スピードワゴン財団の活動履歴

スピードワゴン財団は、ジョジョの奇妙な冒険第2部「戦闘潮流」から登場する団体である。この団体は作中では主に、ジョジョ各部の主人公たちとその敵が超常的な力を用いて行う戦いに対して、主人公側を科学技術面・医療面・金銭面・事務作業面から支援する役割を担っている。

ワシントンD.C.にあるSPW財団本部(ジョジョ2部時点)

SPW財団を設立したのは、ジョジョ1部から2部にかけて登場するロバート・E・O・スピードワゴンという男である。1863年に貧民街で生まれ、世界各国を放浪しながらアウトローな人生を送ってきた彼は、1888年にイギリス・ロンドンの暗黒街でジョジョ1部の主人公ジョナサン・ジョースターと出会う。

ロバート・E・O・スピードワゴン(ジョジョ1部時点)

ジョナサンの人柄に惚れ込んだスピードワゴンは、押しかけるようにジョナサンの舎弟めいた立場に収まり、その直後から始まるジョナサンの冒険、吸血鬼ディオとの戦いに深く関わる。しかしこの戦いの末、ジョナサンは1889年2月にディオと相打ちとなって死亡する。


こうしてジョジョ1部は終わり、49年後の1938年に、ジョナサンの孫ジョセフを主人公とした2部が始まるのだが、その間にスピードワゴンは、ひとり一文無しでアメリカ・テキサスへ渡り、砂漠で死にそうになりながら油田を発見して石油王となり、その財力で世界経済を動かすまでの人物となる。

ロバート・E・O・スピードワゴン(ジョジョ2部時点)

そしてスピードワゴンは自らの財力を、人類の福祉と発展に役立てるべく、医学・薬学・考古学などさまざまな分野を助成する財団を1910年に設立した。これがスピードワゴン財団である。

そしてスピードワゴン財団には、上記以外にもう1つ目的がある。それはかつてディオを吸血鬼に変えた道具である「石仮面」、あるいはそれに類する「超自然的な事物」を調査研究し、その脅威から人類を守ることである。この活動はその性質上、財団の表の活動とは異なり、基本的には秘密にされている。

なおこれら財団の、社会福祉的な表の活動は「ジョナサンの善性」を受け継いだものであり、超自然的な事物に対処する裏の活動は「ジョナサンの戦い」を受け継いだものであるといえる。

ではここからは、作中で明らかにされているSPW財団の活動内容を、ストーリー展開と絡めて時系列で列挙していく。またそれに加えて、財団が動いたと作中で示されてはいないが、事件の内容や規模的に間違いなく財団が動いたであろうジョジョ世界での事件も挙げていく。

※今のところ7部まで。8部以降もそのうち加筆します。

1部終了から2部開始まで(1889年〜1938年)

1910年:スピードワゴン財団設立

スピードワゴン財団設立。ちなみにロバート・E・O・スピードワゴンが、財団創設の原資となる油田を掘り当てたのは、4部46話「レッド・ホット・チリ・ペッパー その5」と47話「レッド・ホット・チリ・ペッパー その6」の間のページで語られた情報によると、20世紀初頭。また2部3話「悲痛なしらせ」によると、石油会社の方の名前は「スピードワゴン石油」。

1921年:国際指名手配されたエリザベス・ジョースターの逃亡を手助け

2部64話「ジョージ・ジョースターの悲劇」で語られた、1921年の出来事。ジョナサンの息子ジョージII世が、イギリス空軍の司令官として社会に溶け込んでいたゾンビに殺される(このゾンビは1888年に吸血鬼ディオがしもべとして生み出したゾンビの生き残りである)。

このゾンビはジョージの妻エリザベス・ジョースターが波紋のエネルギーで消滅させたが、その行為を英空軍の者に目撃されてしまう。そして司令官がゾンビだったと知らない英空軍は、エリザベスを殺人および国家への反逆罪で国際指名手配する。

これに対してSPW財団はエリザベスの逃亡を手助けし、あらゆる手段で彼女の身元を消す。そして逃亡の果てに彼女はリサリサという偽名で、イタリアにある波紋の修行場、エア・サプレーナ島の女主人となる。

2部:戦闘潮流(1938年秋〜1939年3月頃)

1938年(2部開始の少し前):メキシコの遺跡で大量の「石仮面」と「柱の男」を発見

かつてディオ・ブランドーを吸血鬼に変えた石仮面は、1858年にメキシコのアステカ地下遺跡で発掘されたものである(ちなみに発掘したのはジョジョ1部でジョナサンに波紋法を教えたウィル・A・ツェペリ)。この理由からSPW財団は、メキシコ各地に点在する遺跡を継続的に調査していたらしい。

そして財団の遺跡発掘隊は1938年の調査において、とある遺跡の地下の大広間で、大量の石仮面を発見する。さらにそれら石仮面が掛けられている大きな柱に彫られた、不自然に精緻な人間の彫刻を調べたところ、それが彫刻ではなく柱と同化して眠っている人間型の生物だと判明する。

柱と同化して眠る男

遺跡内の壁画からこの「柱の男」も吸血鬼と同じく太陽光と波紋のエネルギーに弱いと知ったスピードワゴンは、チベットにある波紋使いの里の長であるストレイツォに協力を打診する。

1938年秋:メキシコの遺跡に眠る「柱の男」消滅作戦が内紛で失敗

スピードワゴンと財団の遺跡発掘隊2名、そしてストレイツォとその弟子2名の計6名が、前述の「柱の男」が眠る遺跡へ赴く。しかし肉体の老いを苦にしていたストレイツォは、遺跡内の「石仮面」で吸血鬼になる野望を優先してスピードワゴンを裏切り、彼を含む同行者たちを殺害し、その死体を外の河へ流して捨てる。そして「柱の男」はそのまま遺跡内に放置される。

しかしSPW財団のこれらの動きは、超常的な力を軍事的に利用しようとしていたナチスドイツ軍に捕捉されていた。また河に流されたスピードワゴンは意識不明の重傷ながらも生きていた。

そしてシュトロハイム少佐が率いるドイツ軍部隊は、河の下流に流れ着いたスピードワゴンの身柄を確保し、メキシコ国内に秘密裏に作ったドイツ軍の施設に運び込み、治療して意識を回復させた後に自白剤を使用して遺跡の場所を吐かせる。そして「柱の男」は柱ごと切り出され、同施設へ運び込まれる。

1939年:石化したサンタナの回収と調査

上記のドイツ軍施設で柱の男(サンタナ)とジョジョ2部の主人公ジョセフ・ジョースターが戦い、ジョセフが勝利。サンタナは太陽光と波紋から身を守るために石化する。SPW財団はサンタナを日没前に回収し、財団の本部があるワシントンD.C.に運び、24時間体制で紫外線を人工照射してサンタナの活動を封じつつ調査する。

紫外線を照射されるサンタナ
財団本部の職員たち

サンタナがこの後どうなったのかは作中では語られていないが、波紋使いのジョセフとリサリサはジョジョ2部終了後、両者ともにアメリカで暮らしているので、折を見て波紋で消滅させたと考えるのが妥当だろう。

石化状態のサンタナには波紋は通じないが、機械を使って物理的に破壊することは可能であり、そうなればサンタナも粉々にされてしまう前に石化を解かざるを得ない。そこをジョセフやリサリサが波紋で攻撃すれば、消滅させるのは容易いはずである。

1939年1月30日:スピードワゴンが「3人の柱の男」が眠るローマの地下遺跡を視察

スピードワゴンとジョセフが、シーザー・A・ツェペリの紹介で、ドイツ軍が管理するローマのコロッセオの地下にある遺跡、3人の柱の男が眠っている遺跡に案内される。しかしスピードワゴンが到着した時点で3人の柱の男はすでに目覚めており、ドイツ軍部隊は全滅させられていた。

