アヌビス神
ANUBIS:冥府の神
Sephirah-No.8
本体名:キャラバン・サライ
500年前の刀鍛冶、すでに死去
能力:邪悪な魂を宿した妖刀
スタンド形成法 | 射程距離 | パワー |
---|---|---|
封念発魂体 | − | 高(憑依時) |
当ページの要点
- ジョジョ3部に登場するスタンドは全て、「生命の樹」と呼ばれる図形に関係している。
- エジプト9栄神のカードのNo.8であるアヌビス神は、生命の樹のセフィラのNo.8に配置される。
- アヌビスのセフィラは成長するものが、今いる分野内で有効な「技術」に卓越した状態を表す。
- 妖刀アヌビス神は自分を手にした者に達人級の剣技を与える能力を持つ。
セフィラ解説
ジョジョ3部に登場する22枚の「タロットカード」は、占いの道具としてよく知られ、それぞれのカードにはさまざまな解釈が与えられている。そしてその解釈法の1つに、『生命の樹』と呼ばれる図像を絡めたものがある。生命の樹とは、宇宙・生命・人類・個人など、この世界の中で進化・成長する全てのものが、成長する際に辿る変化の共通性を図像化したものである。「セフィロトの樹」とも呼ばれるその図は、「状態」を表す10個の円形「セフィラ」と、円形同士を結び「変化」を表す22本の小径「パス」から成り、タロットはパスの方に対応している。
一方、ジョジョ3部後半には「エジプト9栄神のカード」なるものが登場し、こちらはセフィラに対応する。そしてセフィラの8番目である「アヌビス」は、「卓越せしもの」を暗示するカードである(なお「アヌビス」という名称は、セフィラをエジプト神話の神々に対応させたジョジョでの独自名称であり、正式なセフィラ名は「ホド」(Hod:栄光)である)。
ある分野内での成長体の成長の度合いは、そこで起こるさまざまな出来事に対して、いかに自分が有利になるよう対応できるかで測れる。分野内の荒波に揉まれ成功と失敗を繰り返すうちに成長体は、それぞれの出来事に対して最も成功確率の高い対応を、理屈や感覚で身に付けていく。またそれら対応は、複数を適切に組み合わせて行うことで1つの「技術」にもなる。話術の達人が言葉選び・声の抑揚・表情・身振りによって巧みに相手の心を誘導するように、武術の達人が洗練された動きで人間とは思えないパワーやスピードを見せることがあるように、高度に発達した技術は魔法のように、成長体の力を見かけ上何倍にも増大させる。
これら「技術」と呼ばれるものの本質は、「不要なものは避け、必要なものには作用する」ことにある。基本的にはどんな複雑な技術もこの原理を大量に組み合わせることで実現される。例えば時計職人が作る機械時計は、ケースで不純物の侵入を防ぎ、小さなケース内で無数の歯車を、必要なところでは噛み合わせ、不要なところでは干渉しないよう整然と配置することで、正確に安定して時を刻むという技術を実現している。
成長体がある分野での技術を限界まで極めるには、その分野内の枝葉末節なことへの追求が不可欠である。草の根を分ける追求は技術をより完璧なものとし、また深い追求により見えてくる真理もある。しかしこのような技術の追求は、成長体を縛る足かせにもなる。楽器の演奏家が1日の休みで鈍った勘を取り戻すのに数日かかると言われるように、精密な機械ほど故障のリスクが増すように、限界レベルの技術は維持が難しく、それを背負った成長体は良くも悪くもそこで成長の歩みを鈍らせてしまうことになる。
成長体が分野内での成長に煮詰まりを感じ、新たな成長の道を切り拓くことを望むなら、成長体は深い追求によって得た真理や重要なものだけを残して枝葉末節なものを捨て去り、自分を身軽にする必要がある。そしてこの「浄化」によって成長体は、「総括せしもの」を暗示する9番目のセフィラ「アトゥム」へと変化することになる。
スタンド解説
500年前に生きていた刀鍛冶が作り出した一振りの刀に、魂が宿って生まれた「妖刀」のスタンド。その外観は日本刀のような、なだらかに湾曲した細身の刃を持つ片刃剣で、両手持ち可能な長い柄と鍔には中東風の豪華な意匠が施され、刃渡り1mを越える刃はこの世のものとは思えぬ幽玄な輝きを帯びている。またこの刀には、柄や鍔と意匠を合わせた鞘も用意されている。
アヌビス神は「刀」とそれに宿る「邪悪な魂」だけで存在し続ける「本体のいないスタンド」である。その魂は人間並の知能を持つが、その精神の根底は人間とは異なる「刀」としての本能、即ち「人を斬る」ことへの欲求に染まっている。そしてこの魂は、刀である自分を手にした人間の心を侵食して乗っ取り、「狂気の人斬り」へと変える力を持っている。
