ハーミットパープル HERMIT PURPLE:隠者の紫
Tarot-No.9

2017/08/25改訂

本体名:ジョセフ・ジョースター

ジョジョ2部主人公、プロフィールJC8巻P102、
3部時点では68歳、不動産会社社長

能力:遠く離れた場所にあるものを「念写」する

スタンド形成法射程距離パワー
能力顕現体 10m程

当ページの要点

  • ジョジョ3部に登場するスタンドは全て、「生命の樹」と呼ばれる図形に関係している。
  • タロットのスタンドは生命の樹の図上で「変化」を表すパスに対応する。
  • 「隠者」のパスは成長するものが、材料要素の中から使うものを選んで引き寄せる「選出」を行う。
  • ハーミットパープルはジョセフが選んだ対象の情報をラジオのように受信し、遠く離れた対象を「念写」できる。

タロット解説

ジョジョ3部に登場する22枚の「タロットカード」は、占いの道具としてよく知られ、それぞれのカードにはさまざまな解釈が与えられている。そしてその解釈法の1つに、『生命の樹』と呼ばれる図像を絡めたものがある。生命の樹とは、宇宙・生命・人類・個人など、この世界の中で進化・成長する全てのものが、成長する際に辿る変化の共通性を図像化したものである。「セフィロトの樹」とも呼ばれるその図は、「状態」を表す10個の円形「セフィラ」と、円形同士を結び「変化」を表す22本の小径「パス」から成り、タロットはパスの方に対応している。

そして22枚のタロットのうち、「探索せしもの」を暗示する「バステト」のセフィラと、「混合せしもの」を暗示する「クヌム」のセフィラを結ぶ「隠者」は、「材料要素の選出」を暗示するカードである。

成長体が今いる分野内にある材料要素を一通り探し出した後になすべきことは、それらの中から1つまたは複数個の材料を選び出し、自分に引き寄せることである。これによって成長体は、選んだ材料要素だけに集中して成果を得ることが可能となる。

ただ引き寄せられた材料要素はこの時点ではまだ、成長体にしっかりくっつけられていない不安定な状態にあり、そのままでは勉強に集中できない子供のようにすぐに剥がれてしまう。そしてこれを安定化するための材料要素の「連結」は、生命の樹の中心線を挟んで反対側に位置する「正義」のパスで行われることになる。

「隠者」による材料要素の選出には、主に2つの目的がある。1つは上述のとおり、分野内の雑多な要素のうち特定のものだけに集中すること。もう1つは常識から外れた「未知なる可能性」を試すことである。化学者が無数の物質の中からさまざまな組み合わせをあらゆる環境で試して新物質を発見するように、後者の目的においては固定観念をいかに打ち破るかが重要となる。

例えば動物の子供ははたから見ると意味不明な動作で遊ぶことがよくあるが、そこから彼らは多くのことを学び取っている。またカラスなどの知能が高い動物はエサを取るにあたって、周りの道具をさまざまに加工したり、さまざまな順番で使用したりして正解を見つけ出せる。新たな可能性を見つけ出す「発想力」と、それを実行に移す「行動力」が、彼らを数多の失敗の末に成功に導いているのである。

そして人という地球上で最も自由な生物にとって、未知なる可能性の追求は一生涯続けることも可能な営みである。歩みを止めない限り人の成長が止まることはない。そしてその意志は自分ひいては世界を、さらなる成長に導くだろう。

スタンド解説

本体ジョセフの手から生えるように現れる、トゲの生えたツタ状の「イバラ」のスタンド。遠く離れた場所の情報を、カメラなどを使って写し出す「念写」の能力を持つ。

この「イバラ」の形状は、テレビのアンテナが電波を受信するように遠くの物体から発せられる微弱な信号を集める「受信装置」として働き、また受信した情報を物質に描き出す「描像装置」としても働く。そしてその「信号」とは物理的なものではなく、ジョジョの世界のあらゆる物体に宿る霊的粒子、「知性」という力から発せられるものである。

知性の記憶と情報の世界

ジョジョの世界に存在する「知性」という力の実体は、素粒子よりも遥かに小さい粒子である。この「知性粒子」は原子や素粒子など物質の力場に囚われて、それら1個1個の内に無数に宿る。これにより「知性」という力は、それが宿った物質の素材や構造から、生物の思念といった情報までをも、細大漏らさず記憶する。これは我々が脳細胞のシナプスの無数の集まりによって、「物」に関することから「概念」に関することまで、極めて複雑な情報を記憶できているのと同じ理屈である。

