トト神
THOTH:書物の神
Sephirah-No.7
本体名:ボインゴ
内気な少年、オインゴの弟
能力:近い未来に100%起こる出来事をマンガにして描き出す
スタンド形成法 | 射程距離 | パワー |
---|---|---|
なし | − | − |
当ページの要点
- ジョジョ3部に登場するスタンドは全て、「生命の樹」と呼ばれる図形に関係している。
- エジプト9栄神のカードのNo.7であるトト神は、生命の樹のセフィラのNo.7に配置される。
- トトのセフィラは成長するものが、今いる分野内で起こる劇的な状況に直面した状態を表す。
- トト神は近い未来に必ず起こる劇的な出来事を事前に「予知」できる能力を持つ。
セフィラ解説
ジョジョ3部に登場する22枚の「タロットカード」は、占いの道具としてよく知られ、それぞれのカードにはさまざまな解釈が与えられている。そしてその解釈法の1つに、『生命の樹』と呼ばれる図像を絡めたものがある。生命の樹とは、宇宙・生命・人類・個人など、この世界の中で進化・成長する全てのものが、成長する際に辿る変化の共通性を図像化したものである。「セフィロトの樹」とも呼ばれるその図は、「状態」を表す10個の円形「セフィラ」と、円形同士を結び「変化」を表す22本の小径「パス」から成り、タロットはパスの方に対応している。
一方、ジョジョ3部後半には「エジプト9栄神のカード」なるものが登場し、こちらはセフィラに対応する。そしてセフィラの7番目である「トト」は、「混乱せしもの」を暗示するカードである(なお「トト」という名称は、セフィラをエジプト神話の神々に対応させたジョジョでの独自名称であり、正式なセフィラ名は「ネツァク」(Netzach:勝利)である)。
成長体が今いる分野内で起こり得るさまざまな状況に対処できるようになるためには、当然のことだがまず「さまざまな状況」が起こらねばならない。そしてそれが起こっている状態を表すのがトトのセフィラである。
ただし成長体がその状況に直面して、最初から上手く対処できるかは未知数であり、困難な状況であるほど失敗の確率は高くなる。そして対処に失敗した場合、成長体は自身または周囲のものに相応の被害を与えてしまう。
しかしそれでも人は失敗を恐れず困難に挑まねばならない。「失敗は成功の母」と言われるように、失敗は成長する上で避けられない過程である。人はさまざまな状況に直面し、失敗の中で少しずつ経験を積むことで、それらに上手く対処できる技術を勝ち取っていく。そしてこの「制御」によって成長体は、「卓越せしもの」を暗示する8番目のセフィラ「アヌビス」へと変化することになる。
スタンド解説
内気な少年ボインゴを本体とするスタンド。その能力は、彼の周囲で起こる特筆すべき出来事を事前に知ることができる「未来予知」である。その的中率は100%であり、一度も外れたことはない。
予知が示す内容は、「ボインゴが何もしなくても勝手に起こること」であったり「ボインゴとその仲間がこう行動すればこういう結果が起こる」というものであったりする。そして後者の場合には内気なボインゴではなく、ボインゴと常にいっしょにいる兄、オインゴがそれを実行する。
予知された出来事は、ボインゴが常に持ち歩く白紙の本のページに「マンガ」の形で浮かび上がる。その絵柄は極度に戯画化された非常に特異なものである(またこの本の表紙には「オインゴとボインゴ兄弟 大冒険」というタイトルが書かれている)。
この「マンガが浮かび上がる」現象はある種の「念写」のようなものであり、本自体は予知を描き出す道具として用意されたものに過ぎない。このため仮にこの本が破壊されても本体にダメージはない。また仮に予知の出たページを破って燃やそうとも、その予知が必ず起こることに変わりはない。
そしてこの的中率100%の予知能力の原理は、物質世界に接して存在する「霊的世界」、その領域から情報を引き出すことにある。
「可能性」が眠る世界
