天空の星、井の中を知らず。されど大海の広さを知る。
スタープラチナ
STAR PLATINUM:星の白金
Tarot-No.17
本体名:空条承太郎 <クウジョウ・ジョウタロウ>
プロフィールJC14巻P111、のちに海洋学者となる
能力:無能力にして最強の人型スタンド
スタンド形成法 | 射程距離 | パワー | 射程・パワー増加法 |
---|---|---|---|
身体同形体 | 2m | 高 | 単化(本文参照) |
当ページの要点
- ジョジョ3部に登場するスタンドは全て、「生命の樹」と呼ばれる図形に関係している。
- タロットのスタンドは生命の樹の図上で「変化」を表すパスに対応する。
- 「星」のパスは成長するものが、自身から不要な要素を取り除く「浄化」を行う。
- スタープラチナは余分な要素を持たないがゆえに限界に達した性能を持つ人型スタンドである。
タロット解説(読み飛ばし可)
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ジョジョ3部に登場する22枚の「タロットカード」は、占いの道具としてよく知られ、それぞれのカードにはさまざまな解釈が与えられている。そしてその解釈法の1つに、『生命の樹』と呼ばれる図像を絡めたものがある。生命の樹とは、宇宙・生命・人類・個人など、この世界の中で進化・成長する全てのものが、成長する際に辿る変化の共通性を図像化したものである。
「セフィロトの樹」とも呼ばれるその図は、「状態」を表す10個の円形「セフィラ」と、円形同士を結び「変化」を表す22本の小径「パス」から成り、タロットはパスの方に対応している(また3部後半に登場する「エジプト9栄神のカード」はセフィラに対応している)。
そして22枚のタロットのうち、「混乱せしもの」を暗示する「トト」のセフィラと、「総括せしもの」を暗示する「アトゥム」のセフィラを結ぶ「星」は、「構成要素の浄化」を暗示するカードである。
成長体が分野の中で成長するためには、数多の可能性を試行錯誤し、その結果の要不要を見極めていく過程が必ず必要となる。そしてその際、要不要を判別しきれない要素はそのまま成長体の中に残り、それらは仕事場に資料が溜まり積もっていくかのように、成長体の円滑な活動を妨げてしまう。それらの要素を大掃除のように大胆に捨て去り、成長体を「浄化」するパスが「星」である。これによって成長体は、雑多な要素の弊害から解放される。一方残された要素はその存在を際立たせられることになる。
ただし「浄化」後の成長体は、ジェンガの塔からブロックを抜き取った後のように不安定化する。そしてこれを安定化するための「融和」は、生命の樹の中心線を挟んで反対側に位置する「太陽」のパスで行われることになる。
「星」による浄化は、成長体を取り巻く外部の世界の中で、成長体を「新しく」保ち続けるためにも重要である。例えば世界の中でもはや「必要とされない要素」を、成長体が抱え続ける意味はない。世界の変化に合わせて不要なものを捨てていくことは、成長体が円滑に成長し続けるために必要なことである。
しかしこのような「外界に合わせた浄化」は、成長体自身にとって大事な「個性」や「核」といったものの除去を要求する場合がある。そしてもしそこで成長体が自らの個性や核を大事にするほうを選べば、世界が変化するほどにそれらは無駄な要素となって増えていき、そのぶん成長体の歩みは鈍っていくことになる。
これは1つの重要なことを示唆している。すなわち、もし人が肉体的な老いを克服できたとしても、人が「自分」であり続けたまま「永遠」に生きるのは不可能だということである。人は「死」を「自分の消滅」として恐れるが、自分の個性や核に執着して生き続ける者はいつか世界の変化に完全に置いて行かれて「生きている意味」を失う。一方自分への執着を持たず世界の変化とともに変わり続けるのであれば、それはもはや「自分」とはいえない。
世界の中で「自分」は、いつか終わりを迎える宿命から逃れることはできない。しかし代わりに、自分の生の意味を集約した何かを未来に残すことはできる。価値ある何かを生み出すこと、意味ある何かを伝えること、希望となる何かを守ることを力の限り行い、それらが世界の中で星の輝きのように受け継がれていくことを確信できたなら自分は、終わりを受け入れ満ち足りた想いの中で消えていける。そして自分が残した意志は、それを継ぐ者ひいては世界を、さらなる成長に導くだろう。
