「時が止まった世界」に働く法則

当ページの要点

  • 仮に「時間の流れ」を伸びていく一本の直線で表すなら、「時が止まった世界」での時間経過はその線が90度曲がって伸びていくことで表される。
  • そしてこの「90度曲がった方向への移動」は、ちょっとした「並行世界への移動」でもある。
  • 時が止まった世界でDIOや承太郎が活動すると「空気」や「光」に不都合が生じるはずだが、その問題は「並行世界への移動」によって解消される。
  • これ以外にも時が止まった世界にはいろいろな法則が働く。

ジョジョの奇妙な冒険第3部「スターダストクルセイダース」に登場する2つのスタンド、DIOの「ザ・ワールド」と空条承太郎の「スタープラチナ」は、ともに「止まった時の中で動く」能力を持っている。

DIOとザ・ワールド
承太郎とスタープラチナ

その世界では彼ら以外の全ての物体は、物理的な分子運動から精神的な思考活動まで全てが「静止」している。そして彼らは静止したそれらに一方的に干渉・攻撃することが可能である。


しかしこの「時が止まった世界」での活動は、物理的に考えるとさまざまな不都合が生じることがわかる。

例えば3部97話「DIOを撃つ!?」には、蜘蛛の巣がかかった室内でDIOが時を止め、ホル・ホースの背後に回り込むシーンがある。そしてこのとき蜘蛛の巣は揺らぎすらしていない。これは時が止まった世界での移動を物理的に考えればおかしい。

微動だにしない蜘蛛の巣

時が止まった世界でのDIOは「止まった空気を押しのけながら進む」ことになり、DIOが通過した跡にはトンネルのように真空状態が残るはずである。そして時が動き出せば、その真空に向かって空気が流れ込んで突風が発生するはずである。そうなれば当然蜘蛛の巣は吹き飛ばされ、ホル・ホースが風に気づかないはずもない。

また時が止まった世界では「光」も止まっている。これを物理的に考えると、時が止まった世界ではDIOと承太郎の「視覚」はまともに機能しない。

視覚とは知ってのとおり、網膜に入ってきた光を解析することで周囲の光景を得る。そして時が止まった世界での光の状態を単純にモデル化すると、空間内のそれぞれの点に「時が止まった時点での光景の情報」があることになる。

これを踏まえると、例えば時が止まった世界でDIOが自分の腕を前方に突き出した場合、DIOには突き出したはずの自分の腕が見えない。なぜならDIOの目のところにある光は「時が止まった時点での情報」でしかないからである。これはDIOと向かい合っている承太郎が動いた場合にも同様で、DIOと承太郎は互いに相手の動きが見えないことになる。

このように物理的に考えれば、時が止まった世界での活動にはいろいろな問題が生じる。しかし実際の作中ではそうはなっていない。そしてこれは矛盾ではなく理由がある。ただその理由を理解するにはまず、「止まった時の中で動く」能力がどのような理屈のもとに成立しているのかを知る必要がある。


「時が止まったはずの世界で自分だけが動ける能力」をモデル化して説明するのは、実は割と簡単である。まず縦軸をY座標、横軸をX座標にしたXY座標を考える。そしてこの座標の中に世界を表す点を取り、この点が下方から真上へと伸びていく直線を時間の流れとする。つまりYの増加が時間の変化となる。

そしてこのモデル上では、「時が止まった世界で経過する時間」は、真上に伸びる直線が90度曲がってX軸方向に伸びるものだと説明できる。XY座標ではこの間、Xの数値は増えているが、Yの数値は一切増えない。つまり物理的な世界の時間は止まっている。そしてDIOと承太郎だけがこの「X軸の時間の中で動ける」というわけである。

ここで少し話を変える。SF小説などでよく用いられる概念の1つに「並行世界」というものがある。並行世界とは我々の世界に対して、同じ時間だが全く別の状態の世界を指し、例えば第二次世界大戦が起こらずに歴史が進んだ世界などが挙げられる。