シーザーとジョセフは柱の男の1人ワムウと戦い敗北するが、殺されはせずに見逃される。しかしそれと引き換えにジョセフは、心臓と喉に毒入りの指輪を埋め込まれることになる。

ところで20話「エイジャの赤石」で、上記の地下遺跡を監督していたドイツ軍将校が、「(紫外線照射で柱の男を動けなくできる)安全策をスピードワゴン財団ともども知った」と語っている。

このセリフを素直に解釈すれば、おそらくSPW財団はメキシコのドイツ軍施設でサンタナを回収した際に、(全滅したシュトロハイム隊とは別に行動していた)ドイツ軍と接点を持ち、「柱の男」という人類共通の敵に対して協力関係を結んだのだと考えられる。

そしてそれが2部終盤の、100体あまりの吸血鬼を相手にしたドイツ軍と財団の共闘につながることになる。

1939年1月31日:ジョセフの体内に埋め込まれた指輪の分析

ジョセフの心臓と喉に埋め込まれた指輪をドクターがX線撮影し、所見を語る。作中ではこのドクターが財団所属とは明言されていないが、現地の町医者とも思えないのでたぶん財団の人間だろう。

ドクター(たぶん財団所属)

1939年2月28日:2部の最終決戦に財団の戦闘部隊が紫外線照射装置を装備して参戦

スイスの古代遺跡で行われた波紋戦士と柱の男の最終決戦。その戦いの終盤、ジョセフが100体ほどの吸血鬼を相手に多勢に無勢な状況になっていたところに、シュトロハイムとナチス親衛隊および、スピードワゴンとSPW財団特別科学戦闘隊が参戦し、紫外線照射装置で吸血鬼の群れを掃討する。

SPW財団特別科学戦闘隊
紫外線照射装置で吸血鬼を殲滅するシュトロハイム

ところで人類の幸福を目的とするSPW財団は本来であれば、ナチスドイツ軍とはいかなる形でも協力すべき立場ではない。しかしながら、両者が協力して開発した小型高出力の紫外線照射装置、強力な紫外線を前方数mに照射するこの装置は、柱の男や吸血鬼に対しては強力な武器となる反面、人間にはほとんど害はない。

つまりこの技術が人間間の戦争に兵器として転用される可能性は限りなく低く、ゆえに財団もその範囲でのみドイツ軍との技術協力を許容したのだろう。

2部終了から3部開始まで(1939年〜1988年)

1939年3月以降:ジョセフの義手のメンテナンス

2部のラストバトルで左手を失ったジョセフは、2部最終回ではシュトロハイムの伝手でドイツ軍に作ってもらった義手を付けていた。この義手はシュトロハイムの機械体と同じ技術、「人間の魂と機械を神経的につなぐ」技術によって、本物の手のように動かすことができる。

ジョセフがドイツ軍に作ってもらった義手

そして2部終了以降、この義手のメンテナンスや、交換用の新しい義手の製造は、SPW財団が行うことになる。財団は自前で義手の仕組みを解明したか、あるいは紫外線照射装置でドイツ軍と技術協力した際に機械体の技術も共有していたかしたのだろう。

1984年頃:カナリア諸島沖で起きた事件からDIOの復活を認識

1984年頃、アフリカ大陸北西部沖にあるカナリア諸島の海域で、無人のクルーザーが浮かんでいるのが発見される。船には何の異常も破壊もなく、ただ乗員だけがこつ然と消えたかのような状態だった。そして甲板には、最近海から引き揚げたとみられる鉄の箱が置いてあった。

無人のクルーザーと鉄の箱

この事件は世間的には、少し話題になってすぐ忘れ去られる程度のものだったらしいが、財団の情報網には引っかかる。そして甲板の鉄の箱が100年近く前の1889年に、吸血鬼ディオの寝床として客船に乗せられ、その後海底に沈んだものだと判明する。

このこととクルーザーの不可思議な状況とを併せて財団は、まず間違いなく吸血鬼DIOが復活したと見て、調査を開始する。またこの情報はジョセフ・ジョースターにも伝えられる。

なお余談になるがこの事件はたぶん、我々の世界で1872年に起きた「メアリー・セレスト号」の事件が元ネタである。

1985年頃:新たな超常的能力「スタンド」の存在を認識

ジョセフがエジプトの占い師モハメド・アヴドゥルと知り合う。おそらくジョセフは上記のクルーザーの事件の調査でエジプトに来て、アヴドゥルに出会ったのだろう。

アヴドゥルは「波紋」とも「闇の生物」とも異なる「超能力」、超能力者同士にしか見えないヴィジョンを操って周囲の物体を破壊したり燃やしたりできる能力を持っていた。「スタンド」と名付けられたその能力もまた、財団の研究対象となる。

1985年〜1988年の間:犬のスタンド使いイギーの監視と飼育

ニューヨークに住む野良犬のスタンド使いイギーを、1985〜1988年の間のいつ頃かは不明だが、アヴドゥルが捕獲する。

そして財団はイギーを、後の1989年1月にジョースター一行に助っ人として合流させるまで、監視しながら飼うことになる(たぶん頑丈な隔壁を備えたシェルターのような場所で、食事と彼の好物であるコーヒー味のチューインガムを与えながら)。

1987年頃:ジョセフが念写した「DIOが写った写真」の分析

ジョセフ・ジョースターにスタンドが発現。発現した能力は「念写」で、その写真には必ずDIOが写っていた。財団は写真をいろいろな機械やコンピューターで分析したが、その背景は常に闇だったため、DIOの居場所を特定することはできなかった。

またジョセフは自分にスタンドが発現した理由が、DIOからの影響だと感覚的に理解する。つまり財団はこの時点で、DIOも間違いなくスタンド能力に目覚めていると確信することになる。

1988年6月:アメリカ深南部の街で起きた住人消失事件の調査

ジョジョ6部129話「ヘビー・ウェザー その5」で語られた事件。後にジョジョ6部に登場することになるウェザー・リポートが、1988年の16歳のとき、アメリカ深南部のとある街で、スタンド「ヘビー・ウェザー」を暴走発動させる。

その結果、町の住人のほぼ全てがカタツムリ化した後、天敵のマイマイカブリに食われて消え去る。そしてこの現象は、ウェザーの双子の兄であるエンリコ・プッチが、スタンド「ホワイトスネイク」の能力でウェザーの記憶を奪い、ウェザーがヘビー・ウェザーの使い方を忘れることで終息する。

ヘビー・ウェザーでカタツムリ化した人間

作中ではこの事件に対してSPW財団が動いたという言及はないが、町1つの住人がほぼ消失したこの事件が、超常的な事件として財団の情報収集網に引っかかって調査されたことはまず間違いない。

そしてそう考えると1つの疑問が出てくる。この事件で無事だった者の中にエンリコ・プッチの名前があったことと、2011年にジョジョ6部の主人公である空条徐倫が収監されたグリーン・ドルフィン・ストリート刑務所の職員の中にエンリコ・プッチの名前があるという情報の符合に、なぜ財団の誰も気づかなかったのかという疑問である。

ただこの疑問に対する答えは簡単である。プッチのホワイトスネイクは前述したとおり人間の記憶を操ることができる。つまりプッチは、事件後に町に来た財団の調査員に気づき、自分に関する記憶と記録を残させなかったのだと考えられる(ちなみにホワイトスネイクに記憶を操作された人間の様子は、6部48話「集中豪雨警報発令 その1」での看守に見ることができる)。

ホワイトスネイクで記憶を操作された看守(ジョジョ6部)

3部:スターダストクルセイダース(1988年11月〜1989年1月)

