スタンド能力に目覚める方法
ジョジョの奇妙な冒険第3部から登場する「スタンド」とは、物理法則を超えた現象を起こせるいわゆる「超能力」である。そしてこの超能力に目覚めた人間(や動物)は「スタンド使い」と呼ばれる。
ジョジョの世界では、もともと全ての生物には「生命エネルギー」という霊的なエネルギーが宿っている。しかしそれは物質世界とは別の「霊的世界」の領域にあり、そして物質世界と霊的世界の間には「障壁」がある。このため普通の生物は、自らの生命エネルギーで直接物質世界に作用することはできない。
この障壁を何らかの手段で破り、生命エネルギーを物質世界側に取り出し、生命エネルギーで直接物質世界に作用できるようになった者こそが「スタンド使い」である。ジョジョの世界ではスタンド使いになる方法は多数あるが、それらはいずれも「物質世界と霊的世界間の障壁を破った」結果である。
では以下にその「方法」を挙げていく。
「職人」からの発現
ある特定の技術を追究し、物理的な超絶技巧を獲得した職人が、それを超えるさらなる技術としてスタンド能力を獲得したタイプ。職人は自らの心の中にある理想をそのまま物質世界に作り出そうと研鑽を重ねるが、それがノミで壁を穿つかのように「障壁」を少しずつ弱め、最後には突き破るのである。
このタイプのスタンド使いには、15世紀前後に妖刀「アヌビス神」をこしらえた刀鍛冶キャラバン・サライ、「パール・ジャム」の料理人トニオ・トラサルディー、「シンデレラ」のエステティシャン辻彩などがいる。
またジョジョ7部のジャイロ・ツェペリは「回転の技術」と呼ばれるスタンドとは異なる能力を操り、そしてそれをさらに昇華させた結果、「ボール・ブレイカー」というスタンドを発現させている。
「生まれつき」の発現
生まれ持った精神や肉体が常人に比べて特殊すぎるがゆえに、自然にスタンド能力を発現させたタイプ。彼らはその特殊さゆえに産まれた時点ですでに「障壁」が薄く、成長とともにそれを簡単に破ってしまうのである(ただし特殊な人間だからといって必ずしも障壁を破れるとは限らず、その場合はただの変人どまりにしかならない)。
なお人類の中に生まれつきのスタンド使いが生まれる確率は非常に低く、おそらく数1000万人に1人といったレベルである。
このタイプのスタンド使いには、精神面では「ハイエロファントグリーン」の花京院典明、「シルバーチャリオッツ」のJ・P・ポルナレフなどがいる。一方肉体面では「両手が右手」である「ジャスティス」のエンヤ婆およびその息子「ハングドマン」のJ・ガイルが、おそらくこのタイプでの発現である。
またジョジョ8部に登場する「岩人間」と呼ばれる生物は、95%がスタンド使いであるとされるが、それも彼らが生まれ持った肉体と精神の特殊さが理由であろう。
「遺伝」による発現
ある者が何らかの理由でスタンド使いになった後、その者を父母として産まれた子供やさらに子孫が、スタンド能力に目覚めるタイプ。つまり「障壁を破った」先祖の霊的形質が子孫に遺伝したわけである。
このタイプのスタンド使いには、空条承太郎の娘である空条徐倫、ジョニィ・ジョースターの孫であるジョセフ(仗世文)・ジョースターなどがいる。
ただし遺伝によって子孫の「障壁」が完全に破られているとは限らず、障壁が薄くなっているに留まる場合もある。例えば上記の空条徐倫は、素質はあったが遺伝だけではスタンド能力の獲得までには至らず、後述する「矢」の力によって初めてスタンド使いになっている。
「魂の信号」による発現
ある者が何らかの理由でスタンド使いになった後、その者と「血縁関係」がある親・子・兄弟姉妹がスタンド能力に目覚めたタイプ。この場合、元となるスタンド使いが得た「スタンドの感覚」が、「魂の信号」として血縁者に伝わり、その者の内側からスタンドの覚醒を促し、「障壁」を破ることになる。上述した「遺伝による発現」をさらに広範にした発現形態といえる。
このタイプのスタンド使いにはまず、ジョナサン・ジョースターの肉体を持つDIOからの「魂の信号」を受けてスタンドに目覚めたジョナサンの子孫たち、ジョセフ・ジョースター、空条ホリィ、空条承太郎がいる。
他にはエンリコ・プッチの双子の弟ウェザー・リポートや、ディアボロの娘トリッシュ・ウナも基本的にはこのタイプである。ただ彼・彼女らには、ここでは詳しく解説しないが他の要因も絡んでいてかなり変則的である。
「矢」による発現
ジョジョ4部になって存在が明かされた特殊な道具である「矢」は、生物からスタンド能力を引き出すことができる。そして4部と5部のスタンド使いの多くはこれを使って生まれている(また3部のスタンド使いも割合は不明だが「矢」で生まれたらしい)。
「矢」の原理は極めて単純かつ乱暴である。その矢じりは生物に刺さることで、物質世界からその生物の生命エネルギーの領域へと、障壁を破って「穴」を開ける。この結果その生物は強制的にスタンド能力を引き出されるのである。
そしてこの乱暴な原理ゆえに、矢の使用は極めて危険である。スタンドの才能を秘めていない者が矢に射抜かれれば、形を成せない生命エネルギーが「穴」からだだ漏れに流出し、そのまま死んでしまうからである。
なお矢は5部になってから、矢の素材となった隕石に閉じ込められたウイルスとの関連が示され、さらにスタンド能力を超えた「レクイエム」と呼ばれる力の発現にも使用されている。これらについては別頁で語ることにする。
