エアロスミス AEROSMITH

2023/02/09改訂

本体名:ナランチャ・ギルガ
<Arancia:オレンジ>

プロフィールJC62巻P26、エピソードJC50巻P169〜

能力:ラジコンサイズの戦闘機型スタンド

スタンド形成法射程距離パワー射程・パワー増加法
能力戦闘体 100m弱 単化維持力中射程

当ページの要点

  • ジョジョ5部に登場するスタンドのうち「ポルポの矢」で生まれたものは、3部のスタンドと同じく「タロット」に対応している。
  • ただしそれらタロットは通常の解釈ではなく、より邪悪な解釈を与えられている。
  • エアロスミスが対応するタロットは「愚者」であり、その暗示は「悪進入」である。
  • エアロスミスは本体ナランチャの「強い意志でギャングの世界に飛び込んだ」心を反映し、パワフルに飛び回る戦闘機の姿を持つ。

邪悪の樹(読み飛ばし可)

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宇宙・生命・人類・個人など、この世界の中で進化・成長する全てのものが、成長する際に辿る変化の共通性を図像化したものである『生命の樹』。ジョジョ3部のスタンドに深く関係するこの生命の樹には、「邪悪の樹」と呼ばれる上下逆さまに描かれた亜種が存在する。邪悪の樹とは、例えば社会の中で反社会的な組織が成長していくように、成長するものの一部が全体に反した成長を行うさまを表したものである。

「クリフォトの樹」とも呼ばれる邪悪の樹は、「邪な状態」を表す10個の円形「クリファ」と、それを結び「悪しき変化」を表す22本の小径「パス」から成る。そのパスに対応する22枚の「タロットカード」のうち、「邪に遊離せしもの」を暗示するクリファと、「邪に進入せしもの」を暗示するクリファを結ぶ「愚者」は、「開始分野への悪進入」を暗示する。

反社会的な存在の成長は、例えば学生が学校に行かずに遊び歩くなどの小さな変化として始まる。これが邪悪の樹における「悪進入」である。そして邪悪への成長が始まったばかりのこの段階なら、まだまっとうな生き方に引き戻すことは容易い。

しかし邪悪に進入してしまった者たちの中には、普通の社会に居場所を見つけられなかったがゆえに、社会の裏側に落ちこぼれざるを得なかった者も多い。そしてそういう者をただ普通の社会に引き戻しても、さらに傷つきさらに反社会的になって、社会の裏側に舞い戻ってくるだけである。

そういう者にとって、もし社会の裏側にこそ居心地の良い場所があるならば、そこで一時的に身を落ち着けることは、「善」ではないが「必要悪」ではある。

そしてその止り木で彼が、社会の表側で失ってしまった「自信」や「信じる心」を取り戻すことができれば、いつかは社会の表側に力強く羽ばたき戻ることもできるだろう。

そしてこの必要悪は、世界が邪悪に向かうことを防ぐ力の一つとなるだろう。

スタンド解説

エアロスミスは、ジョジョの奇妙な冒険第5部「黄金の風」の登場人物、ナランチャ・ギルガのスタンドである。

ナランチャとエアロスミス

その姿はラジコンサイズの「プロペラ戦闘機」型で、全長は40cmほど。プロペラの回転で空を飛行し、両主翼の機銃で敵を攻撃する。射程距離はリゾット戦での描写から100m弱と考えられる。

エアロスミスの外観はオモチャのようにコミカルで、機首部分は「顔」を思わせるデザインになっている。また、操縦席にはパイロットの人形も乗っている(ちなみにパイロットの名前は、ジョジョ5部連載当時にジャンプ誌上で行われた作者の荒木飛呂彦氏へのQ&Aによると、「スミスさん」だそうである)。

エアロスミス全体図
操縦席の「スミスさん」

ただしこれら、機首の顔や人形には「視覚」はない(理由は後述する)。


本体のナランチャは母親と死別し、父親に相手にされず、家出して学校にも行かなくなり、その果てに悪友に騙されて社会からはじき出された典型的な落ちこぼれである。そうして行き場を失った彼は、壊れた紙飛行機のようにフラフラと漂い、浮浪者のようにゴミを漁りながら生きていた。