1988年11月28日:DIOの呪縛で昏倒した空条ホリィの看護

ジョセフの娘空条ホリィが、DIOの邪悪な魂から伝わる影響で高熱を発し昏倒する。この報告を受けた財団は空条邸に数名の医師を派遣し、24時間体制での看護を開始する。

ホリィの看護に派遣された財団の医師たち

1988年11月末頃:ジョースター一行が海路でエジプトへ向かうための船をチャーター

ホリィを救うために日本からDIOが潜むエジプトへと旅立った、3部の主人公空条承太郎とジョセフたちジョースター一行。彼らはまず、1日足らずでエジプトに着ける国際線のジャンボジェット機に乗る。しかし「塔」のスタンド使いの攻撃で飛行機を破壊されて香港沖に不時着し、空路での移動を断念する。

次にジョセフは「海のシルクロード」つまりユーラシア大陸南方の海を船でエジプト辺りまで航行する計画を立て、財団の紹介で一隻の船(とその船に10年以上乗ってきた船長と船員)をチャーターする。しかし財団から紹介された船長は「月」のスタンド使いに殺され入れ替わっており、彼によって船は爆破される。さらに救命ボートで漂流中のジョースター一行のもとに、今度は「力」のスタンド使いが、巨大貨物船型のスタンドで攻撃を仕掛けてくる。

財団がチャーターした船

これらの出来事により、ジョースター一行は海路での移動も断念し、以降はほぼ陸路で50日近くかけて、エジプト・カイロを目指すことになる。

1988年11月末頃〜1989年1月16日:スタンドバトルに巻き込まれた一般人へのアフターケア

ジョースター一行が日本を出発してからエジプトのDIOを倒すまでの50日近い旅路では、DIOの組織が一行に送り込んでくる敵スタンド使いの攻撃で、一般人がちょくちょく被害を受けたり亡くなったりしてしまっている。

作中での言及はないが、おそらくジョセフはその被害を逐一財団に報告している。そして財団はスタンドによるそれらの被害、遺族や関係者に正直に事実を伝えるわけにはいかない被害に対して、適当な理由をつけてアフターケアをしているものと思われる。

財団の表の顔は慈善活動であるため、このようなアフターケアにはうってつけであろう。

1988年12月下旬:ジョースター一行が紅海を渡るための潜水艦の購入費を提供

ジョースター一行がサウジアラビアから紅海を渡ってエジプトに上陸するため、潜水艦を使用。その高額な購入費は、作中での言及はないがまず間違いなく財団が出している(ちなみに大富豪相手に販売される数人乗りの潜水艦の価格は、大ざっぱに数億円から数10億円らしい)。

財団が購入費を出した潜水艦

ただし財団が直接潜水艦を購入すると、香港で船をチャーターしたときのようにDIOの組織側に感づかれる恐れがある。このため財団は予算だけを出し、購入はジョースター一行を一時離脱していたアヴドゥルが、名前や経歴を偽り「アラブの大金持ち」を装って行った。

1989年1月上旬:DIOのアジトを監視していた職員が「謎の9人の男女」を目撃

エジプト・カイロのDIOのアジトを監視していた財団職員が、アジトの建物に「謎の9人の男女」が集まり、いずこかへ旅立つのを目撃する。

謎の9人の男女

この9人に対して財団は、「遠くから写真を撮ることさえ危険」との判断から写真の撮影を断念し、また別々の方向へ去っていく9人の各々に対しても、「尾行は危険」との判断から行方の追跡を断念する。

そして「謎の9人の男女」という情報だけが、2日後にジョースター一行に伝えられることになる。

1989年1月上旬:エジプトに上陸したジョースター一行にヘリで物資とイギーを届ける

紅海を渡ってアフリカ大陸に上陸し、まずはナイル川の上流を目指して砂漠を進むジョースター一行のもとに、財団のヘリコプターが着陸。旅に必要な水・食料・医薬品・着替え、そして助っ人である犬のスタンド使いイギーを届ける。

財団のヘリコプター

なおヘリコプターに乗っていた財団職員2名は、役目を終えてヘリで帰投していたところを敵スタンド使いンドゥールに攻撃され、殉職する。

財団職員2名

またジョースター一行もその直後にンドゥールに攻撃されて戦い、花京院が両眼球を切り裂かれてしまう。彼はとりあえずナイル川沿いのアスワンの病院に入院し、その後財団が派遣した医師に治療されることになる。

ちなみにここで登場した財団職員2名が被っていた「SPEED WAGON」と書かれている帽子には、車輪を模したようなマークが付いている。これはどうやら財団のロゴマークらしく、ジョジョ8部終盤にも再度出てくる(逆に言えば3部のこの回以降や4〜7部には出てこない)。

1989年1月10日:ホリィの見舞いに向かうスージーQに財団職員が同行

ジョセフの妻であり空条ホリィの母であるスージーQ・ジョースターが、ジョースター家に仕える執事ローゼスを連れて、日本の空条邸へ見舞いに向かう。この時点でのスージーQは、娘の病気がDIOという男が原因の霊障であることも、病気が命に関わるほどのものだとも知らされていなかった。

そしてこの見舞いに対して財団は職員を1名同行させる。彼の役割はたぶんスージーQが真実を知ったときに、詳しい事情を説明する解説役であろう。

ローゼス(左)とSPW財団の男(右)

1989年1月中旬:財団の調査員がアジトを変えたDIOの行方を見失う

ナイル川を北上し、エジプト・カイロ入りしたジョースター一行。彼らに対してDIOはアジトを変え、アジトを監視していた財団の調査員はその行方を見失ってしまう。

このためこの後のDIOの新アジトの捜索は、ジョセフが念写した「DIOの館の写真」と、ジョセフと承太郎が感じる「DIOの気配」を頼りに行われることになる。

1989年1月15〜16日:左前足を失ったイギーの治療

ジョースター一行から離れて単独行動していたイギーが、偶然DIOの館の前を通りかかり、DIOの館の門番であるハヤブサのスタンド使い、ペット・ショップと戦闘になる。その結果イギーは左前足を失い、それ以外にも全身に怪我を負って死にかける。

その後イギーはカイロに住む少年に保護されていたが、財団は彼らを発見しイギーに可能な限りの手当てを行う。

1989年1月16日:カイロ市街で行われたジョースター一行とDIOの戦いで死傷者を回収

1月16日の日没後にエジプト・カイロ市街で行われたジョースター一行とDIOの戦い。移動しながら行われるこの戦いに対して財団は、救急車両とヘリコプターを出動させ、花京院の遺体、DIOに血を吸われて干からびたジョセフの遺体、意識不明状態のポルナレフを回収する。そして戦いが決着した後、頭部が吹っ飛んだDIOの死体も回収する。

財団の救急車両
車内の財団職員たち

なおその直後ジョセフは、承太郎のスタープラチナによる心臓マッサージと、救急車両内の医師と設備によるDIOの死体からの輸血で蘇生する。

4部:ダイヤモンドは砕けない(1999年4月〜同年7月)

1999年4月頃:杜王町に空条承太郎を派遣

ジョースター家でジョセフの高齢(78歳)を鑑みて、近い将来に必要となるかもしれない遺産の分配のために調査をしたところ、かつて1983年にジョセフが浮気した相手、東方朋子が、ジョセフの子供を産み育てていたことが明らかになる。子供の名は東方仗助、ジョジョ4部の主人公である。

遺産分配の調査の時点では財団は関わっていなかっただろうが、ジョセフの息子となればスタンド使いである可能性が高く、この時点で財団も関与することになる。

さらにジョセフが仗助を念写してみたところ、なぜか仗助とは別の男とそのスタンドが写る。写った男は「アンジェロ」のあだ名で知られる片桐安十郎という凶悪犯罪者であり、半年ほど前に絞首刑を執行されたが生き残り、その翌週に刑務所を脱走して姿をくらましていた。そしてアンジェロの生まれ故郷は奇しくも仗助が暮らしているのと同じ街、M県S市の杜王町だった。

