タワーオブグレー
TOWER OF GRAY:灰の塔
Tarot-No.16
本体名:グレーフライ
歪んだ性格の老人
能力:人間の舌を食いちぎるクワガタ虫のスタンド
スタンド形成法 | 射程距離 | パワー |
---|---|---|
能力戦闘体 | 数10m以上 | 中 |
当ページの要点
- ジョジョ3部に登場するスタンドは全て、「生命の樹」と呼ばれる図形に関係している。
- タロットのスタンドは生命の樹の図上で「変化」を表すパスに対応する。
- 「塔」のパスは成長するものが、成長に成長を積み重ね高度化していく「累積」を行う。
- タワーオブグレーは人体などにある「高度さゆえの急所」を突いて絶命させる能力を持つ。
タロット解説(読み飛ばし可)
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ジョジョ3部に登場する22枚の「タロットカード」は、占いの道具としてよく知られ、それぞれのカードにはさまざまな解釈が与えられている。そしてその解釈法の1つに、『生命の樹』と呼ばれる図像を絡めたものがある。生命の樹とは、宇宙・生命・人類・個人など、この世界の中で進化・成長する全てのものが、成長する際に辿る変化の共通性を図像化したものである。
「セフィロトの樹」とも呼ばれるその図は、「状態」を表す10個の円形「セフィラ」と、円形同士を結び「変化」を表す22本の小径「パス」から成り、タロットはパスの方に対応している(また3部後半に登場する「エジプト9栄神のカード」はセフィラに対応している)。
そして22枚のタロットのうち、「混乱せしもの」を暗示する「トト」のセフィラと、「卓越せしもの」を暗示する「アヌビス」のセフィラを結ぶ「塔」は、「成果と問題の累積」を暗示するカードである。
成長体が成長するためには、数多の可能性を試行錯誤し、その結果得られた有益な成果を自身に組み込んでいく必要がある。そしてこの成長は一段階で終わるものではなく、成果を組み込んだ状態からさらなる可能性を試行錯誤してその成果をまた組み込み、これを何度も繰り返していくことになる。このような「累積」を行うのが「塔」のパスである。
しかし累積による成長は同時に問題も生む。まず「積み重ねる」形での成長は、建物の増築を繰り返すかのように、既存の部分と新たな部分との間に「不整合」を生む。これは生物の肉体でも同じであり、例えば人間が抱える「腰痛」の問題は、四足歩行で進化してきた肉体構造をそのまま二足歩行に転用したがゆえである。
またあるものが累積によって周囲から「突出」して成長すれば、それは「事故の危険」という問題を生む。例えば塔のような高層建築物は、その突出ゆえに倒壊の危険が増す。また例えば人間の構築したシステムが、人間の頭脳の処理能力を超えて突出しすぎれば、原因不明のトラブルを起こす危険が増す。
これらの問題は、累積の度合いが小さいうちは大した実害はないが、累積を重ねるほどに問題が頻発するようになる。その行き着く先は、問題への対処に追われて成長が完全に停滞するか、あるいは問題が原因で決定的な破滅が引き起こされるかのどちらかである。
そしてこれらの問題を解決する方法はただ一つ、問題を起こす構造やシステムを土台から見直し、大きく作り直すことだけである。その破壊と再生には大きな労力が必要となり、あるいは大きな犠牲を伴うものかもしれない。しかしそれは必要なことであり、適切なタイミングで覚悟を決めて臨むしかないものである。そしてその意志は自分ひいては世界を、さらなる成長に導くだろう。
スタンド解説
タワーオブグレーは、ジョジョの奇妙な冒険第3部「スターダストクルセイダース」の登場人物、グレーフライのスタンドである。