しかしそこでナランチャは、ギャングの青年ブチャラティに出会い、どん底の環境から救われる。ブチャラティの目的はナランチャをまっとうな生き方に戻すことだったが、ナランチャは逆にブチャラティへの強い尊敬の念から、彼の舎弟になりたいと強く願う。そしてナランチャはブチャラティが所属するギャング組織の入団試験を受け、スタンド能力を引き出す「矢」に射られる。

ただこの時点でのナランチャはおそらく「スタンド使い」の器ではなかった。彼は人並み外れた才能も個性もない、ありふれた凡人である。しかし「ブチャラティの役に立ちたい」という必死な熱意が、彼の精神力を後押しし、スタンド使いの域へと届かせる。こうしてナランチャは、壊れた紙飛行機のように頼りない心を、パワフルな戦闘機型のスタンドに変えて生み出すことになる。


エアロスミスの機体は、ナランチャの「熱意と勢いのスタンドエネルギー」を外殻で包み込み、そこにさまざまな機械的機構を組み込むことで作り出されている。機体の内部にはスタンドエネルギーを燃焼させて動くエンジンがあり、その動力がプロペラを回転させ、飛行中は常にバイクのようなエンジン音を鳴らしている(ちなみにこのエンジン音はスタンド使い以外には聞こえない)。

エアロスミスは基本的には現実のプロペラ飛行機と同じく、プロペラで空気を掻いて推進し、両主翼で揚力を生み、尾翼で姿勢を安定させて飛行する。ただスタンドであるエアロスミスには「重さ」はないため、現実の飛行機とは違ってその場で静止したり、横方向に移動することも可能である。


エアロスミスにはスタンドエネルギーの燃焼を利用して敵を攻撃する装備として、「機銃」と「爆弾」が備わっている。両主翼の「機銃」は、数秒間に数10発のペースで断続的に銃弾を撃ちまくれる。ただし銃身は翼に固定され、しかも飛行しながら撃つために、正確な狙撃は期待できない(後述する「レーダー」との併用時は例外)。

また機銃の弾丸一発一発の威力は拳銃より低く、人間の腕を貫通しない程度である。ただしエアロスミスが敵に全速で突っ込みながら機銃を撃てば、その「飛行速度」を銃弾の速度に上乗せでき、破壊力は人間の胴体を貫通するほどに上昇する。

エアロスミスの機体底部にくっついている爆弾は、投下されて弾頭が物体に接触すると爆発する。その破壊力は物体の表面を吹き飛ばす程度で爆破半径は1mほどと狭く、敵のよほど近くで爆発させないと大ダメージは与えられない。爆弾は一度使うと無くなってしまうが、1〜2分も経てば自然に再装填されるようである。


戦闘機型のエアロスミスは人型スタンドと同じく、「本体身体との対応でスタンド体に強度とパワーを与えている」スタンドである。例えば両主翼はナランチャの両腕に、機首の顔はナランチャの顔に対応している。

しかしエアロスミスの機首の「目」には「視覚」はない。ナランチャがエアロスミスを操るにあたって、機体に視覚がある方が有利なのは言うまでもない。にもかかわらず視覚がないのは、エアロスミスが「単純で機械的な」スタンドだからである。

人型スタンドが持つ「スタンドの眼球」はかなり複雑な器官であり、単純で機械的なエアロスミスはそれを作り出せなかった。このためエアロスミスの両目は、目を模造したただの飾りにしかなっていない。

またエアロスミスの機体上部に乗っているパイロットの人形にも視覚はない。そしてこの人形はおそらく、ナランチャの「松果体」に関係している。松果体とは人間の脳の根元にある豆粒サイズの器官で、人間の先祖となる生物がまだ水中生活をしていた頃に、頭の上部にあった「頭頂眼」という器官が退化したものである。

つまりこのパイロットの人形は、ナランチャの両目に対応する機首の両目で視覚を得られなかったエアロスミスが、それでも視覚を得ようとして、機体とは別に松果体から作り出したものである。しかしこれでも視覚は得られず、この人形もただの飾りにしかなっていない。一見コミカルなエアロスミスのデザインは、ナランチャの無意識がスタンドに視覚を与えようと足掻いた痕跡なのである。

