いわゆる「スタンド」は、人間の高次な精神から生み出されたスタンドエネルギーで、人型スタンドなどの複雑な構造体を作り出し、その構造体でもって超常的な能力を行使する。しかしサバイバーはそれとは逆に、人間の最も低次な精神である「本能」から生み出されたスタンドエネルギーで形作られている。

サバイバーは、小さく弱々しいスタンド像が大量に集合した群体型のスタンドである。その1つ1つは円を描いた紐のような形状をしており、大きさはさまざまだが最大直径は10cm程度である。また紐は円の内側にも不規則な紋様を作り、そして直径が大きなものは、中央あたりに紐が塊になった不気味な顔が形成されている。

サバイバー

この弱々しいスタンド体は「本能を刺激」するためのものであり、人間の神経細胞内を流れる「電気信号」のエネルギーとして活動する。そのパワーは電圧にしてほんの0.07ボルトしかない。

最も低次なスタンドエネルギーから作られているがゆえに、サバイバーはあらゆるスタンドの中で「最も弱い」。しかしサバイバーは人間の「本能」という、あらゆる人間に共通し、また無意識に近い領域に作用する能力がゆえに、他者の脳内に作用することさえできれば、どんな人間にも問答無用で効果を発揮する。

その能力効果とは、他者の大脳辺縁系の「闘争本能」を刺激して「怒りを爆発」させることである。


人間の精神は普段は、「本能」という土台の上に「理性」を積み重ねることで、ちょっとしたことでは他者と諍いを起こさない状態を保っている。しかしそれは完全に安定した状態ではなく、何かのきっかけで理性が崩れれば、抑圧されていた本能が露わとなり感情が爆発する。サバイバーは闘争本能の刺激によってそれを行う。

これはビッグバンにおいて膨大なエネルギーが生み出された過程と相似している。ただしサバイバーで生まれるエネルギーは、あくまで心を加熱する心理的なものでしかなく、物理的・スタンド的なエネルギーを生み出すことはない。


サバイバーが他者に作用するにはまず、本体のグッチョが周囲の人間に怒りを覚える必要がある。それによってサバイバーは彼の脳内に発生し、神経細胞を伝わって全身に広がる。さらにサバイバーは足元から地面・床面へと流れ、この時に地面・床面が水浸しになっていれば、水の中を伝わり広範囲へと広がる。

濡れた地面を移動するサバイバー

こうして広範囲に広がったサバイバーは、地面・床面とその上下数mの空間内に、非常に微弱な「電場」を作り出す。そしてこの電場内にいる者たちの脳内をほんのわずかな力で刺激し、怒りを爆発させる。

またサバイバーは周囲が濡れていない状況でも、本体内のサバイバーを中心とする電場で数m以内の人間を怒らせることができる。後述する「サバイバーの本来の本体」である山小屋の主人の過去エピソードでは、「彼に近づいた者は皆ケンカを始めた」とあるが、それはこの発動方法によるものであろう。

山小屋の主人の過去エピソード

こうしてサバイバーの射程内で本能が解放された人間は、自分の肉体を煮えたぎらせる怒りのエネルギーと、他者を打ち負かしたい闘志に心を支配され、互いに周囲の人間に襲いかかり、乱闘を始める。

ただし他者に対する闘志や殺意がどこまで引き出されるかは個人差がある。また作中の空条徐倫を見る限り、スタンド使いは一般人よりもサバイバーへの耐性が高いらしく、怒りはするが十分冷静さを保てている。

またサバイバーの能力は人間の心を「操って」いるわけではなく、あくまで彼らの闘争本能を「解き放って」いるにすぎない。このため本体のグッチョは乱闘の中で自分だけを襲わせないようにすることはできず、周囲の人間に見つからないように必死で逃げ隠れするしかない。


サバイバーで怒りが爆発して戦い始めた者たちは、普段人間が自分の肉体を守るために無意識にかけているリミッターが完全に外れている。このため彼らは全身の筋力を限界まで酷使して、人間離れした怪力と動きを見せる。

限界を超えた筋力で壁を駆け上がる看守

また彼らの体内には闘争本能によって、痛覚の麻痺物質であるアドレナリンも大量に分泌されており、よほどのことがなければ痛みは感じない。このため彼らは、自分が繰り出す拳や蹴りのパワーで自分の肉が裂けようが骨が折れようが、また相手からの攻撃を食らって同じことが起ころうが、全く躊躇せずに戦い続ける。

さらにサバイバーの能力下にある者は、相手の肉体の「長所」、例えば最も強い筋肉の部位などが美しく輝いて見えるようになる(逆に深く傷ついた部分はドス黒く見える)。これは物理的な視覚で見える相手の姿に、体内の筋肉や骨の映像が重なって見える。

輝いて見える「長所」

この特殊な視覚はおそらく、「サバイバーの本能的なスタンドエネルギー」の影響である。通常の「高次なスタンドエネルギー」とサバイバーの「低次なスタンドエネルギー」は、可視光線と赤外線のように波長が異なる。そしてサバイバーはその能力下にある者だけに、「スタンドを見る視覚」とは異なる霊的視覚を与える。

この「霊的にして本能的な視覚」こそが、肉体内の長所を見る視覚である。これは野生動物が持つ、本能的な感覚で相手の強さを見抜く能力に、視覚要素を付与したものといえる。


ところでサバイバーのスタンドDISCは、1980年代にフランスのロレーヌ地方にいた山小屋の主人(氏名不詳)から、ホワイトスネイクの能力で抜き出されたものである。そして山小屋の主人とグッチョのスタンドは、スタンド像も能力も全く同じである。

ただしこの両者ではまず間違いなく、グリーン・ドルフィン島内でグッチョが発動させたサバイバーのほうが、能力の規模が大きい。これはサバイバーの「怒りを爆発させる」能力が、グリーン・ドルフィン島内の「宇宙の縮図」の力を借りて、「ビッグバンの縮図」として強化されているからである。

グッチョのサバイバーは懲罰房棟内の40名余りを怒らせ乱闘させたが、本来のサバイバーはもっと少ない人数が限界と考えられる。またグッチョのサバイバーでの「相手の長所が見える」性質も、本来のサバイバーには無い可能性がある。

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