鞘から抜かれたこの刀を手にした者は、人を斬る目的に洗練されたこの道具の、手に感じる重さや目に映る刃の妖しい美しさによって、「人を斬る欲求」を喚起される。さらにアヌビス神はそれに加えて、テレパシーのように相手の心に自らの魂で語りかけることもできる。語りかけは「言語」だけでなくより抽象的な「概念」や「イメージ」も伝え、それらによってアヌビス神は相手の心を幻惑し巧みに誘い、「人を斬ることしか頭にない」精神状態へと引きずり込む。こうしてその者の精神はアヌビス神と1つになり、その肉体で刀を振るいアヌビス神の目的のため戦わされることになる。
またこのテレパシーからの洗脳は「動物」相手にも使用でき、人間より簡単に心を乗っ取れる。その際にはアヌビス神は、自分の周囲の動物に思念を飛ばし、その動物の本能的欲求を刺激して自分に触らせ、心を乗っ取る。アヌビス神はこの力でネズミなどを操り、刀である自分を運搬させたりしている。
アヌビス神の「刃」は言うまでもなく刀鍛冶が鍛えて作った実体を持つ物質であるが、その刃は元々の切れ味にスタンドのパワーが加わって石をも容易く切り裂き、またスタンド相手にも殺傷力を発揮できる。さらにその刃は実体でありながら、「標的以外の物質や生物を透過できる」という性質を備えている。この性質は「技術」の本質である「不要なものは避け、必要なものには作用する」ことを原理としている。量子力学的な解釈では、ボールを壁に投げると天文学的に低い確率で、ボールの分子が壁の分子に全くぶつからずにすり抜けるという現象が起こり得る。アヌビス神の刃はそれを超越的な技術として容易く実現でき、標的以外の全ての障害物をすり抜けて、壁の向こうや鎧の中の敵の肉体だけを斬れるのである(ただしスタンド体は物質とは勝手が違うのか透過できないようである)。なおこの性質は「刃」それ自体に備わっている性質であるため、刀を持つ者の剣技が稚拙であろうと関係なく使用できる。
またアヌビス神は、自分を誰かに持たせて戦うさなかに、敵のパワー・スピード・技を「記憶」して、それと渡り合えるだけの「剣技」を信じがたい速度で身に付けていく能力も持っている。敵と一度打ち合うごとに上達していく剣技は敵が強いほどにいや増し、刀の使用者に生身の肉体とは思えない魔法のようなパワーとスピードを与える。その上達限界は不明だが、作中では最強のスタンド剣士「シルバーチャリオッツ」および、最強のスタンド拳闘士「スタープラチナ」と互角以上に戦えていた。
これら剣技のパワーやスピードは、刀の使用者の身長・体格・筋肉量その他が優れているほど効果が上がる。このためアヌビス神が操縦者として選ぶ人間は、体の鍛えられた青年男性が望ましい。もっとも操縦者が小さな子供であっても、二撃目を考えない全身全霊の一撃であれば、青年男性による連撃中の一撃を上回る力を出すことは可能である。
アヌビス神が戦いの中で編み出していく剣技は、人間の常識的な上達速度に比べて桁外れに速い。しかし反面、その魔法じみた剣技の記憶や身体感覚は保持が非常に難しく、時間の経過で急速に失われてしまうという特徴がある。その持続時間は作中の時間経過を見る限り、数時間程度ならほとんど失われないが、一日二日も経てばゼロ近くまで戻ってしまうようである。
なお、この刀に宿る魂は、エジプト神話に描かれるアヌビスそっくりな、ジャッカルの頭部を持つ半裸の人間の姿を持っている。ただしこの像はエネルギーを持たない思念体のようなものであり、通常は外に現れることはなく、自分自身である刀を手にして戦ったりもできない。
おそらくこの像はアヌビス神が刀という「道具」であるからこそ存在するものである。「人が持つ道具」であるアヌビス神は刀単体では不完全であり、完全になるには「自分を持つ人間」が不可欠である。その概念が形となって存在するのがこの像なのである。そしてこの像は誰かが刀を手にすると、その体内に入り込んで心を乗っ取り、またこの刀が物理的な性質として有している「高度な技術の力」をその人間の肉体にも霊的な効果として波及させて、剣技の超速上達という力を与える。さらにこの像は、強力なスタンドとの戦いで剣技が極大近くにまで高まるとその余波なのか、刀を持つ者の背後に現れたりもする。
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