「ホワイトスネイクのDISC」による獲得
ジョジョ6部に登場するスタンド「ホワイトスネイク」は、スタンド使いの体からスタンド能力を「DISC」の形にして抜き取る能力を持つ。そして逆にDISCをスタンド使いでない者に差し込めば、その者はスタンド能力を得る。
ただし作中でホワイトスネイクの本体プッチ神父が言っていたとおり、DISCのスタンド能力は本来の持ち主こそが100%の力で扱えるものであり、他者に差し込んでも普通能力は弱くなる。ところが6部作中のDISCのスタンド使いは、他の部のスタンド使いと比べても遜色のない、むしろ勝るくらいの強力な能力を持っている。
この理由は彼らDISCのスタンド使いが戦う6部の主舞台、「グリーン・ドルフィン島」という土地の特殊性にある。高セキュリティの刑務所として使用されるこの島は、何10年も大罪人を収容し続けてきた。またこの島は地球上で最も重力が弱いとされるケープ・カナベラルの一帯に位置している。
それらはこの島に強い霊的なパワーを与え、結果としてこの島は「宇宙の縮図」としての力場を発生させている。そしてこの力場の中では、「DISCに封じられた能力」と「それを差し込まれた者の精神的資質」との相性で、発揮される能力が強化または変化することがある。
プッチ神父は直感なのか経験なのか、どのDISCをどの者に与えれば、グリーン・ドルフィンの力場の中で「宇宙の縮図」の力場に適合した能力が生まれるのか把握している。そしてこの結果生まれたスタンド使いは「宇宙的な能力」、例えば無重力と真空の空間を作ったり、大気圏の上層から隕石を呼び寄せたりする能力を獲得する。
「悪魔の手のひら」による発現
悪魔の手のひらはジョジョ7部の世界の、北アメリカ大陸アリゾナ砂漠に存在する特殊な場所である。それは直径数100mの透明な球体を大地に置いたかのような空間領域で、広大な砂漠を1日に何kmも移動する。またその内部では時々刻々と地形が変化し、地面が動き、山が消え、谷が現れる。そしてその外縁部では大地が球面に沿ってせり上がって5つの峰を作り、それが5本の指に見えることから「手のひら」と呼ばれる。
そしてこの土地は迷い込んだ者の一部にスタンド能力を与える力を持つ。7部に登場するスタンド使いのほとんどは、この土地でスタンドに目覚めたタイプである。
悪魔の手のひらには「数万年前に隕石の落下で全てが破壊された」という伝承が残っている。またそれとは別に7部の世界には、物語が紡がれる「基本の世界」の他に、それを取り巻く無数の「並行世界」が存在する。
全てが破壊され、固有の地形や特性を持たない悪魔の手のひらは、それゆえに並行世界との境界が薄く、並行世界群からの作用を強く受ける(上述したこの土地内部の地形の変化は、砂鉄が磁力で動かされるように、並行世界の地形に感応して起こっていると考えられる)。
そして悪魔の手のひらに入り込んだ者の一部は、内なる生命エネルギーが並行世界のいずれかと引き合い、その結果「障壁」を破って生命エネルギーを引き出され、スタンド能力を得る。そしてその能力は、「並行世界の力」を何らかの形で利用したものとなる。
「聖なる遺体」による獲得
聖なる遺体は悪魔の手のひらと同じく、ジョジョ7部の世界に存在する。それは「心臓」「左腕」など9つの部位に分かれて北アメリカ大陸に散らばっている。そしてこの遺体部位が人の体内に入ると、その者は遺体のパワーによってスタンド能力を得る。
聖なる遺体によって発現するスタンド能力は、「その者の個性」と「遺体の性質」とが協調して生まれる。このためこのタイプのスタンド使いは遺体を抜き取られるとスタンド能力を失ってしまう。ただしスタンドを自らの能力として完全に定着させた後でなら失われることはない。
なお遺体の左腕は上述したアリゾナ砂漠の「悪魔の手のひら」の中にあったが、それ以外の幾つかの遺体部位もまた別の場所で悪魔の手のひらと共に登場する。隕石の落下と関係のないこれらの手のひらは、おそらく聖なる遺体自身が作り出したものである。ここでは詳しく解説しないが、聖なる遺体は誰かに完全に獲得されるまでは並行世界の領域にあり、その力場は悪魔の手のひらを作ることがあるのである。
「歯型」による発現
ジョジョ8部の舞台である杜王町の、東方家が所有する土地の一角には、人の体にいつの間にか「人が噛んだような歯型」を付ける何かが存在する。そして広瀬康穂と東方常秀は、この歯型によってスタンド能力に目覚めている。
おそらくこの「歯型」は生物によるものではなく、ジョジョ7部の「悪魔の手のひら」と同じく、人にスタンド能力を目覚めさせる「球体の力場」によるものである。ただし「悪魔の手のひら」が直径数100m以上あるのに対して、東方の土地のそれは直径5〜6cmしかない。
以上を踏まえて、東方の土地の「小さな球体の力場」は、土地に入った「スタンドの素質を持つ者」に対して、地中から浮き上がってその肉体に重なり、食らい付く。その結果、重なった場所には歯型のような傷痕ができ、その人間はスタンド能力に目覚めるわけである(球体の力場がなぜ手のひらや歯型など人間の身体部位を模すのかは不明)。
なおこの「球体の力場」が発生する場所の近くで暮らしている東方の家族は、常秀以外も全員スタンド使いである。彼・彼女らについては、常秀よりも昔に歯型を付けられたか、あるいは球体の力場の発生源である「土地」自体から、球体の力場より弱い作用を長期間受け続けた結果、スタンド能力に目覚めたと考えられる。