「無敵の遠隔自動操縦」という分類

当ページの要点

  • スタンドの操作を本体から切り離す「遠隔自動操縦」型のスタンドは、作中で「無敵」と語られている。
  • ただしこのタイプは「スタンドの操作を本体から切り離している」から「無敵」なわけではない。
  • 本体が自分のスタンドを遠隔自動操縦で使うには、そのスタンドが遠くでどんな攻撃を受けても自分は無事だという「安心感」が必要である。
  • この安心感を与えるのがスタンドの「無敵性」であり、そのようなスタンドでなければ恐怖が勝って自動操縦にはできない。

ジョジョの奇妙な冒険第3部から登場する超能力「スタンド」には、「本体からの距離」と「パワー」が反比例するという基本原則がある。このため通常のスタンドは、「近距離で活動する高パワーのタイプ」と、「遠距離で活動する低パワーのタイプ」に分けられる。

ただしこの原則は、さまざまな方法で回避可能である。その1つに、「スタンドの操作を本体から切り離して自動操縦にする」という手法がある。この手法を使えば、スタンドはパワーを維持したまま射程を大幅に伸ばせる。

そしてこの手法を使い、「高パワー長射程で敵を自動的に追跡・攻撃する」のが「遠隔自動操縦型」と呼ばれるスタンドである(ただその呼び名は作中ではあまり一定しておらず、その時々で「自動追跡タイプ」「自動追跡遠隔パワー型」などとも呼ばれる)。


作中で遠隔自動操縦のスタンドとして初めて登場したのは、ジョジョ4部の「シアーハートアタック」である。そしてその後もこのタイプのスタンドは、「ハイウェイ・スター」「ブラック・サバス」「ベイビィ・フェイス(子)」「ヨーヨーマッ」「ドゥービー・ワゥ」など、各部にたびたび登場する。

そして遠隔自動操縦のスタンドは、広瀬康一やジョルノ・ジョバァーナのセリフで、「無敵」「本体にダメージを返さない」タイプとして語られている。実際上に挙げたスタンドはそのどれもが、何らかの「無敵に近い」性質を備えており、また本体へのダメージも(少なくとも物理的なものは)返していない。

しかし別にこのタイプのスタンドは、「遠隔自動操縦だから無敵」というわけではない。このタイプのスタンドは例えば、内部に共通の構造があってそれが理由で無敵になるわけでも、ましてや遠隔自動操縦に分類されることで魔法のように無敵属性が付くわけでもない。

ではなぜ遠隔自動操縦のスタンドが無敵に近くなるのかというと、それは例えば熱に強い生物でなければ砂漠に生息できないのと同じく、無敵性がなければ自動操縦になるのが非常に難しいからである。以下でこの理由について詳しく説明していく。


遠隔自動操縦のスタンドにまず必要な要素は、「形状保持の性質」である。普通スタンド体は本体から遠く離れるほどに形状の保持が難しくなる。しかし自動操縦のスタンドは、本体から長時間離れても安定した姿で存在できなければ使い物にならない。このため自動操縦のスタンドは例外なく形状保持の性質、例えば硬い殻・再生能力・物質との融合などの性質を備え、この問題をクリアしている。

そしてこの問題をクリアしてもまだ重大な問題が残っている。それは「本体の心理的な不安」である。スタンドの操作を切り離し、それを自分の目の届かない所で活動させるのは、本体にとってかなり安心できない状態である。

「自動操縦の動き」はほとんどの場合、「本体自身の操作」に比べて酷く単純である。それはつまり、例えば自分の自動操縦のスタンドが敵スタンド使いと戦った時に、敵に動作パターンを見抜かれれば反撃され放題になるということである。これは特に、「本体にダメージを返すスタンド」では本体の命取りになる。

そしてこの不安が払拭できなければ本体の心理的なロックがかかり、スタンドを自動操縦にはできない。

そこで重要になるのがスタンドの「無敵性」である。上述した形状保持の性質、あるいはそれとは別の性質、あるいはそれらの複合など、どんな理由ででもスタンドに無敵性が備わっていれば、そのスタンドは敵からの反撃をものともせずに、執拗に攻撃し続けることが可能となる。そしてさらにこの状況では、「本体という弱点」は近くにいないほうが逆に都合がいい。

つまり「無敵」という性質が、自動操縦に関わる本体の心理を一転させ、スタンドを安心して遠くに放つ動機になる。以上の理由によって遠隔自動操縦のスタンドは、それぞれが手段は違えど「無敵性」を持つものばかりになる。


そして自動操縦のスタンドを持たない他のスタンド使いも、それと一度戦えば上記の理屈を感覚的に理解し、広瀬康一やジョルノのように再びそれと対峙した時には、それを無敵に近くかつ本体に影響のない敵として戦うわけである。

例えば広瀬康一がブラック・サバスを「本体に影響のないスタンド」と言い切ったのは、もしブラック・サバスが日光で本体にダメージを返すスタンドであれば、本体にとって危険すぎて自動操縦にできるわけがないと理解していたからである。

なお余談だが、本体から見えないところで単純な動作を行う遠隔自動操縦型スタンドは、本体が気付かぬうちに「無関係な者」を巻き込んでしまう可能性が高い。これもまた心理的なロックをかけるものであり、つまり遠隔自動操縦型スタンドの本体は、自分のスタンドが無関係な者に危害を加えても構わないと考えている。ジョルノがブラック・サバスの本体ポルポを唾棄すべき邪悪と断じて始末したのは、その能力が弱者を容易に巻き込み殺してしまうものだったからである。