サン SUN:太陽
Tarot-No.19

2016/12/28改訂

本体名:アラビア・ファッツ

小太りの小男

能力:灼熱の陽光を放射する太陽のスタンド

スタンド形成法射程距離パワー射程・パワー増加法
能力戦闘体 100m以上
(本文参照)
単化超力近射程
環境パワー伝達

当ページの要点

  • ジョジョ3部に登場するスタンドは全て、「生命の樹」と呼ばれる図形に関係している。
  • タロットのスタンドは生命の樹の図上で「変化」を表すパスに対応する。
  • 「太陽」のパスは成長するものが、自身を再び力強くまとめ上げる「融和」を行う。
  • サンは本物の太陽に似た、膨大なエネルギーを球体にまとめ上げたスタンドである。

タロット解説

ジョジョ3部に登場する22枚の「タロットカード」は、占いの道具としてよく知られ、それぞれのカードにはさまざまな解釈が与えられている。そしてその解釈法の1つに、『生命の樹』と呼ばれる図像を絡めたものがある。生命の樹とは、宇宙・生命・人類・個人など、この世界の中で進化・成長する全てのものが、成長する際に辿る変化の共通性を図像化したものである。「セフィロトの樹」とも呼ばれるその図は、「状態」を表す10個の円形「セフィラ」と、円形同士を結び「変化」を表す22本の小径「パス」から成り、タロットはパスの方に対応している。

そして22枚のタロットのうち、「卓越せしもの」を暗示する「アヌビス」のセフィラと、「総括せしもの」を暗示する「アトゥム」のセフィラを結ぶ「太陽」は、「構成要素の融和」を暗示するカードである。

生命の樹において「星」のパスの反対側に位置する「太陽」は、「星」で行われる「浄化」への対応として「融和」を行うパスである。不要なものをその身から取り除いた直後の成長体は、ジェンガの塔からブロックを取り除いたかのように隙間が多く、バランスが崩れた状態にある。この状態の成長体を圧縮・再構成して自然な姿に整えること、それが「太陽」の行う「融和」である。

また「星」による浄化が行われた成長体では、捨て去られた要素にこれまで費やされていたエネルギーが、行き場を失って余ることになる。これらの「浮いた」エネルギーを成長体の全身に再配分したり、あるいはラクダのコブのように一部分に貯蔵するのもまた、「太陽」が行う「融和」の一環である。

成長体はこの融和によって、「アヌビス」から「アトゥム」への変化を完了する。アヌビスは成長体が今いる分野内での成長を極めた、1つの完成形というべき状態である。しかしこの状態は成長体を過剰に複雑化させ、成長体は自身の複雑さにリソースを食い尽くされてそれ以上進めない状態にもある。それらの複雑さをある程度放棄することで至るアトゥムは、単純な成長度合いでいえばアヌビスより後退している。しかしそれはさらに大きく前進するために必要な過程なのである。

人は何かを失うとき、失うものが大きいほど生き方の大きな転換を迫られ、立て直しが難しくなる(それは例えば仕事一筋で生きてきた者が定年退職した後の虚無感のようなものである)。そしてそのような者にとって世界は酷く色あせて見えるのだろう。

しかし人が何を失ったとしても、たとえ自分の一部といえるほど大事なものを失ったとしても、後に残ったものこそが「これからの自分」である。また大きな喪失は残された自分の「核」が何であるのかを確認できる機会でもある。身軽になった体で自分の先に広がる可能性を見据えることで、世界は輝きを取り戻し、人は再び力強く瑞々しく進み出せる。そしてその意志は自分ひいては世界を、さらなる成長に導くだろう。

スタンド解説

空高く浮かび、強力な光と熱を放射する「太陽」そのままの姿と力を持つスタンド。その大きさは作中では明らかにされていないが、仮に120mほど離れた場所から見て本物の太陽と同じ大きさ(視野角0.5°)に見えるとした場合、直径は1m強と計算できる。

いわゆる「生命エネルギーの塊」であるスタンドの基本形態は、本体と同じ「人型」である。しかしスタンドは個々の能力によって人型以外の姿にもなり、そしてその姿は必ずしも人型と同じ「複雑な構造」を持つとは限らない。このとき失われた複雑さはスタンドエネルギーへと転換され、複雑さの量に応じてそのスタンドのエネルギー量を増大させる。ただしこうして上乗せされたエネルギーは、そのスタンドに制御できる量までしかそのまま利用することはできない。

また、生命エネルギーの塊であるスタンド体は、「本体」という生命エネルギーの放出源から離れるほどにパワーが落ちていく。これは懐中電灯の光が光源から離れるほどに弱まっていくのと同じ理屈である。一方個々のスタンドには、そのスタンドが存在するために必要なエネルギー量の下限がある。この2つの要素によってスタンド体の「射程距離」は決まり、多くの人型スタンドではその距離は「2m以内」となる。

サンが放射する強力な太陽光は、人型スタンドの構造を単純化するとエネルギーが増すというスタンドの法則により、スタンド体を完全なるエネルギーの一歩手前まで解体し、それを最も単純な立体である球体にまとめることで実現されている。そしてその太陽光は「本体の意志」により放射されているわけではなく、本物の太陽のように勝手に「漏れ出て」いる。膨大なパワーの「制御」と「漏出」が高度にバランスを取って存在するのが、このスタンドの姿であり能力なのである。