こうして視覚の獲得に失敗したエアロスミスは、視覚の代わりに「嗅覚によるセンサー」を機械的に作り出して獲得している。ただしエアロスミスが嗅ぎ分けられるのは、スタンドエネルギーまたは物質の燃焼で生じる「二酸化炭素(化学式CO2)」だけである。その理由もまたエアロスミスが「単純なスタンド」であることによる。

例えば十徳ナイフより普通のナイフのほうが作りやすいように、スタンド能力も多機能なほど獲得が難しい。エアロスミスは未熟なナランチャがなんとか作り出せたスタンドであり、その能力はどうしても単機能にならざるをえない。このため、「スタンドエネルギーの燃焼で動く」エアロスミスが作り出した「嗅覚のセンサー」は、「燃焼によって生じる物質」しか嗅ぎ分けられないのである。

ただこの「二酸化炭素限定の嗅覚センサー」は結果として、「物体の燃焼」だけでなく「生物の呼吸」で出る二酸化炭素も探知できる。さらに「物体の燃焼」には、「エアロスミスの機銃で撃った弾痕から上がる硝煙」も含まれる。そしてこれらの性質は、視覚にはない利点をエアロスミスに与えることになる。


機械的に作り出されたエアロスミスの嗅覚センサーは、生物のそれとは少し仕組みが異なる。生物の嗅覚は、空気中を漂う化学物質を鼻の奥の嗅覚細胞でキャッチして匂いを感知する。そしてエアロスミスの嗅覚センサーは、生物的な嗅覚に「レーダー」の仕組みを加えた構造を持つ。レーダーは電波や超音波を放出し、その反射で物体の存在を感知するが、エアロスミスは二酸化炭素から放射される霊的な信号をキャッチすることで二酸化炭素を感知する。

二酸化炭素のレーダーはナランチャの「鼻」に対応するスタンドの部位、つまりエアロスミスのプロペラ辺りに内蔵されている。レーダーは広げた扇子のような、半円型のスキャン範囲を持っている。そしてこれを半円の直線部分を軸に、プロペラに連動して回転させることで、空間をくまなくスキャンする。そうして得られた周囲のCO2の反応は、ナランチャの眼前に浮遊する「モニター」に表示される。

レーダーモニター

正方形のモニター画面は、中心から縦横に伸びる線と二重の同心円で区切られ、そこにCO2反応の「位置」が丸い光点で示され、CO2排出量が多いほど光点も「大きく」なる。当然ながらこの表示自体には「生物の呼吸」と「物体の燃焼」との区別はなく、判別するには反応の「位置と大きさの変化」から推理する必要がある。

レーダーの探知半径は、作中でのナランチャのセリフから最低でも100m以上はある。また探知半径内の特定範囲だけを表示したり、小さすぎるCO2反応を表示しないようにすることもできる。


さらにこのレーダーは、「3次元空間内」のCO2反応を「2次元平面」のモニター上に表示する際に、2種類の表示法を切り替えることができる。

1つ目の表示法は、上空から大地を俯瞰する視点で、モニター上にCO2反応を描画する。この表示法ではモニターの中心点はナランチャまたは機体の位置となり、そこからCO2反応までの「方角」と「距離」が表示される。この表示法はナランチャが周囲を索敵する際に用いられる。

もう1つの表示法は、エアロスミスで敵を攻撃する際に用いられる。そしてこの表示法は少しややこしい。地球の地図を平面に描く図法の1つに、北極を円の中心、南極を円周に描く「円錐図法」というものがある。エアロスミス攻撃時のモニター表示はこれと似ている。具体的には、まずはエアロスミスを包み込む球体を仮想し、球体の表面に星座のように周囲のCO2反応を描く。これを円錐図法で機体の真正面を円の中心、真後ろを円周にして、モニター上に表示するわけである。

エアロスミス攻撃時のモニター表示法(1/2)
エアロスミス攻撃時のモニター表示法(2/2)

この表示法ではCO2反応は、機体正面からの「上下左右への向き」と「角度の大きさ」とが表わされる。これは飛行しながらの攻撃に非常に即している。さらにこの時モニターは、「機銃」に対して「照準」の役割を果たし、CO2反応を「中心」に捉えた瞬間に機銃を撃てば、正確に反応物に命中させることができる。

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