この並行世界の概念は一般に、枝分かれしながら上へと伸びていく樹の形状で表される。

そして並行世界の概念は、元の世界とほとんど変わらない、非常に近い世界に対しても使える。例えばある人間がぶらぶら散歩していて三叉路に突き当たり、なんとなく左に曲がって進んだとする。そしてこの「左に曲がった世界」に対して、逆に右に曲がって進んでいた場合の世界は、その人間の位置が違うだけの「非常に近い並行世界」となる。

そしてザ・ワールドやスタープラチナの能力、通常のY軸の時間に対してX軸方向に世界を進ませる能力は、上述した枝分かれした並行世界の中で、「非常に近い隣の枝へと移動していく」能力と言い換えることができる。つまり彼らが上記の三叉路で時を止めて左側から右側に移動すれば、それは並行世界への移動と同じ意味を持つのである。

以上を踏まえ、前述した「時が止まった世界での空気や光の問題」がなぜ起こらないかといえば、それはそこでの空気や光が「並行世界への移動」に従って変化するからである。

以下にそれら空気・光を始め、磁力・重力・その他についても、「時が止まった世界」でどのように働くかを解説していく。

空気

上記のとおり時が止まった世界での時間経過は「並行世界への移動」でもある。この結果何が起こるかというと、DIOや承太郎が動くと空気の状態が、「時が止まる前から彼らがその位置に居た」かのように書き換わる。奇妙な現象ではあるが、それが時が止まった世界の法則である。

つまり止まった空気をトンネルのように掘り進むようなことも、その跡に真空が残るようなことも起こらない。前述した蜘蛛の巣がかかった部屋でDIOが時を止めて移動したとき、蜘蛛の巣が揺らぎすらしなかったのはこのためである。

光も空気と同じく「並行世界への移動」に従って変化する。つまり、時が止まった世界でDIOや承太郎が動いたり、彼らが他の物体を動かしたりすると、「時が止まる前からそれらがその位置にあった」かのように周囲の光の情報が書き換わる。

例えばDIOと向かい合っている承太郎が動くと、DIOの目のところにある光の情報もその動きに合わせて書き換わるのである。このため光は止まったままであるにもかかわらず、DIOと承太郎の視覚は全く問題なく機能する。

化学変化など

前述したとおり時が止まった世界では物理的な分子運動は完全に停止している。このためDIOや承太郎が何らかの化学変化などが起こることを行っても、それは時が動き出すまでは開始しない。

例えば彼らがマッチを擦っても時が動き出すまでは「火が点く」ことはなく、紙を水に浸しても時が動き出すまでは「水が染み込む」こともない。

磁力

3部144話「DIOの世界 その11」でDIOが実演したとおり、磁力は時が止まった世界でも働く。ただこれは実際には、DIOや承太郎が磁石を動かしたときのみ磁力が働くというのが正しい。

時が止まった世界で動く磁石

仮に水面に浮かべた2つの磁石が引き寄せ合いながら近づいている途中で時が止められた場合、時が止まった世界では磁石が近づくのも当然止まる。ただしそこでDIOや承太郎が磁石の片方を動かして2つを近づけると、彼らが動かす力とは別に磁石は引き寄せ合って勝手に動く。

この理由は磁石が周囲に「磁場」を展開しており、そして時が止まった世界で磁石が動かされれば磁場も一緒に動くからである(これもまた「並行世界への移動」による変化であり、「時が止まる前から磁石がその位置にあった」かのように磁場の位置も書き換わる)。

ここで仮に2つの磁石の同極が向かい合っていて反発し合う場合、もう片方の磁石は磁場によって押されるように動く。これは時が止まった世界で、DIOや承太郎が棒を使って離れた物体を押せば動くのと同じく当たり前のことである。そしてこの逆に2つの磁石が異極であれば、押される逆に引っ張られるように動くのが当たり前というわけである。