霊的な力が存在するジョジョの世界には、物質世界に対して「霊的な世界」が接して存在している。この領域には「物質ではない」さまざまなものが内包されており、「可能性」もその1つである。
「可能性」とはつまりは、物質世界で未来に実現するかもしれない出来事のことである。霊的世界に存在する可能性は、その力に応じて物質世界に影響を及ぼし、自身を実現させようとする性質を持つ。そしてそれが実際に実現されるかどうかは、その可能性の力だけでなく、物質世界の「物」や「人」がその可能性にどこまで従い、あるいはどこまで抗えるかによって決まる。
例えばどこかの海で「嵐」が起こったとする。この場合その可能性は霊的世界に数日前から力強く存在する。これは嵐が起こる要因は(人には予測できなくとも)数日前にはすでに揃っており、霊的世界の可能性はそれによって強まり、一方物質世界の大気や水はその実現に逆らうことがないからである。
またこの嵐に一隻の「船」が巻き込まれたとする。もし船の性能が良く船員の腕も確かなら、船は高い確率で嵐を乗り切れるだろう。しかし逆であれば船は高い確率で沈没するだろう。これらもまた霊的世界に可能性として存在し、前者または後者の性質が強いほどその可能性は力強くなる。
そして霊的世界に無数にある可能性の中で、特に力が強く100%実現するようなものは、一般に「運命」と呼ばれる。
スタンド解説(2)
ボインゴは前述したとおり極端に内気な少年である。しかしそれは同時に「感受性」の並外れた強さにつながっている。それゆえに彼は、物質世界に先んじて霊的世界で決定づけられた「運命」を強く受信できるスタンド能力を獲得する。そして受信された情報は、波が砂浜に紋様を描くように、白紙のページにマンガとして描き出される(なおマンガの絵柄が極度に戯画化されているのは、物質世界の「人」や「物」に対する、「霊的世界での姿」や「ボインゴの心象」が反映された結果と思われる)。
そして予知の的中率が100%であるのはおそらく、「運命」ほどの強い出来事でなければ、マンガを描き出せるほど強く霊的世界から受信できないためである。つまりトト神は「予知したことを100%起こす」能力ではなく、「100%起こることしか予知できない」能力なのである。
この性質上トト神の予知は、何かの出来事を予知して描く際に、100%確定しきれなかった細部までは描かない。そして「描かれたこと」は決して変えられないが、「描かれなかったこと」には対処可能である。
例えば予知が「事故に遭ったボインゴ」を示せばそれはどうあがいても避けられない。しかし予知が「ボインゴの乗ろうとしていた乗り物の事故」を示すだけなら、ボインゴはそれを回避できるわけである。
これはトト神の予知を使って敵を攻撃する場合でも同じである。例えば敵に毒を飲ませるところまで予知できても、飲み込むところまで描かれなければ吐き出される可能性が残ることになる。
またトト神がどれだけ先までの未来を予知できるかは予知する出来事によって変わり、基本的に他者の行動が複雑に絡む出来事では、ごく短時間先までしか予知できない。その時間は作中の描写を見る限りせいぜい数10分程度のようである。一方天気などの予知であればおそらく、もっと長時間前から予知可能なはずである。
なお、ボインゴの周囲にあるものから100%実現可能な出来事だけを示せるトト神の能力は、ボインゴの仲間の行動力と観察力が高いほど、劇的な未来を描き出せるようになる。
ボインゴは作中で2回ジョースター一行に挑み、1回目は前述したボインゴの兄にして「クヌム神」のスタンド使いオインゴと、2回目は「エンペラー」のスタンド使いホル・ホースとコンビを組んでいる。そして彼らはどちらも上記の条件をよく満たす者である(ちなみに「クヌム神」は「周囲にある材料との混合」の暗示を持ち、また「エンペラー」のタロットは「周囲にある材料への接近」の暗示を持っている)。
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