ジョセフの念写に写ったアンジェロとそのスタンド

以上を踏まえて財団は、この込み入った状況に対処できる人材として、仗助の血縁者であり最強のスタンド使いでもある空条承太郎を杜王町に派遣する。

ところでSPW財団の本部は2部の時点ではアメリカのワシントンD.C.にあったが、4部46話「レッド・ホット・チリ・ペッパー その5」と47話「レッド・ホット・チリ・ペッパー その6」の間のページの情報によると、4部の時代にはアメリカ・テキサス州のダラスに移転している(なおテキサス州は知ってのとおりスピードワゴンが油田を掘り当てた場所である)。

また同ページでは、日本の東京都目黒にも支部があると語られており、4部での杜王町絡みの財団の活動は、この支部が拠点になっていると思われる。

1999年4月頃:生物からスタンドを引き出す「弓と矢」という道具の存在を認識

アンジェロを倒した承太郎と仗助は、アンジェロが「弓と矢」という道具で射られてスタンド使いになったこと、アンジェロを射た正体不明の「学生服の男」が杜王町にいるという情報を聞き出す。

承太郎はこの情報を財団に報告し、承太郎自身は「学生服の男」の件があるため杜王町への滞在を継続する。

そして財団は承太郎からの報告をもとに、10年前にDIOの組織について集めた資料を再確認したところ、その中から「弓と矢を持ち歩くエンヤ婆」の写真を見つけ出す(エンヤ婆はDIOにスタンドの存在と動かし方を教えた人物である)。

財団の資料から見つかった「弓と矢」の写真

1999年5月:ジョセフが杜王町に来訪する旨を承太郎に伝える

「学生服の男」虹村形兆から「弓と矢」を奪った正体不明の男。彼はレッド・ホット・チリ・ペッパーという「電線の中を移動できる」スタンドを持っていた。この情報を聞いた仗助の父親ジョセフは、自分のスタンドを使えばその本体を見つけ出せると考え、杜王町への来訪を決意する。

財団職員はそれを承太郎に伝えるにあたって、電話や電報はレッド・ホット・チリ・ペッパーに盗聴される恐れがあることから、承太郎が滞在する杜王グランドホテルを訪れ、承太郎に口頭で直接ジョセフが来訪する旨を伝える。

財団からのメッセンジャー

ところでここで登場した財団職員が着ていたスーツは、少し変わったデザインをしているが、これが財団の制服的なものなのかは不明。

1999年5月:ジョセフを船で杜王港へ送り届ける

ジョセフがSPW財団の船「トラフィック号」で杜王港に到着。ジョセフが杜王町に(車や電車でなく)船で来た理由は、万が一ジョセフの来訪がレッド・ホット・チリ・ペッパーに知られた場合、陸路が電線を始めさまざまな形で「電気」に囲まれているのに対して、海路は襲撃される危険がはるかに少ないからであろう。

SPW財団の船「トラフィック号」

ところで船に乗っていた財団職員は、「SPEED WAGON」と書かれた帽子を被り、また制服の肩のところには、逆三角形内に「SPW」と書かれたワッペンが付いている。これもたぶん財団のロゴマークの1つなのだろうが、ただこのワッペンのマークが出てくるのはここだけで、以降の回や部には一切出てこない。

船に乗っていた財団職員とその制服

1999年5月:回収された「弓と矢」の管理と研究

レッド・ホット・チリ・ペッパーの本体である音石明が仗助に倒され、音石の自宅から「弓と矢」が回収される。そして弓と矢は財団の保護下に置かれ、研究されることになる。

1999年5月:刑務所に服役中の音石明への接触と自白剤の使用

レッド・ホット・チリ・ペッパーを悪用した総額5億円の窃盗の罪で刑務所に服役中の音石明に、財団職員が接触。音石が10日ほど前に杜王町南の農業用水路で、弓と矢を使い鼠を1匹射ていたことを聞き出す。

ただその際の音石の言動が不審だったのか、翌日に財団職員が再度彼に接触して自白剤を使用したところ、射た鼠は1匹ではなく2匹だったと白状する(刑務所内の音石に財団職員がどうやって自白剤を使ったかは不明)。

1999年5月頃:承太郎と仗助の鼠狩りを現地で補佐

上記の音石の証言を元に、承太郎と仗助が杜王町南部の田園地帯で「スタンド使いの鼠」のハンティングを行う。これに対して財団は、承太郎から携帯電話で指示を受け、田園地帯と住宅街の境の下水を封鎖して狙撃隊を配置するなどした(ただし現地で活動する彼らの姿が作中で描かれることはなかった)。

携帯電話で財団の者に指示を出す承太郎

1999年6月:「杜王町で15年前から活動する殺人鬼」の情報を承太郎から受ける

杜王町に住むスタンド使い、岸辺露伴と広瀬康一が、15年前に殺された杉本鈴美の地縛霊と出会う。彼女は自分を殺した正体不明の男が、それから15年ずっと、何らかの手段で死体を隠しながら殺人を続けており、杜王町の行方不明者数が全国平均の8倍もの多さなのは、それが原因だと2人に伝える。

この情報は康一から仗助を通じて承太郎へと伝えられ、承太郎から財団へと伝えられる。しかしこの殺人鬼が「スタンド使い」でなければ、それは財団が関わるべきことではなく、日本の警察や裁判所の仕事であるため、財団はこの時点では行動を起こすことはなかった。

1999年6月下旬:「杜王町で15年前から活動するスタンド使いの殺人鬼」の調査開始

6月24日、杜王町に住むスタンド使いの中学生、矢安宮重清(重ちー)が行方不明となる。

この事件に対して、地縛霊杉本鈴美は重ちーの魂があの世に行ったのを目撃したこと、そしてその際の様子から彼を殺したのが前述した「15年前から活動する殺人鬼」だと断言する。また仗助は重ちーと戦って勝てるのはスタンド使い以外ありえないと断言する。これらを根拠に財団は、件の殺人鬼がスタンド使いだと確定して調査を開始する。

とりあえず財団は、重ちーのスタンド「ハーヴェスト」が殺人鬼の衣服から引きちぎってきたらしい「ボタン」を承太郎から受け取り分析する。しかしどこにでもあるようなそのボタンからは大した情報は得られなかったらしく、承太郎のもとに戻される。

その後承太郎はこのボタンを手に、杜王町内で衣服の修繕を行っている店にしらみつぶしに聞き込みを行い、その結果「くつのムカデ屋」で殺人鬼に遭遇する。

1999年6月末頃:正体が判明した殺人鬼「吉良吉影」の情報収集

「くつのムカデ屋」で殺人鬼に遭遇した承太郎たちは殺人鬼と戦い、いったんは勝利し、彼の免許証から彼の名「吉良吉影」とその住所を知る。しかし直後吉良吉影は逃亡し、スタンド使い辻彩の能力「シンデレラ」で別人の顔に整形されることで、承太郎たちの追跡から逃れ、別人として杜王町で暮らし続ける。

この報告を承太郎から受けた財団は、吉良吉影の人物像を掴むための情報を可能な限り収集し、身長・体重・血液型・病歴から、家族構成・近所や職場での評判・恋人の有無まで調べ上げる。その調査結果は、吉良の家を家捜し中に承太郎が語っている。

ところでこの家捜しが行われたのは、おそらく承太郎たちが吉良に逃げられてから数時間以内である。つまり財団はたったそれだけの時間でこれだけの情報を集めたことになる。

身長体重などはたぶん吉良が勤めていた会社の健康診断のデータだろう。そして職場での評判などはもしかしたら、4部77話「吉良吉影は静かに暮らしたい その1」に登場した、吉良にやたら詳しい同僚社員から聞いたのかもしれない。

吉良吉影の同僚

1999年6月末頃:「2組目の弓と矢」の存在を認識

上述した吉良の家の家捜し中に、(一ヶ月ほど前に財団が回収した弓と矢とは別の)「2組目の弓と矢」が発見される。しかし矢の方は吉良吉影の父親の幽霊である吉良吉廣に持ち去られてしまう。