そしてこれら物体に宿る知性は、自身が記憶している知性情報を周囲の空間に「発信」したり、他の物体から発信された知性情報を「受信」したりもする。そしてこの情報の送受信は、物質世界で行われるだけだけでなく、より高次元の霊的領域、「情報」によってのみ構築される世界でも行われる。

霊的領域の1つである「情報の世界」では、あらゆる情報が「相関性」によって整然と配置され、似通った情報ほど近くに、無関係な情報ほど遠くに配置される。そしてこの領域を利用できるスタンド能力では、物理的な距離を超越した情報のやり取りが可能となる。

スタンド解説(2)

ハーミットパープルは、ジョセフの祖父であるジョナサン・ジョースターの肉体を乗っ取った吸血鬼DIOに目覚めたスタンド能力が、「知性の信号」としてジョセフに伝わり、目覚めたスタンドである。その能力は「ジョースターの血の繋がり」がそのままスタンド化したような能力で、初期にはDIOからの信号しか受信できなかった。

だがジョセフは持ち前の器用さでこの能力を使いこなし、DIO以外の信号も幅広く受信できるようになっていく。また初期にはカメラで行っていた念写も、だんだんと使える道具が増えていく(詳しくは後述する能力使用例を参照のこと)。

ハーミットパープルが念写を行うためには、念写しようとする対象と同質の「知性信号」を発する物体が「媒介」として手元に必要となる。イバラのスタンドはこの媒介と「同調」することで、ラジオのチャンネル合わせのように必要な信号のみを選別し、受信することが可能となる。

ハーミットパープルの本来の使用法である「DIO」の念写の際には、同じ「ジョースターの血統」である「ジョセフ自身の肉体」が媒介となる。そして「インスタントカメラ」を用いてDIOを念写した場合、写真にはDIOを1mほどの距離から撮影した画像が写る。それはまるでカメラ自体を現地まで持っていって撮影したかのようである。

念写がこのように適切に行われるのは、ジョセフがこの能力を工夫して使いこなそうとした結果である。本来ジョセフのスタンドでDIOを念写するのは一筋縄ではいかない。DIOからジョセフへと届いてくる信号は、波動のような形なき思念でしかなく、この思念をそのままカメラに流し込んでも特に有意なことは写ってくれない。DIOをカメラで撮ったかのように念写するにはもっと複雑な手法が必要なのである。

そこで試行錯誤の末にジョセフの編み出した念写手法が「カメラを手刀で叩いて壊すこと」である。ジョジョの世界では万物に「知性」という情報粒子が宿っており、カメラ内の知性はカメラの構造を霊的に記憶している。そしてカメラに宿る「霊的なカメラ」は、カメラが破壊されるとその瞬間、構造を保とうとする反発力で力を大きく強める。ジョセフはその瞬間を狙って力の強まった「霊的なカメラ」をDIOのもとに「送信」し、DIOを撮影し、撮影した情報を手元のカメラに「受信」することで、念写を行っている。

「霊的なカメラを送信する」この手法で撮影されたDIOの写真には、念写対象であるDIO以外の背景にある物体(例えば空中を飛んでいるハエ)なども写る。また「霊的なカメラ」で撮影された画像は本物のカメラかそれ以上に精細である。ただしハーミットパープルのパワーでは、「ストロボ」のように強力な光までは送信することはできず、DIOが「闇の中」にいる時にはDIOがやっと写る程度の暗い写真しか撮影できない。

またジョセフはハーミットパープルを使って、DIOの思念を読む「念聴」も行える。そしてこちらの原理は念写とは全く異なる。ジョセフにとってDIOという「他者の思念」は、本来なら異国の言語のように全く解読不能なものである。しかし、DIOからの思念に強く呼応するジョセフの思念を抽出するという手法を用いれば、DIOの思念をジョセフの言葉で翻訳できる。これによってジョセフは、DIOが自分たちに対して考えていることを断片的にだが読み取れる。

作中でのジョセフは「テレビ」を使って念聴を行い、テレビの各チャンネルから流れる言葉をつなげて文章を作り、DIOがジョースター一行の中に送り込んだ敵の情報をあいまいではあるが読み取っていた。なおこのとき、ジョセフの思念から作ったその文章は、「DIOから得られた情報をジョセフの視点から語った言葉」に変換されることになる。

そしてこれら念写・念聴には「射程距離」は特になく、ジョセフは地球の裏側からでもDIOの情報を得られる。この理由はハーミットパープルが、ジョジョの世界に存在する霊的領域の1つ、物質世界の空間概念とは全く異なる「情報の世界」を介して情報をやり取りできるからである。