スタンド解説
スタープラチナは、ジョジョの奇妙な冒険第3部「スターダストクルセイダース」の主人公、空条承太郎のスタンドである。そしてこのスタンドは、ジョジョのストーリー展開上における「最初のスタンド」にして「最強のスタンド」である。
スタープラチナは承太郎と同じ身長・肩幅・顔を持つ完全な人間型のスタンドで、古代の戦士のような姿をしている。そのスマートながらもがっしりとした骨格を覆う筋肉は隆々として逞しく、頭髪は荒々しく逆立ち、両手を覆うグローブの甲には星のように鋲が散りばめられている。またその両肩の肩当てには螺旋の模様が描かれ、そして肩から胸を通って腰へと向かう体表には、螺旋階段を横から見たような波模様が描かれている。
スタープラチナは、以降に登場する数多の人型スタンドたちと違い、「能力」と呼べるものは一切持たず、「スタンドの肉体の動作によって行えること」しかできない。そしてこれには本体の空条承太郎の精神性が深く関係している。
空条承太郎は、ここでは詳しく解説しないが、「あらゆる物事を効率的かつ高度に解決できる」才能を持った人間である。この性質はスタープラチナにも大きな影響を与え、その人型のスタンド体は極限まで「効率化」「理想化」「純粋化」されている。そしてこのようなスタープラチナにとっては、例えば「炎を吐く」や「剣を作り出す」といった能力は、純粋化に相反するものである。ゆえにスタープラチナは一切の能力を持てない。
しかしこの純粋化は、能力を持てないというデメリット以上の恩恵をスタープラチナに与えている。スタープラチナは本体である承太郎の肉体を写し取って形成される時、その全身に散在する「不要な要素」を、塵のように微小なものに至るまで完全に除去される。そして塵が積もって山となったそれら不要な要素は、解体・エネルギー化されてスタンド体に還元される。この結果スタープラチナは、普通の人型スタンドを圧倒的に上回るパワーを得ることになる。
さらにこの「純粋化」は前述したとおり「効率化」と「理想化」でもある。これらによってスタープラチナは「パワー」だけでなく「スピード」と「精密動作性」においても圧倒的な性能、人型スタンドの限界に達した性能を持つことになる。
例えばスタープラチナの全身に満ち溢れるパワーは、突進してくるトラックを受け止めるほど強い。またスタープラチナが拳を繰り出すスピードは、不要な要素に一切妨げられないがゆえに閃光のごとく速く鋭い。またその指先は、これも不要な要素に一切妨げられないがゆえに、肉体の柔軟さと機械の精密さを併せ持った動作を可能とする。さらに不純物なく澄みきったスタープラチナの眼は、望遠鏡か顕微鏡のように風景や物体を精細に捉えられる。
そしてこれらパワー・スピード・精密動作性は戦闘でも存分に発揮されて敵を圧倒する。特に両拳による連打(通称「オラオラのラッシュ」)の威力は凄まじい。
ちなみにスタープラチナには3部序盤にのみ使っていた「スターフィンガー(流星指刺)」という技もある。この技は、スタンド体全身のパワーを左右どちらかの手の人差指と中指に集中して、この2本指に鋭いナイフのような切れ味を与えると同時に瞬間的に3倍強の長さに伸ばし、流星のように撃ち出す技である。
ただこの技はその性質上、2本指以外の全身を(本体も含めて)完全に「弛緩」させなければならない。このためこの技は承太郎が普通に立っているときに使うには適さず、作中で2回この技を使ったときのように水流や拘束で承太郎の体が支えられている状況で使うのに向いている。
そしてさらに承太郎は第3部の最終決戦、DIOのスタンド「ザ・ワールド」との戦いで、この「究極の人型スタンド」により可能となる、「通常動作の限界を超えることで得られる動作能力」を獲得する。それはDIOと同じ「ゼロの時間内で動く能力」、「全てが静止した世界で活動できる能力」である。これは作中では(厳密には語弊があるのだが)「時間を止める能力」と言われている。
ザ・ワールドの能力の正体を知らなかった時点での承太郎は、DIOが時を止めても花京院やジョセフ同様それを認識できなかった。しかしザ・ワールドが時を止める能力だと知った直後にDIOが時を止めた時点から、「時が止まった世界」を認識できるようになった。