この報告を承太郎から受けた財団は、以降は「矢」がこれら2本だけでなく、さらに存在するかもしれないという前提で、世界規模での調査を開始したものと思われる。

1999年7月:杜王町を去るジョセフと承太郎を船で送迎

吉良吉影が死んで杜王町での事件に決着がついたため、ジョセフと承太郎が杜王港から船で町を去る(使われた船はジョセフが杜王町に来たときのものと同じようである)。

ところでレッド・ホット・チリ・ペッパー対策でジョセフが船で来たときと違って、帰りは別に陸路でも構わないはずである。にもかかわらず船を使ったのは、杜王町内でジョセフに拾われ彼の養子となった、「透明の赤ん坊」こと静・ジョースターが理由かもしれない。

静・ジョースターは自分を中心とした直径1mほどのあらゆる物質を透明化するスタンド能力を持ち、ストレスを受けるとその能力を暴走発動させてしまう。これが陸路を車で移動中に起こると、大きめの車でも透明化した車体を通行人に目撃されるリスクがある。これに対して洋上の船であれば、目撃されるリスクははるかに低くできるわけである。

静・ジョースターの物質透明化能力

4部終了から5部開始まで(1999年〜2001年)

おそらく1999年7月以降:財団とポルナレフと承太郎が「矢」の追跡を開始

ジョジョ5部130話「ほんの少し昔の物語」内の、過去回想で語られたエピソード。かつて1986年に正体不明の男がエジプトの遺跡で6本の「矢」を発掘したこと、1990年代になって空条承太郎とジャン=ピエール・ポルナレフが矢の追跡を始めたこと、そしてポルナレフが矢の1本の持ち主であるディアボロに辿り着いたものの返り討ちにされたことが語られている(このディアボロは矢の発掘者であり、5部のラスボスでもある)。

承太郎とポルナレフ

ここでの「1990年代になって」という文面は、素直に解釈すれば1990年代前半のように思える。またそのコマに描かれた承太郎が学生服を着ているのも、それを裏付けているように思える。

しかし承太郎と財団が「矢」という道具の存在を知ったのは4部作中、1999年4月以降のはずなので、これはそれ以降の出来事と見るべきである。また1971年生まれの承太郎は、1990年にはすでに高校を卒業しているはずなので、学生服にもあまり意味はないと見るべきだろう。

それを踏まえて4部の時系列と、5部130話の内容を合わせると、以下のとおりになる。

  • 1999年4月:アンジェロの供述で承太郎と財団が「弓と矢」という道具の存在を初めて知る。財団が10年前に集めた資料から「弓と矢を持ち歩くエンヤ婆」の写真を発見。
  • 同年5月:杜王町で回収された「弓と矢」を財団が分析。5部113話「プロント!通話中 その2」でポルナレフが語った「矢の素材」についての情報は、おそらくこの研究成果だろう。
  • 同年6月末頃:杜王町で2組目の「弓と矢」が発見される。このとき承太郎は弓と矢について「『ひと組』だけではないと思っていた」と語っている。このことからこの時点での財団は、「エジプトで発掘された6本の矢」の情報にはまだ至っていなかったことがわかる。
  • 同年7月:承太郎が杜王町を去る。おそらくこの頃には財団は「6本の矢」の情報を掴んで残り4本の追跡を始め、承太郎も杜王町を後にしてすぐ追跡に加わったと思われる。またポルナレフは承太郎と同時期あるいはひと足早く追跡を始めたと思われる。

ところで4部作中での承太郎は、財団との連絡をこまめに行っており、それは矢の追跡でも同じだっただろう。しかしポルナレフの方はどうやら、財団との定期連絡などを行わずに勝手気ままに行動していたらしい。

そしてそれが原因でポルナレフは自業自得の窮地に陥ることになる。彼は矢の1本がイタリアにあり、その持ち主であるディアボロが「スタンド使いを多数擁する犯罪組織」を作っていることを知り、この危険な事実を財団に伝え承太郎を呼ぼうとする。しかしディアボロの組織にあらゆる連絡手段を封じられて連絡できないまま、ディアボロに再起不能にされて潜伏生活に入らざるを得なくなる。

孤立したポルナレフ

そしてポルナレフと定期連絡していなかった財団と承太郎は、ポルナレフがどこかで勝手気ままに矢の追跡を続けているのだろうという認識のまま、1年と数ヶ月が経過し、2001年のジョジョ5部を迎えることになる。

5部:黄金の風(2001年3月29日〜同年4月6日)

2001年3月以前(5部開始の少し前):「DIOの子供」の可能性がある少年の調査

2001年に、財団の調査でDIOの子供かもしれない少年が発見される。その発見経緯は不明だが、おそらくは少年の母親からだろう。可能性としては例えば、当時DIOの食料として献上されたはずの女性が生きていることが判明したなどが考えられる。

ともあれ財団は、彼の名前が「汐華初流乃」であることと彼の最近の顔写真、5歳頃まで日本で暮らしていたが、母親がイタリア人と結婚したのを機にイタリアのネアポリスに引っ越したこと、そして現在はネアポリス中・高等学校の中等部寮に入っていることを調べ上げる。

汐華初流乃の顔写真

ただ彼が住む現地での調査は行わなかったらしく、彼が普段は本名をもじったジョルノ・ジョバァーナを名乗っていることや、最近になって彼の頭髪が自然に黒髪から金髪になったことまでは知らなかった。

ところでDIOには汐華初流乃の他にも3人子供がおり、この3人はジョジョ6部に登場することになるが、財団はこの3人の存在までは突き止められなかったようである。

2001年3月29日:汐華初流乃の皮膚の採取を広瀬康一に依頼

財団が汐華初流乃のDNA鑑定を行うため、彼の皮膚を薄皮1枚程度採取できる人材を探す(ちなみに「毛髪」や「唾液」などでのDNA鑑定は非常に難しいらしく、つまり彼の寮の部屋に忍び込んでも目的は達成できない)。

まず汐華初流乃に気づかれずに皮膚を採取する作業は、非スタンド使いの財団職員よりはスタンド使いのほうが適している。しかし承太郎や仗助では、もし汐華初流乃がDIOの息子で「ジョースターの血統の肉体」を持つ場合、彼らが互いに発する霊的な信号で汐華初流乃に存在を気取られる可能性がある。

そこで承太郎は、ジョジョ4部で知り合った杜王町のスタンド使い広瀬康一に、旅費を全額負担するヨーロッパ旅行のついでにこの仕事を行ってくれるよう依頼する。康一のスタンド「エコーズACT1」は小型スタンドで本体からの射程も長いため、こっそり皮膚を採取するにはかなり適している。

康一に仕事を依頼する承太郎

この仕事を引き受けてイタリアのネアポリスに着いた康一は、汐華初流乃に出会えはしたものの、いろいろあって皮膚の採取には失敗する。しかしその過程で康一は、汐華初流乃がスタンド使いであること、彼の頭髪が父親の遺伝で黒髪から金髪に変わったことを知る。そして康一からの電話でこれらを聞いた承太郎は、汐華初流乃もといジョルノ・ジョバァーナが、まず間違いなくDIOの子供だと判断する。

また康一との通話の際に承太郎は、ジョルノの髪色の変化とスタンド能力の覚醒が、ジョルノと同じ町に住む「強力なスタンド使い」の影響かもしれないと推測する。そしてこの推測は数日内に裏付けられることになる。

2001年3月29日以降:康一からの連絡で「矢を所有するイタリアのギャング組織」の存在を知る

広瀬康一がジョルノの暮らす学生寮で再びジョルノに遭遇し、ジョルノを攻撃するスタンド「ブラック・サバス」との戦いに巻き込まれる。そしてそこで康一は、ジョルノを襲っていたスタンドの本体が「矢」を所有していることを知る。