重力

時が止まった世界では重力の働きも止まっており、空中の物体は(時が動き出すまでは)静止したままである。これはDIOと承太郎が空中にいる場合でも同じである。ただし上記の磁力と同じく、彼らが(下方に)移動して重力が強くなれば、彼らは増えた重力のぶんだけ反応して落ちることになる。

しかし磁石の磁力が数cm近づけるだけで大きく増加するのに対して、地球の重力は地上とエベレストの頂上でも0.3%弱しか変わらない。このため時が止まった世界で、DIOや承太郎その他の物体が何mか移動した程度では、重力の変動による影響はほぼ皆無である。

DIOと承太郎の移動

吸血鬼であるディオはジョジョ1部でスピードワゴンに「豹ぐらいの速さ」と評されており、通常の時間であれば5秒で50mは余裕で走れるはずである(ちなみに人間の50m走の世界記録は5.5秒台)。

しかし時が止まった世界でのDIOは、同じように速く走ることはできない。例えば3部142話「DIOの世界 その9」で、戦闘中のジョセフとDIOに承太郎が合流したとき、まだ遠くにいる承太郎をDIOが「(時止め中に攻撃できる)射程距離外」と判断するシーンがある。このときの3人の位置関係は目測で、ジョセフの前方にいる承太郎まで15m以内、ジョセフの後方にいるDIOまで15m以内といったところである。これはDIOが5秒の時止め中に普段どおりに走れるなら、承太郎まで余裕で届く距離だが、実際には不可能と判断されている。

ジョセフから承太郎までの距離
ジョセフからDIOまでの距離

そしてこのシーンも含めて、時が止まった世界でのDIOの1秒あたりの移動距離は、およそ3〜4mほどと推定される。これは承太郎のほうでも同じである。

このように彼らの移動速度が制限される理由はおそらく、時が止まった世界での時間経過が、「並行世界への移動」でもあるからである。前述したとおり並行世界は、元の世界との差異が大きいほどX軸方向への距離が遠く、逆に差異が小さいほど距離が近くなる。そしてX軸方向への「1秒分の長さ」は、「DIOや承太郎が3〜4m移動した分の差異」しか許容しない。

このため、時が止まった世界でDIOや承太郎が普段のように速く走ろうとしても、不可思議な抵抗力を受けてそれ以上進めないという現象が起こる。そして上記のシーンでのDIOはそれを自覚した上で、時が止まっている間に自分が移動できる射程距離を計算したわけである。

DIOや承太郎が投げた物体の移動

作中の描写を見てのとおり、時が止まった世界でDIOや承太郎が何かを狙ってナイフなどを投げた場合、それは標的に刺さる前にいったん停止し、時が動き出すと同時にスピードを取り戻して標的に刺さることになる。これには2つの理由がある。

まず1つには、時が止まった世界ではDIOと承太郎(および彼らが直接触れて動かしている物体)にしか、「動ける資格」がないからである。このため彼らが「投げて手から離した物体」は止まってしまう。しかし手から離した瞬間に止まるわけではなく、(投げた勢いや物体の重さにもよるが)数mは進むことになる。

数m進んで停止するナイフ

もう1つは、時が止まった世界ではDIOと承太郎(および彼らが直接触れて動かしている物体)にしか「他の物体に作用する資格」がないからである。このため例えばナイフが上記の「数m進む」途中で何かに刺さりそうになると、それは刺さる直前で停止することになる。

刺さる直前で停止するナイフ

このように、時が止まった世界での物質は、主に「並行世界への移動」の理屈に従って書き換わる。そして時の停止が終われば、書き換わった状態から動き出す。しかし「生物の記憶」だけは、作中の人間のリアクションを見ればわかるとおり、「並行世界への移動」を経ても書き換わることはなく、元の世界の記憶がそのまま並行世界に引き継がれている。

これにはまた別の複雑な理屈が絡むため、いずれ別の記事で解説することにする。