時が止まった世界での承太郎は、最初はDIOの動きを見ることと、パンチ一発程度の一瞬しか動けなかった。しかしその後数分のDIOとの死闘の間に、DIOが時を止めている5秒のうち2〜3秒ほどまで動けるようになる。そしてさらに承太郎はこの戦いの最終局面で、自ら「時を止める」ことに成功する。
そして承太郎はジョジョ4部以降では、この時止め能力をを自らの能力として、常態的に使用することになる。承太郎はそれを「スタープラチナ・ザ・ワールド」と名付けて呼んでいる。
スタープラチナ・ザ・ワールドで作られる「時が止まった世界」では、スタープラチナと承太郎以外の全ての物体は、物理的な分子運動から精神的な思考活動まで全てが「静止」している。そしてスタープラチナと承太郎は静止したそれらに一方的に干渉・攻撃することが可能である。
なおこの能力は前述したとおり、「ゼロの時間内で動く能力」であり、全世界あるいは全宇宙の時間を力任せに止めているわけではない(DIOにしろ承太郎にしろ一個の生物にそんなパワーはない)。またこの能力は当然のことだが間髪入れずに連続使用することはできず、時が動き出してから再度使用するには、最低でも数拍の間を置かねばならない。
血統の完成者
「ジョースターの血統」は知ってのとおり、ジョジョの物語における主人公の血脈である。彼らは歴史の裏側で世界の危機に立ち向かい、その困難を時に努力で、時に知恵で、時に勇気で打破してきた。そしてこの「英雄」のような性質は、ジョースターの血筋の中でだんだんと「常態化」、つまり「そうであることが当たり前」となっていく。それはさながら競走馬としての能力を調整・最適化されていくサラブレッドのようでもある。
ジョジョ3部の主人公である空条承太郎は、生まれながらにして優れた肉体的資質と知力と強運を備えた、ジョースターの血統の完成形ともいえる人間である。彼は危難に遭遇した時、自分の正義の心が引くことを良しとしなければ、自分を窮地に追い込むことになろうと構わず前に出る。そして彼は必ずそこから生還する。自分の心が求めるままに英雄的に行動し、窮地を実力と強運と迷いなき確信で乗り越え続ける。それが「血統の完成者」である承太郎にとっての、特に意識することもない当たり前の生き方である。そして彼はこの力で以って、100年の時を経て無敵のスタンド能力を身につけた吸血鬼DIOに立ち向かうことになる。
しかしその力がゆえに承太郎は、人でありながら人としての性質から遠ざかった存在として生きる宿命を背負うことになる。彼の「全てを高度にこなす完全さ」は、不完全な者たちがまだるっこしく生きる世の中に対する抑えようのない苛立ちとなって、彼をいわゆる「不良」へと成長させる。しかし反面彼は、自分の苛立ちが「たまたま恵まれていた自分の身勝手な感情」であることも自覚しており、その相反する感情と理性に苛まれることになる。
「恵まれた者」である彼には、「恵まれない者」が生きるための辛さや成長するための努力を、頭で理解することはできても心で実感することができない。彼は「恵まれない者」が努力に努力を重ねてやっと乗り越えられるようなことを当たり前に行えるが、それは彼が「恵まれた者」だからである。そして仮に彼自身が「恵まれない者」だったとしたらそれを乗り越えられるかは、彼自身には知ることもできず、自信も持てない。なぜなら今の自分の全てはその実力から心の強さに至るまで「恵まれていた」がゆえにあるのであり、そんな自分に「恵まれていなかった自分」のことなど想像もつかないからである。
それゆえに彼は、「恵まれない者」が自らの境遇に腐ることなく「強くまっすぐ生きる姿」に心を打たれ、渇望にも似た憧れを覚える。恵まれない環境でエネルギッシュに人々が生きるインドという土地を気に入ったのも、自分の無力さを自覚した上で他人のために勇気を振り絞る広瀬康一という少年に心からの尊敬を抱いたのも、そこに「自分には決して手に入れられないもの」を見出したからであろう。そして彼が「学者」という「未開の知識と知恵を切り拓く」道へと進んだのは、それが完全なる自分の実力をもってしてもなお困難で、手応えと充実感を得られる道だったからであろう。
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