そのスタンド像は、大きく目立つ2本のツノ(大顎)を持つ「クワガタ」虫の姿をしている。その外観は本物のクワガタ虫とあまり変わらないが、体長は20cmほどとかなり大きく、大顎の間の口には肉食動物のような尖った牙が並んでいる。またその羽根には複雑に歪んだ紋様が描かれている。
本体のグレーフライは、長い年月を生きる中で性格が歪み捻くれた老人であり、タワーオブグレーはその「歪みと捻れ」から生まれたスタンドである。このスタンドは彼の精神力が彼の頭部内に生み出す「歪みの力場」によって、彼の口腔内で形作られ、外へと放たれる(ちなみに彼の舌の上面には、クワガタ虫の形を押し付けたような凹みがある)。
タワーオブグレーは、周囲の物質・生物・スタンドが大なり小なり有する「構造的な歪み」を利用して、空間内に強い「歪みの力場」を作り出せる能力を持っている。例えば空を飛ぶことで一日もかからずに地球の裏側まで行ける「飛行機」や、狭い土地に多くの人間を収容できる「高層ビル」は、その利便性が高いほど多くの歪みを抱え、些細なミスから大惨事を起こす可能性を孕んでいる。またこれは生物の肉体でも同じであり、複雑な生物は単純な生物より多くの歪みを抱えている。
タワーオブグレーが作り出す「歪みの力場」は、周囲の物体が有する「歪みの総量」が大きいほど強くなる。また歪みの力場が強くなるほどにタワーオブグレー自体のパワーも強くなる。さらにタワーオブグレーの射程距離は、本来は数10mほどと考えられるが、歪みの力場内ではその範囲内に拡張される。
ちなみにこの「歪みの力場」は、力場内にいる生物に鈍くも強い精神負荷を与え、スタンドへの抵抗力を持つスタンド使い以外は強い眠気に襲われる。このため作中でタワーオブグレーが活動した旅客機内の乗客は、ジョースター一行を除いて軒並み眠りに落ち、戦いの喧騒の中でも目を覚ますことはなかった。
歪みの力場の中でタワーオブグレーは、防御と攻撃のそれぞれで特徴的な性質を発揮できる。まず防御においてこのスタンドは、異常な速さでの飛行を可能としている。そのスピードはスタープラチナの両手での連打を楽々とかわし切るほどである。
このスピードは、本体グレーフライの思考速度や反射神経によるものではなく、歪みの力場を利用した自動的なものである。タワーオブグレーの胴体と羽は歪みの力場の中で、木の葉が空気のわずかな圧力で舞い動くように、歪みを回避するように動く性質を備えている。そして歪みの力場の中で銃弾が発射されたり、スタンドの攻撃が繰り出されたりすれば、それは水面に立つ波紋のように、力場の中に強い歪みを生む。
この結果タワーオブグレーは、それらの動きがどれだけ速かろうと、それらを自動的に回避できる。このため敵スタンドは、単純な手法ではこのスタンドに攻撃を当てることは決してできない。
またタワーオブグレーはこの回避飛行以外に、数m離れた場所へと目にも留まらぬスピードで移動することもできる。これはおそらく、周囲にある物質・生物・スタンドのうち、どの「歪みの力場」により強く感応するかを選択することで、選択対象の歪みが弱い場所へと瞬時に移動していると考えられる。
タワーオブグレーは攻撃においては、対象の構造的・システム的な「急所」を感知し、それを突くことができる。この急所攻撃には、タワーオブグレーの口内から伸び出る「タワーニードル(塔針)」と呼ばれる器官が使用される。これは直径1cmほどの棒状の器官で、小石大の不揃いな塊がまっすぐ繋がった形状をしており、先端の塊は割れ開いて、尖った針が突き出ている。そしてこの器官はタワーオブグレーのスタンド体の構造に深く関係している。
タワーオブグレーのスタンド体はおそらく、前方に向かうほど歪みの力が強くなり、その結果前方でスタンド体が歪みに耐えきれずに真っ二つに裂け、その姿で安定している(さながら落雷で真っ二つに裂けた木のように)。このスタンドがクワガタのような大顎を持つのはそのためである。そして大顎の間を伸び出るタワーニードルは、スタンド体よりさらに強い歪みの力を数秒の短時間だけ力任せに生み出し、維持することで形作られている。