そしてこの異常なパワーゆえか、サンの陽光は完全に実体化している。それはつまり、このスタンドが生み出す光はスタンド能力のない一般人にも見ることができ、またその熱はスタンド能力への抵抗力を持つスタンド使いに対しても100%の効果で伝わるということである。ただその反面、この太陽光はスタンドにはほとんど効かず、敵スタンドが太陽光の放出源であるサンに接近しても、耐えがたい眩しさを感じたり膨大な熱でその身を焼かれたりはしない(なお、サンの太陽光の波長成分は、目に眩しいことから可視光線、強い熱を伝えていることから赤外線をそれぞれ大量に含むことは確実だが、紫外線をどれほど含んでいるかは不明である)。

またサンは太陽光とともにスタンドエネルギーも放射(漏出)している。こちらは射程内の生物やスタンドに対して直接何かの効果を与えることはないが、サンの周囲の空間に溜まり続けて、サン本体が選んだ特定範囲を包み込む。そしてこれは3つの効果をもたらす。

1つめの効果は、サンが生み出す「熱」を外の空間に逃がさず溜め込んでいくことである。本来なら地上のある一帯だけが極度に暖められると、その熱は空気とともに外の空間へと急速に流れていってしまう。しかしサンのスタンドエネルギーが作り出す空間領域は、これを極力抑えることができる。これによりサンの熱は屋外でありながら、サウナのように限られた一帯だけを限界まで加熱することができる。

2つめの効果は、サン本体から太陽のスタンドへの射程距離を増大させることである。本来ならサンほどのパワーを持つスタンドの射程距離は数m以内が限界のはずである。しかしサンが周囲に溜め込んでいくスタンドエネルギーは、花京院典明のスタンド「ハイエロファントグリーン」が射程増加に利用するケーブル状のスタンド体をさらに太くしたような効果を発揮する。この結果サンは自分が生み出す「熱の空間」の中であれば、スタンドを遠く離してもパワーの維持と制御が可能となる。

3つめの効果は、「熱と光の空間」内から見える外の景色を違和感なく見せることである。このスタンドに限らず光球から放射される光は距離の2乗に反比例して光量が減り、このスタンドがどれだけパワフルであろうと、作中のように数km先の地面や雲までを真昼のように照らすのは不可能である。これによる風景の不自然さを解消するため、おそらくサンのスタンドエネルギーが作り出す空間には、サンから放出され空間外の物体に反射して空間内に入ってきた弱々しい光を違和感なく増幅する効果がある。この効果によって空間内から見る周囲の風景は融和され、まるで本物の太陽が大地と空をどこまでも照らしているように見せかけることができる。

上記の3つの効果によって、サン本体は作中の攻撃舞台である夜中の砂漠で、攻撃対象であるジョースター一行から100m以上離れた安全なところにサンを置き、そこから彼らのいる一帯半径数10mほどを集中的に加熱していた(なおサン本体もその範囲内にいなくてはならないため、こちらは何らかの手段で隠れる必要がある)

サンによる攻撃範囲の気温の上昇は摂氏70℃にも及び、暑さに強い砂漠の生物でも直射日光の中にいれば数分と保たない。そして実体化しているサンの熱は、前述したとおりスタンド使いにも100%の効果で伝わり、サウナのようにその肉体を熱で蝕む。

ちなみに「サン」の熱と光の能力は、「砂漠」でこそ最も真価を発揮できる。まず砂漠の「白い砂」は太陽光を良く反射するため、熱が大地に吸収されず空気の温度が上がりやすくなる。また全体的に「平坦」な地形の砂漠では、敵が隠れられる日陰が少ないのはもちろん、地面や建造物や草木など地上物全体の表面積が凸凹した所より少ないぶん、地上物に吸収される熱が少なくなり、これまた空気の温度が上がりやすくなるためである。

また、作中ではサンの攻撃中に花京院や承太郎が「誰かの視線」を感じていたが、これは尾行していたサン本体の視線というよりは、彼らを覆い包んでいるスタンドエネルギーを肌で弱く感じ取っていたためと思われる。

さらにサンには太陽光の熱以外に、レーザーのような熱線を撃ち出すという攻撃手段もある。この光線は太陽のスタンドを収縮させて内部の圧力を高めてから、表面に小さな穴を開くことで水鉄砲のように撃ち出される。光線は直径3cmほどで、球体の中心から真っ直ぐ伸びる軌道で撃ち出され、ほぼ減衰せずに100m以上先まで届く。その熱の力は生物の肉体なら容易く貫き、岩や金属でも深さ数cmほどの穴を穿てる。またこの光線の破壊力はスタンド相手にも有効である。

サン本体のアラビア・ファッツは、でっぷりと膨らんだ丸い腹が目立つ胴体に頭と細い手足を付けたような小男である。サンは前述したとおり、本体の生命エネルギーを増幅して漏出させているスタンドであり、つまりサンを出現させている間、本体はカロリーを急速に消費する。彼は腹に溜め込んだ脂肪でそのエネルギーを賄っており、作中では本物の太陽の日没時からスタンドを出現させ続けて、2時間以上が経過してもまだまだ余裕がある風であった。

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