康一はこの情報をすぐさま電話で承太郎に伝えようとするが、ジョルノに止められる。その理由としてジョルノは、「敵は組織であり、君(康一)が誰かに喋ればそこからバレる可能性がある」と説明する。

ジョジョ4〜5部間のポルナレフによる矢の追跡のところでも触れたが、ディアボロをボスとするギャング組織「パッショーネ」は、電話などのあらゆる連絡手段を監視して、組織にとって不都合な情報が外部に漏れるのを感知できるらしい(それが具体的にどういう方法かは分からないが)。つまり康一が電話で承太郎や財団に矢のことを喋れば、それも組織に知られてジョルノや康一に累が及ぶかもしれないわけである。

このため康一は、少なくともイタリア国外に出るまでは承太郎への連絡を控えたと思われるが、それでも数日内には連絡して矢のことを伝えたはずである。しかし5部作中ではこの情報に対して、承太郎と財団が何らかの行動を起こした形跡は見られない。

この理由は、5部の開始日から終了日までが「9日間」と非常に短いためだろう。財団はイタリアのこのギャング組織、「矢」を所有し、スタンド使いを多数擁するであろう組織に対して、承太郎を交えて何日もかけて入念な準備を行わざるを得なかった。その結果として5部の期間中には何もできなかったのだろう。

そしてその間にイタリアでは、ジョルノがパッショーネに入団してブローノ・ブチャラティをリーダーとするチームに入り、その後紆余曲折あってブチャラティたちとともにボスを裏切り、組織の追っ手から逃亡しながらボスの正体を探り、サルディニア島でボスの素顔と指紋の情報を入手し、その情報からインターネット上で、ボスの正体を知るポルナレフとコンタクトを取ることに成功する。

2001年4月6日以降:ローマとその近郊で起きた超常的事件の調査およびジョルノたちとの話し合い

ジョジョ5部終盤の4月5日の夜、ポルナレフと落ち合うためにローマのコロッセオを目指すブチャラティたちを、敵スタンド使いチョコラータが攻撃。彼はローマ近郊の漁村とコロッセオ近くの2箇所でスタンド「グリーン・ディ」のカビの攻撃を行い、その結果、大量の住民が体をカビで腐らされて殺される。この現象はジョルノがチョコラータを倒すまで続いた。

スタンドカビで体が崩れて死んだ住民

さらに同日23時頃、コロッセオでブチャラティたちを待っていたポルナレフが、ブチャラティたちに会う前にディアボロに遭遇してしまう。そしてポルナレフは、自分が持っていた「レクイエムの矢」をディボアロから守るために、この矢で自分のスタンドを暴走させて「チャリオッツ・レクイエム」を発動。

その結果、コロッセオを中心とした少なくとも半径数100m内の、住民・動物・昆虫など全生物が眠りに落ち、翌6日の朝に目覚めた者たちが、他者との「精神の入れ替わり」および「肉体の変質」を体験する。この現象は数10分後に能力が解除されるまで続いた。

肉体が変質した生物たち

立て続けに起きたこの2つの超常的事件に対して、作中ではSPW財団が動いたという言及はない。しかし前述したとおり財団は、「矢を所有するイタリアのギャング組織」を調査するための準備を進めていたはずであり、そのさなかに起きたこの事件を間違いなくそれ絡みの事件だと判断しただろう。

そしてイタリアに赴いた財団と承太郎が、上記2つの事件と「矢を持つギャング組織」の両面から調査を進めた結果、ディアボロを倒した後のジョルノたちと出会い、またジョルノに付き添っていたポルナレフと再会したことも間違いないだろう。

そこでどのような話し合いその他が行われたかは不明である。ただ5部ラストのページでは、ジョルノがパッショーネの新たなボスに就任する様子が描かれ、ポルナレフもジョルノに付き添い続けている。このことからどうやら財団は、ジョルノの持つ「正義の心」を信じ、腐敗したイタリア社会をギャング組織の力で改善しようとするジョルノに対して、静観または協力の立場を取ったようである(あるいはポルナレフは財団との橋渡し役兼財団からのお目付け役なのかもしれない)。

5部終了から6部開始まで(2001年〜2011年)

2006年頃:承太郎とともに何らかの超常的な事件に対処

6部75話「父・空条承太郎 娘・空条徐倫」内の、空条徐倫の過去回想で語られたエピソード。当時14歳の徐倫が逮捕された時、承太郎が娘のもとに駆けつけずに、東京行きの飛行機に乗るのを優先したというシーンがある。

徐倫の過去回想

そしてその出来事を思い出した徐倫は、父のかつての行動が、世界各地で起こっている超常的な事件に対処するためのものであり、さらにはそれら事件に自分や母を巻き込まないためのものだったと理解する。

このことから財団は、2006年頃に何らかの超常的な事件に対処しており、その事件は承太郎を呼ばなくてはならないほどの危険度だったことがわかる。ただその事件が具体的にどのようなものだったかは不明。

6部:ストーンオーシャン(2011年10月〜2012年3月)

2011年以前(6部開始の数ヶ月〜数年前):承太郎に「矢の欠片」と発信機入りのペンダントを提供

ジョジョ6部が始まる2011年より前の、いつ頃かは不明だが、空条承太郎が財団から「矢の欠片」と「発信機が仕込まれたロケットペンダント」を受け取る。その目的は、承太郎の娘でありジョジョ6部の主人公である空条徐倫を危険から守ることである。

矢の欠片
ロケットペンダント(発信機入り)

承太郎がスタンド使いになった後に産まれた徐倫には、生まれながらに「スタンドの素質」が遺伝している。しかしその素質は目覚める気配を見せなかった。

これは承太郎にとって「良いこと」でも「悪いこと」でもあった。まず良い点は、スタンド能力に目覚めなかったおかげで徐倫が、それまでの人生を「ジョースターの宿命」とは無縁な一般人として、(少しグレ気味ではあるものの)平穏に過ごせてきたことである。

一方悪い点は、もしいつの日か徐倫がジョースターの宿命で何らかの危険に巻き込まれたとき、徐倫に「自身を守るすべ」がないことである。

そこで承太郎は、財団から上記2つの品を融通してもらい、ペンダントの中に矢の欠片を「お守り」という名目で入れ、これを徐倫の母親である離婚した元妻に渡し、「徐倫が困った時に渡す」ように伝える。

これによって承太郎は、娘の身に何事も起こらなければ平穏なまま、何事かが起これば矢の欠片でスタンド能力に目覚めることに期待したわけである。

そしてこのペンダントは6部1話で徐倫に渡され、徐倫は渡されたその場で矢の欠片に指先を傷つけられて、スタンド能力に目覚めることになる。

またペンダント内に仕込まれた発信機は、本来は危険に巻き込まれた徐倫がさらわれるなどした時に、居場所を特定するためのものだったと思われる。しかしこれは6部序盤で別の用途に使われることになる。

2011年11月2日以降:徐倫が逮捕されたひき逃げ事件の調査

10月28日、徐倫の恋人ロメオが徐倫を乗せた車でドライブ中、ヒッチハイカーを轢いてしまう。そして2人は証拠を隠滅して逃走。その数日後の11月2日、徐倫の自宅に警察が訪れて徐倫を逮捕。徐倫はひき逃げ事件の容疑者として、フロリダ州立「グリーン・ドルフィン・ストリート重警備刑務所」の付属施設である管理ジェイルに入れられた後、11月23日の裁判で懲役15年の有罪が確定し、G.D.st刑務所に収監される。

グリーン・ドルフィン・ストリート刑務所

なお承太郎は徐倫の逮捕時、彼の職業である海洋学者としての研究のため、アフリカの連絡が取りにくい場所に出張中だった。

承太郎が不在のタイミングで起こったこの事件に対して、財団は何か裏がある可能性を考えて独自に調査を行う。その結果、G.D.st刑務所に、かつてのDIOの組織の残党であるジョンガリ・Aという男が収監されていること、そしてこの男が刑務所外のチンピラに指示を出してひき逃げ事件を偽装した黒幕であることを突き止める。