イバラのスタンド体は、初期にはジョセフの手に絡まるように現れて念写に使用されるだけだったが、JC16巻での「エンプレス」戦以降は、ロープのように長く伸ばし出せるようになり、物に巻き付けたり「波紋法のエネルギー」を流すなどして戦いに利用されている。このイバラは「スタープラチナ」のような人型スタンドと違って形成にジョセフの肉体を利用していないため、引きちぎられたりしてもジョセフにダメージを返すことはない。また波紋法のエネルギーの影響なのか、このイバラのロープには人間の体重を支えられるほどの強度がある。

なお作中ではジョセフ以外にDIOも、ハーミットパープルと同じイバラのスタンド像による念写能力を使っている。DIOは前述したとおり「ジョースターの血統の者」に強力な思念を常に発信しており、この強力な送信力がDIOにジョセフと同じ能力を与えたと考えられる。ただしその応用力はジョセフほど幅広くはないようである。

最後に、作中でのジョセフとDIOの念写使用例を全て挙げておく。

◆3部4話「星のアザを持つ男」◆
ジョセフ、インスタントカメラを壊してDIOを念写。
◆3部9話「エジプトへ向かえ」◆
DIO、インスタントカメラでジョセフと承太郎を念写。ちなみにDIOの念写はジョセフと違い、カメラを軽く叩くだけで壊してはいない。この理由は、DIOには元々ジョセフたちに強力な思念を送り込む力があり、この思念に「霊的なカメラ」の情報を乗せて送信すれば、カメラの破壊で情報を強めるジョセフの手法は不要となるからである。
◆3部14話「暗青の月 その1」◆
DIO、ポルナレフの仇である「両右手の男」の姿を、水晶玉の中に映し出す。この念写はDIOがポルナレフに言ったとおり「ポルナレフの心の中が映し出されている」か、あるいはDIOが両右手の男J・ガイルの体細胞か何かを隠し持ってポルナレフを騙したかのどちらかであろう。
◆3部23話「黄の節制 その1」◆
ジョセフ、テレビを使ってDIOの考えを念聴。ちなみにこの念聴は1回目でDIOに気取られて妨害され、テレビを爆破されている。DIOからのこの妨害はおそらく、テレビにノイズのような思念を大量に送り込んで負荷をかけたと考えられる。
◆3部36話「女帝 その4」◆
ジョセフ、アスファルトの地面を媒介に、街の地図とアスファルトの原料であるコールタールがある場所を、灰を使って描き出す。
◆3部47話「恋人 その1」◆
ジョセフ、テレビを使ってエンヤ婆からDIO側の情報を引き出すことを提案(ただし実行には移せなかった)。これはDIOに対して行った念聴と同じく、エンヤから発する思念に強く同調するジョセフの思念を抽出して、エンヤが知っている情報のうち自分たちに関わるものを読み取る手法であろう。さらにエンヤ、ジョセフ、ジョセフの肉体に伝わるDIOの思念の3つを同調させれば、上手く行けばDIOのスタンドの正体もわかる可能性があった。
◆3部49話「恋人 その3」◆
ジョセフ、テレビ画面に自分の脳の中とそこにいる敵スタンド「ラバーズ」を映す。ここではおそらく「ジョセフの眼球」の霊的情報をミクロサイズにして自分の脳内に送信し、目で見たような映像をテレビに映し出していると考えられる。
◆3部90話「「バステト女神」のマライア その5」◆
ジョセフ、地面を媒介に町の地図を砂で描き、さらに自分に仕掛けられた敵スタンド能力「バステト女神」を媒介に、本体マライアの居場所を地図上に移動する小石で示す。
◆3部98話「ダービー・ザ・ギャンブラー その1」◆
ジョセフ、カメラを使ってDIOが潜む館を念写。ここでは初期の念写と違って、DIOからかなり距離を引いた撮影が可能となっている。これがジョセフの成長によるものか、DIOに物理的に近づいた影響で可能になったのかは不明である。
◆3部117話「ダービー・ザ・プレイヤー その4」◆
ジョセフ、テレビ・ゲーム機・ゲームソフトにイカサマや細工が仕込まれていないことをハーミットパープルで確認。ここではおそらく、目の前のゲーム用具を世界中にある同機種のテレビ・ゲーム機・ゲームソフトと照合して、差異がないことを確かめたと考えられる。
◆4部3話「空条承太郎!東方仗助に会う その3」◆
ジョセフ、カメラを使って息子の仗助を念写しようと試みたが失敗していた。この理由は「仗助の肉体に宿る知性情報の特異さ」にあるのだが、ここでは深くは触れない。

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