看守ソニー・リキールの(髪型の)秘密
当ページの要点
- ジョジョ6部の看守ソニー・リキールは、ジョルノ・ジョバァーナの前髪を大量に付けた髪型をしている。
- ソニー・リキールはスタンド使いウエストウッドの相方として登場した。
- ウエストウッドは「岩の塊としての地球」を暗示するスタンド能力を持つ。
- ジョルノの前髪は「創造」の寓意を持ち、そこから転じてソニー・リキールの髪型は、「地球上で生命が行う無数の創造」の寓意を持つ。
- つまりウエストウッドとソニー・リキールは2人合わせて「地球全体」の寓意となる。
ソニー・リキールは、ジョジョの奇妙な冒険第6部「ストーンオーシャン」の主舞台であるグリーン・ドルフィン・ストリート刑務所に勤める看守である。
彼は本来であれば解説するまでもないただのモブキャラである。彼は登場してすぐスタンド「サバイバー」の能力を受け、同僚の看守ヴィヴァーノ・ウエストウッドと全力で格闘し、敗北・再起不能になって出番を終える(そもそも彼は登場中は名前すらなく、のちの「懲罰房棟における報告書」でたまたま名前が明かされたに過ぎない)。
しかしそんな彼には、読者視点から見たときに、極めて目立つ特徴が1つある。それは彼の「髪型」が、ジョジョ5部の主人公ジョルノ・ジョバァーナによく似ていることである。
具体的には、ジョルノの髪型の前髪部分には、カールした髪が輪を描いて(菓子パンのコロネのようになった)円形の髪の塊が3つある。そしてソニー・リキールはこの「円形の髪の塊」が、前髪だけでなく頭髪全体に大量に付いている。
そしてこのジョルノの前髪には、宗教画で書物が「学問」を暗示したりドクロが「死」を暗示したりするような、寓意的な意味がある。そしてソニー・リキールの髪型には、ジョルノの前髪の寓意をもとにした寓意がある。
ただこの「ソニー・リキールの髪型の寓意」について語るには、その前にまず、彼の相方である看守ウエストウッドについて語る必要がある。
ウエストウッドはスタンド使いであり、「大気圏外からの隕石を自分に引き寄せる」能力「プラネット・ウェイブス」を持つ。そしてここでは詳しく解説しないが、この能力はウエストウッドの肉体が「地球」の暗示を持つことで実現されている。
ただしプラネット・ウェイブスが暗示する「地球」では、地球上の「生命」および生命が行う「創造的営み」は除外されている。つまりこのスタンドは地球という星の、「岩の塊」としての面だけに焦点を当てた能力である。
次いでジョルノの前髪に話を移す。これもここでは詳しく解説しないが、ジョルノの前髪に与えられた寓意は「創造」である。彼にこの寓意が与えられている理由は言うまでもなく、彼のスタンド「ゴールド・エクスペリエンス」が生命を創造する能力を持つからである。
そして上記2つを併せるとソニー・リキールの、ジョルノの前髪と同じものが大量に付いた、石鹸の表面を泡立てたような髪型は、「地球表面で無数の生命が行う創造的営み」を表すことになる。つまりウエストウッドとソニー・リキールは2人足し合わせることで「地球全体」の寓意になるのである。
またソニー・リキールに対してウエストウッドの髪型は、ほぼ坊主に近い五分刈りである。これはつまりは、地球上から生命を除外した禿げた大地のような状態を表している。
ただしソニー・リキールの髪型の寓意は、ジョジョの作品世界内では何も意味を持たない。つまりこの寓意によってソニー・リキールに何らかのパワーが与えられたりはしない。この寓意はあくまで、ジョジョを作品世界外から宗教画的に見て初めて意味を持つものである。さらにこの寓意はそのような性質にもかかわらず、読者に意図を気づかれることさえ求めていない。
ジョジョという作品は、作者の荒木飛呂彦氏が思いついたことを細部にまでぎっしり詰め込んで作られている。そしてそれらは読者に意図を気づかれることはなくとも、ジョジョの世界にさまざまな形で深みを与えているのである。