そしてこのように作り出されたタワーニードルは、他の物体の急所に電磁石のように強力に引っ張られる性質を持っている。タワーオブグレーはこの性質を使って、物体の急所をこの針で素早くまっすぐに刺し貫くのである(なおスタンドエネルギーを一時的に固めて作られるタワーニードルは使い捨ての器官であり、これが破壊されても本体へのダメージはない)。
タワーオブグレーが「人間」または「人型スタンド」を攻撃する際には、タワーニードルはその「舌」を強力に指し示し、刺し貫こうとする。人体に数ある急所の中でなぜ舌が選ばれるのかは不明だが、理由として考えられるのは、人体では心臓や肺のある胴体より頭部のほうが歪みの力場が強いこと、視覚のある眼窩は口内を狙うより反射的に避けられる可能性が高いこと、タワーオブグレー自身の発生箇所が本体の口腔内であることなど、これらの理由の複合と推測される(また人体の複数の急所に同時に引っ張られるとタワーニードルの勢いが鈍ってしまうため、どこであれ急所の一つを選んで集中したほうが好ましいという理由もある)。
そして首尾よく舌を貫くとタワーオブグレーは、そのまま自身も口内に突入して大顎で舌を根元から切り取り、相手を絶命させる。
しかしその一方で、もしタワーオブグレーが敵スタンドの攻撃で破壊されれば、そのダメージは呪詛返しのように本体の「頭部」に歪みの力を逆流させ、舌と額が真っ二つに裂けて絶命することになる。
ところで本体のグレーフライはアヴドゥルが語っていたとおり、事故に見せかけてビル火災・飛行機事故・列車事故などを起こし、火事場泥棒を行う極悪人であるが、これもまたタワーオブグレーの急所攻撃を「建造物」や「乗り物」に対して使用して行っている。
つまりグレーフライが「高層ビル」を攻撃対象にすれば、タワーオブグレーはビル内の急所である保安システムなどを破壊して、さらに火が出やすく燃え広がりやすいところに火種を起こしてビル火災を起こせる。また「飛行機」を攻撃対象にすれば、タワーオブグレーは飛行機の急所であるパイロットを殺害・自動操縦装置を破壊して墜落事故を引き起こせる。
そして本体のグレーフライは離れた場所で事故を眺め、危険がなくなったタイミングで事故現場にやってきて、金目の物を盗むわけである。
ただしグレーフライが作中でジョースター一行を襲ったときの行動は、上記の理屈では説明がつかない。グレーフライはジョースター一行が乗った旅客機に自らも乗り、ジョースターたちに直接攻撃を仕掛ける前に、旅客機のパイロットを殺し自動操縦装置も破壊していた。つまりこの状況では、首尾よくジョースターたちを殺せても、自分も旅客機の墜落で死んでしまう可能性が高い。
そして彼がそうした理由は、彼が「DIO」という男に心酔しており、自分の命をかけてDIOの敵であるジョースター一行を全滅させようとしたからである。
「歪み」を感知することに長けたグレーフライは、自分自身の心と同様この「世界」にも、複雑に絡み合って延々と解消されることのない、種々様々な歪みを感知し、それゆえに世界が停滞していることを感じ取っていた。そして彼は自分と世界とを呪い、停滞した世界への破壊工作をテロリストのように行いながら生きてきた。
そんな彼にとって「DIO」という男は、世界を支配できるほどの強大な能力を持ち、人を超えた理のもとに世界を破壊の後に再生すると確信できる救世主であった。ゆえに彼はDIOが使う洗脳装置である「肉の芽」を埋め込まれていないにもかかわらず、命を賭してジョースター一行と戦ったのである。
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