その場しのぎの達人ジョセフ・ジョースター

■ジョジョの奇妙な冒険第2部「戦闘潮流」の主人公であるジョセフ・ジョースターは、1部の主人公ジョナサン・ジョースターの孫である。彼は見た目こそジョナサンにそっくりだが、性格は紳士的で真面目だったジョナサンとは真逆で、かなりふざけた性格をしている。

■そして彼は、ジョナサンが戦った吸血鬼やゾンビよりはるかに強大な敵、2000年の眠りから目覚めた「柱の男」と呼ばれる4人の敵と、人類の存亡をかけて戦うことになる。

■2部作中でジョセフが見せる戦いぶりは、ジョナサンに比べて実にトリッキーかつ知略的である。彼は闇の生物を蒸発させる「波紋法」のエネルギーはもちろん、機関銃や手榴弾、アメリカンクラッカーや手品・奇術のトリックから、口車まで何でも使って戦う。また彼は優れた観察眼も備えており、時にはシャーロック・ホームズばりの推理力を見せたりもする。

■これらジョセフの戦い方の根幹にあるのは、あらゆる手段を駆使して「その場の流れを支配する」ことである。ジョセフは事前に用意しておいた道具やその場にあるものを最大限活用して、「策を講じる」ことを戦いの主眼に置いている。これらによって場の支配が完了すれば、ジョセフがエシディシに語った兵法書「孫子」の言葉どおり、「勝負は戦う前にすでに決する」のである。

■またジョセフは戦いの最後の手段として「逃げる」こともある。これはつまりは、ジョセフが今いる場所の流れを最大限支配しても「勝ちの目」が無いときに、場所を変えて仕切り直すための戦法である。

■さらにジョセフは作中でちょくちょく、「敵の次のセリフ」を前もって言い当てるという芸当を見せている。単純な推理力だけでは不可能な、もはや未来予知ともいえるこの芸当には、ジョジョの世界に作用する「霊的な力」が関係している。

■ジョジョの世界において「運命」を知る霊的な力は、ジョジョ1部での老師トンペティの予言や、ディオ・ブランドーが説いた「神の筋書き」によって示されている。トンペティやディオのそれは世界全体に渡る大局的なものであり、また彼ら自身はそれを「知る」ことしかできない。一方でジョセフはそれをもっと小さな範囲、その場限りの局所的なものとして「意図的」に起こせる。つまりジョセフの手練手管による「場を支配する力」が完全になると、敵はその場に流れる運命に自らの言葉すら支配され、ジョセフが予言したとおりの言葉を語ってしまうのである。

■ここで少し話を変える。中国の大河は大局的に見れば西から東へ流れているが、小さく見れば曲がりくねって東から西へ流れている場所もある。それはこの世界の「運命」においても同じである。世界は大局的には「大きな流れ」に支配され、その方向へと流れているが、局所的には運命に反した出来事も起こりうる。

■人類の敵である「柱の男」は、肉体能力から知能に至るまで人類を大きく上回る存在であり、大局的に見れば人間よりも地球の支配者にふさわしい存在といえる。そしてこの仮定が正しいとするなら、世界の運命は彼らが勝利する方向に流れていたはずである。

■しかしジョセフは彼らにはない「小賢しさ」を駆使して「戦いの場の流れ」を支配し、局所的に運命の潮流をねじ曲げて、彼らを次々打ち破っていく。

■ここでのジョセフの戦い方はある意味「邪道」である。スポーツの試合でルールに定められていない方面に注力して勝とうとする戦法が歓迎されないように、ジョセフの戦い方も正々堂々には程遠い。しかしそれでもジョセフは自分を圧倒的に上回る種を相手に、人として(そして少年漫画の主人公として)許される範囲を保ちながら、「弱さゆえの工夫」にこそ人類の強みがあるかのように戦っていく。(またジョセフはローマ地下でワムウから逃げた時のように、邪道によってヒーローの資格を示したりもする) 

■かつて地球は恐竜という大型生物に支配されており、人間の祖先となる哺乳類はネズミくらいのサイズで逃げ回りながら生きていた。しかしある日地球に巨大隕石が落ちて、恐竜は滅び、哺乳類は生き残った。人類の誕生につながるこの出来事は紛うことなきイレギュラーな棚ぼたの勝利であり、そして消化不良な決着ともいえる。

■一方ジョセフは「柱の男」がさらに進化した究極生命体カーズとの最終決戦で、内なる「生命の大車輪」の本能と直感に導かれて勝ちを拾う。それはおそらく人類が「正道」によって運命に選ばれ、地球の生命進化の担い手として肯定されたことを示すものである。そして邪道ギリギリであり続けたジョセフの活躍によってジョジョの世界は、次なる「スタンドの時代」へと歩を進めることになる。

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