しかし仮にこの調査結果を司法に示したとしても、すでに懲役が確定している徐倫を刑務所から出すことは難しい。また仮にジョンガリ・Aがスタンド使いであれば、刑務所内の徐倫がいつ彼に攻撃されるかわからない。そしてスタンド絡みの事案は財団が対処すべき事案である。

これらを踏まえて財団は、法律を無視して徐倫を脱獄させることを決断する。そしてアフリカから帰還した承太郎とともに、脱獄計画を実行に移す。

2011年11月26日:徐倫を脱獄させるための潜水艇を刑務所に送り込む

11月26日、承太郎が正規の手続きを経て刑務所の面会室で徐倫と面会。徐倫に上述したひき逃げ事件の真相を説明して、脱獄を促す。それに合わせて財団は、洋上の監獄であるG.D.st刑務所の、面会室付近に2人乗りの小型潜水艇を送り込む。なおこの潜水艇は、前述したペンダント内の発信機を追尾して接近するようにプログラムされている。

小型潜水艇

脱獄を了承した徐倫は承太郎とともに、潜水艇が待つ刑務所の海岸を目指す。しかしその途上で承太郎は、ジョンガリ・Aの協力者である正体不明の人物のスタンド「ホワイトスネイク」に、記憶とスタンドを2枚の「DISC」に変えて奪われ、生命活動を停止してしまう。

承太郎から抜き出された2枚のDISC

このため徐倫は、父親から奪われたDISCを取り戻すためにあえて刑務所に残る道を選び、承太郎の肉体だけを潜水艇に乗せて送り出す。

またこのとき徐倫は承太郎が持っていた筆記用具で、承太郎が心の力を2枚のDISCにされて奪われたこと、DISCを体内に戻せば蘇生するであろうことを書き留め、このメモも潜水艇に入れたはずである。

2011年11月26日以降:生命活動を停止した承太郎の肉体を特殊なカプセル内で保護

自動操縦で然るべき場所に到着した潜水艇を財団が回収。中に承太郎の死体があるのを発見するが、徐倫が残したメモから状況を把握する。そして財団は承太郎の外傷を治療した後、彼の肉体が腐敗してしまわないように、特殊なカプセル内で保存する。

承太郎の肉体を保存するカプセル
カプセル内の承太郎

6部40話「サヴェジ・ガーデン作戦(中庭へ向かえ!) その1」に描かれたそのカプセルでは、内部の承太郎は半ば凍っているように見える。このことから財団はいわゆる「コールドスリープ(冷凍睡眠)」で承太郎の肉体を保存したと考えられる。

我々の世界ではこのようなコールドスリープ技術は、冷凍の際に体内で凍って膨張した水が細胞を破壊してしまうなどの理由で、未だ実現されていない。しかしジョジョの世界ではSPW財団によって(少なくとも何ヶ月か保つ程度には)実現されているようである。

2011年〜2012年:「承太郎のスタンドDISC」を刑務所外に持ち出すために「サヴェジ・ガーデン作戦」を決行

刑務所内で徐倫が「承太郎のスタンドDISC」の方だけを取り戻すことに成功。そして徐倫はテキサス州ダラスのSPW財団本部に電話をかけ、このDISCを刑務所の外に持ち出す方法を相談する。

これに対して財団の代表は、「サヴェジ・ガーデン作戦」なる作戦を提案し、徐倫にDISCを持って刑務所の中庭へ行くように指示する(具体的な受け渡し方法については、通話内容がホワイトスネイク側に盗聴される恐れがあるため、この時点での徐倫への説明はなし)。

徐倫はホワイトスネイクからの刺客の攻撃で瀕死になりながらも、中庭で財団が送り込んだ伝書鳩を発見。DISCを託して、作戦は成功に終わる。

DISCを受け取った伝書鳩

2011年〜2012年:記憶がない半覚醒状態の承太郎の生命維持

「サヴェジ・ガーデン作戦」の成功で刑務所外へと持ち出せた「承太郎のスタンドDISC」を財団が回収。承太郎の頭部に差し込んで体内に戻す。その結果、承太郎の肉体は生命活動を再開する。

しかし記憶を完全に失っている彼は、6部75話「父・空条承太郎 娘・空条徐倫」で財団所属のドクターが言っていたとおり「生きる目的」を失っており、1日のほとんどを眠ったような状態で過ごし、四肢の筋力を始め、肺や心臓を動かす筋力も少しずつ低下していく。

記憶がない承太郎の様子

そのような状態の彼に対して財団職員は、さまざまな機材を用いて可能な限りの対策を講じながら、健康の維持に努める。

なおここで登場する財団職員は、全員が滅菌室で着るような衣服に身を包んでいる。これは「生きる目的」の喪失によって病原菌への抵抗力も著しく低下しているであろう承太郎を、滅菌室で保護しているためと考えられる。

また彼ら財団職員の耳はなぜか、ファンタジー作品のエルフ種族あるいはSF作品「スタートレック」の宇宙人ヴァルカン人のように尖っている。こちらの理由は不明。

承太郎をケアする財団職員の衣服と耳

2012年3月中旬:空条徐倫たちの脱獄を認識

徐倫が刑務所内でホワイトスネイクの本体エンリコ・プッチ神父と戦い、「承太郎の記憶DISC」を取り戻す。しかしそれと引き換えにプッチ神父は、かつての彼の親友であるDIOが遺した計画である「天国に行く方法」の条件のうち、刑務所内で実行可能なものを全て済ませてしまう。そして神父は最後の条件である「天国が実現される時と場所」を目指して刑務所を出て行く。

これに対して徐倫は、ジョースターの血統としてDIOとプッチの計画を阻止するため、仲間のエルメェス・コステロやエンポリオ少年らとともにプッチ神父を追って脱獄する。

この徐倫の脱獄は、警察情報などを通じて財団もすぐ知ることができたはずであり、逃亡を手助けするために徐倫に接触しようとしたはずである。ただ警察やFBIに見つからないよう移動する徐倫は、当然財団にも見つけることは難しく、また徐倫が財団への電話連絡もすぐには行わなかったため、この時点での接触はできなかった。

またこの時点での財団には徐倫が何のために脱獄したかはわからず、数日前に刑務所を出たプッチ神父がホワイトスネイクの本体であることも知る由はなかった。

2012年3月中旬:創作物のキャラクターが世界中で現実化する「ファンタジー・ヒーロー」事件に対処

「天国の場所」であるケープカナベラル・ケネディ・宇宙センターを目指すプッチ神父のもとに、運命の導きでDIOの3人の息子が集う。そしてその1人であるウンガロが、神父との出会いで目覚めたスタンド「ボヘミアン・ラプソディー」を発動。その結果、人類がこれまでの歴史で生み出してきたあらゆる創作物のキャラクターが、世界各地で現実化して大混乱が引き起こされる。

絵画「ヴィーナスの誕生」から現実世界に出てきたヴィーナス

世界中で同時多発的に起こったこの現象に対して、財団の本部と各地の支部は、当然ながら緊急の会議を行い対策を協議したはずである。

ただしここまで規模が大きすぎると、財団が持つ超常現象へのノウハウをもってしてもおそらく何もできることはなく、可能だったのはせいぜい財団の表の顔である慈善活動による、物理的被害に対する救助活動ぐらいだったと思われる(例えば財団の支部の1つがある東京都では、「北斗の拳」のラオウとケンシロウが現実化して高層ビル群が破壊されていた)。

ラオウとケンシロウの戦いで破壊された高層ビル群

なおこの事件は、徐倫の後を追って脱獄したウェザー・リポートとナルシソ・アナスイが解決したため、1時間ほどで終息する。

エンポリオ少年から「承太郎の記憶DISC」を受け取る

徐倫たちがDIOの息子の1人リキエルに攻撃されるも撃退する。そしてリキエルの携帯電話を手に入れた徐倫は、それをエンポリオ少年に渡し、自分の代わりに財団への連絡と「承太郎の記憶DISC」の引き渡しを行うように頼む。

徐倫がエンポリオにすべてを任せたのには理由がある。まず徐倫自身が財団と電話で通話すると、警察やFBIの盗聴に引っかかるかもしれない。またもし刑務所側が(空条承太郎の交友関係やサヴェジ・ガーデン作戦の際の電話から)財団と徐倫に関係があることに気づき、その情報を警察やFBIに渡していた場合、それらの組織が財団の動きをマークしている可能性がある。この場合徐倫自身がDISCの引き渡し場所に行くのも危険である。

これに対して通話と引き渡しを行うのが、刑務所側に存在を知られていないエンポリオ少年であれば、上記の心配はないわけである。

そしてエンポリオは、DIOの息子の1人ヴェルサスの妨害などで少し手間取りはしたものの、無事財団の者にDISCを引き渡す。

なおこの際にエンポリオは財団に、財団が知らない情報すなわち、承太郎から記憶とスタンドを奪った敵が刑務所教戒師のエンリコ・プッチという男であること、そして彼がDIOの遺した計画を実行するためケープカナベラルを目指していることなどを伝えたはずである。

2012年3月21日:半径3kmの重力異常を起こしているケネディ宇宙センターの中心域に承太郎とエルメェスを送り込む

「天国の場所」であるケープカナベラル・ケネディ宇宙センターに到着し、1日半後の「天国の時」を待つプッチ神父のスタンドが、「C-MOON」という新たな姿へ変化する。そしてこのスタンドの能力により、プッチ神父を中心とした半径3kmの領域に、中心から円周に向かって水平に物体が落下する「重力の異常」が発生する。

重力の異常による水平方向への落下

記憶を取り戻した承太郎とともにケネディ宇宙センターに向かう途上でこのことを知った財団は、半径3kmの中心で行われているであろうプッチ神父と徐倫たちとの戦いの場に承太郎を送り込むため、「銛を砲撃する機械」と、「それを積載しかつ砲撃の反動に耐えられるサイズの飛行機」を調達する。

財団が用意した銛

これらを用意した財団の当初の計画は、おそらく以下のとおりである。まず、銛に可能な限り長いロープを取り付け、これを重力異常の範囲外の上空から、軌道計算したうえで打ち出し、可能な限り中心に近い場所にあるガードレールなどに引っ掛け巻き付ける。そしてそのロープを承太郎が登り、銛の場所まで登り着いたら足場を確保しつつ銛付きロープを回収。以降はこの銛付きロープをスタープラチナで投げて巻き付けながらさらに中心を目指していく、という方法である。

ただ実際には財団はこの計画を実行する前に、重力異常の圏外で徐倫の仲間のエルメェスと合流した結果、彼女のスタンド能力を活用した方法に計画を調整する(彼女は徐倫たちとともにケネディ宇宙センターに向かう途中で重力異常に巻き込まれ、一人だけ落下してしまっていた)。

エルメェスのスタンド「キッス」は「物を2つに増やす」能力を持つ。そして増やされた物は、遠く離してから能力を解除すると、「片方がもう片方に引き寄せられて1つに戻る」性質を持つ。

この能力を踏まえて、まずはエルメェスがロープを付けていない銛をキッスで2つに増やす。次に財団が2つの銛の片方を砲撃し、可能な限り中心に近い地面に撃ち込む。次にもう片方の銛にエルメェスと承太郎が捕まって能力を解除し、銛を撃ち込んだ場所まで2人を一気に引っ張り上げる。ちなみにキッスによるこの「引っ張る力」は、普通の力学的なそれとは異なり、エルメェスと承太郎を引っ張り上げる反作用で地面側の銛が抜け落ちる心配はない。後は同じように、再度キッスで増やした銛をスタープラチナで投げながらさらに中心を目指していく。

これにより承太郎とエルメェスは、本来の計画よりはるかに短時間で、徐倫たちとプッチ神父が戦っている場所にたどり着く。

2012年3月21日〜:生物を除いた全宇宙の時間が加速する現象への対処

徐倫たちに承太郎とエルメェスが加勢したことで、プッチ神父が絶体絶命の窮地に追い詰められる。しかしそこでプッチ神父が「天国の時」の条件を別の形で満たし、「C-MOON」が「メイド・イン・ヘブン」という最終形態へ進化する。

そしてこのスタンドの能力により、地球上の全生物に対して全宇宙の非生物の時間が速く進み、物体の動きや天体の運行速度がどんどん速まっていくという「時間の加速」が起こる。これによって、例えば加速した自動車をコントロールできない運転手が事故を起こすなど、甚大な被害が世界中で引き起こされる。

「時間の加速」の中で多重衝突事故を起こす車

これに対して財団は、数日前に起こったファンタジー・ヒーロー事件のときと同じく、緊急の会議を行い対策を協議したはずである。しかしこの事件でも財団に可能だったのは、財団の表の顔である慈善活動による、物理的被害に対する救助活動ぐらいだったと思われる。

6部終了から7部開始まで(2012年〜特異点〜1890年)

「一巡後の世界」への転生

ジョジョ6部の最終決戦で、プッチ神父のスタンド「メイド・イン・ヘブン」が起こした時間加速によって、ジョジョの世界は「宇宙の終わり」まで時間が進む。そして「特異点」なる宇宙の終わりと始まりをつなぐ状態を経て新たな宇宙が誕生し、新たな地球と新たな歴史が始まる。

ジョジョ7部以降の舞台となるこの「一巡後の世界」は、地球の地形や人類の歴史などの大局的なレベルでは、一巡前の世界とほぼ変わりない。しかしそこに生きる個々人レベルでは、ほぼ別物である。このためジョジョ1〜6部の登場人物たちも、そもそも存在しないか、あるいは全く別の人生を歩んだ人物として存在している。

これを踏まえて「スピードワゴン財団」という団体は一巡後の世界にも存在する。しかしその様相は一巡前のそれとは大きく異なる。

一巡前の世界のSPW財団は、本ページの冒頭で説明したとおり、ロバート・E・O・スピードワゴンという男が、ジョジョ1部の主人公ジョナサン・ジョースターの「善性」と「戦い」を引き継ぐ形で設立した。対して一巡後の世界では、財団の設立にジョースター家は何の関係もなく、財団の設立者や設立動機も不明である。

7部以降に作中で示された情報を見る限り、一巡前と一巡後のSPW財団の共通点は、科学の発展のために活動していること、そして超常現象も研究対象としていることぐらいである。

7部:スティール・ボール・ラン(一巡後の世界の1890年〜1891年)

1888年〜1891年:スピードワゴン石油会社が「スティール・ボール・ラン」レースに出資

興行師スティーブン・スティールが1888年に企画し、1890年9月25日から1891年1月19日にかけて開催された、アメリカ大陸を馬で横断する長距離サバイバルレース「スティール・ボール・ラン」。ジョジョ7部のダブル主人公であるジャイロ・ツェペリとジョニィ・ジョースターなど、3600名以上が参加したこのレースには、20社を超える大企業がスポンサーとして名を連ねている。

そしてそのスポンサー企業の1つとして、7部1話で「スピードワゴン石油会社」の名が挙げられている。一巡前の世界でロバート・E・O・スピードワゴンが油田を掘り当て石油会社を設立したのは20世紀初頭つまり1901年以降なので、一巡後の世界ではそれが10年以上早まっていることになる。

なお7部作中でスピードワゴン絡みの情報があるのは7部1話のこの石油会社の方だけであり、「スピードワゴン財団」の方の名は出てこない。