マジシャンズレッド MAGICIAN'S RED:魔術師の赤
Tarot-No.1

2017/02/23改訂

本体名:モハメド・アヴドゥル

タロット占い師、プロフィールJC20巻P26

能力:「スタンドの炎」を生み出し操る

スタンド形成法射程距離パワー
身体・能力加形体 2m

当ページの要点

  • ジョジョ3部に登場するスタンドは全て、「生命の樹」と呼ばれる図形に関係している。
  • タロットのスタンドは生命の樹の図上で「変化」を表すパスに対応する。
  • 「魔術師」のパスは成長するものが、外部のものと相互干渉するための「開放」を行う。
  • マジシャンズレッドは物体に強力な熱刺激を与える「スタンドの炎」を生み出す能力を持つ。

タロット解説

ジョジョ3部に登場する22枚の「タロットカード」は、占いの道具としてよく知られ、それぞれのカードにはさまざまな解釈が与えられている。そしてその解釈法の1つに、『生命の樹』と呼ばれる図像を絡めたものがある。生命の樹とは、宇宙・生命・人類・個人など、この世界の中で進化・成長する全てのものが、成長する際に辿る変化の共通性を図像化したものである。「セフィロトの樹」とも呼ばれるその図は、「状態」を表す10個の円形「セフィラ」と、円形同士を結び「変化」を表す22本の小径「パス」から成り、タロットはパスの方に対応している。

そして22枚のタロットのうち、「遊離せしもの」を暗示する「オシリス」のセフィラと、「開放せしもの」を暗示する「ゲブ」のセフィラを結ぶ「魔術師」は、「構成要素の開放」を暗示するカードである。

生命の樹において「愚者」のパスの反対側に位置する「魔術師」は、「愚者」で行われる「進入」への対応として「開放」を行うパスである。またこの開放には、「オシリス」のセフィラを挟んで「魔術師」の前段に位置する、「審判」のパスで行われた「補強」も大きく関係する。

「審判」のパスを経たオシリスでの成長体は、引っ越しで運ばれる荷物のように「梱包」されたような状態にある。そして「愚者」によって開始すべき分野へと進入した成長体は、その時点ではまだ梱包が「壁」となって、その分野内にあるものと充分に「相互干渉」することができない。

そこで荷物を開梱するように成長体の補強を取り払うのが、「魔術師」のパスで行われる「開放」である。これによって成長体は、卵の殻を破った雛鳥が外界の刺激に晒されるように、分野内で成長を始める体勢が整うことになる。

ただし分野からの刺激が強すぎる場合には、成長体は補強をある程度残したり、新たな補強を加えたりすることもある。これは例えばカンガルーの母胎から産まれた子供がしばらくは袋の中で過ごしたり、人が日光の強い場所でサングラスをかけるようなものである。このように、成長体と分野内の刺激の力関係によって開放の度合いを調節することは、成長体が程よい難易度で堅調に成長することにつながる。

人が新しい何かを始めてそこで成長するには、当然のことだが積極性を持って柔軟に取り組むことが重要である。氷が周りの物体と交わることがないように、行動しない者は何も得ることができず、頭が固定観念で凝り固まった者は新しいものを吸収することができない。

無論そういった積極性は時に失敗に終わり、エネルギーの無駄やネガティブな思い出になったりもする。しかしそれは成功に必要な過程である。失敗すること、間違うこと、自分が傷つくこと、周りに迷惑をかけることを恐れない覚悟と熱意が、遠い成功へと向かう最初の一歩となる。そしてその意志は自分ひいては世界を、さらなる成長に導くだろう。

スタンド解説

「スタンドの炎」を生み出し操る能力を持つ、猛禽の頭部を持つ人型スタンド。その全身の筋肉は格闘家のように逞しく、上半身はほぼ素肌を晒し、下半身は体毛でズボンのように覆われている。またその指先の爪は猛禽のように鋭く尖り、猛禽の頭部には大きな眼と大きなクチバシがある。

本体のアヴドゥルは「占い師」を生業としており、「タロットカード」を商売道具として使っている。ただし彼のタロットへの理解は、世間一般の占い師を特に上回るものではなく、タロットを使って未来を正確に予言するといったこともできない。

彼の占いには(「スタープラチナ」を名付けた時のように)多少は神秘的な力もあるが、その占いはどちらかというと、迷いを持った客を力強い言葉で激励し、行動する気力を湧かせるためのものである。そしてその精神性ゆえに彼は、「力ある言葉」のように「スタンドの炎」を吐き出す能力を獲得する。

いわゆる「スタンドエネルギー」とは、「物質への作用」が可能となった生命エネルギーである。それは時に人の形を取ってその手足で物質を動かし、時に弾ける火花のように分子レベルで物質に作用する。そしてそのパワーは、スタンドエネルギーが現実世界側に強く開放され、「露わ」になっているほど強くなる。

またスタンドエネルギーが他の物体と相互干渉する時のパワーは、相手の物体に「霊的な抵抗力」があると、そのぶん弱められてしまう。スタンド能力は命のない「物質」に対しては100%の効力を発揮できるが、一方で「スタンド使い」やその「スタンド体」に対しては、その効力が極端に落ちてしまう性質を持つ。

マジシャンズレッドのスタンドエネルギーは、体内ではそれなりに安定しているが、体外に解き放たれると分子レベルで激しく運動し始める特性がある。そしてそのスタンドエネルギーは赤から橙の暖色系の発光を伴って、「炎」の姿をとることになる。

マジシャンズレッドはこの炎を主に、大きな口から呼気とともに大量に吐き出すことで強力な炎として生み出している。またこの炎は手足から発生させて、パンチや蹴りにまとわせることもできる。ただしマジシャンズレッドが一度に維持できる炎の「量」はあまり多くはなく、その総量は一つ所にまとめて維持する場合には人間一体の体積分ほどであり、あちこちに分散させて維持する場合はさらに少なくなる(つまりスタンドの炎で周囲一帯を火の海にするようなことはできない)。

なお口から吐き出された炎には、ロウソクの芯のように中心に固体の「核」がある。そしてマジシャンズレッドはこの炎を、まるで音の繋がりから成る「言葉」のように、炎の核が数珠つながりになった「紐状の炎」として吐き出すことが多い。

マジシャンズレッドの炎はそれが触れた物体に「強力な熱」を与えて燃やしあるいは焼き、狭い場所であれば気温もある程度上げる。またその「スタンドの炎」は、空気がない場所や水中でも関係なく燃え続け、また上方や風下に勝手に向かうこともなく、アヴドゥルの意のままに操れる。なお「スタンド」であるその炎は当然スタンド使い以外の人間には見えないが、ただしスタンドの炎に熱を与えられた物体自体が「発火」して物理的な炎が生じれば、それは一般人の目にも見え、またアヴドゥルにも制御はできない。

マジシャンズレッドの炎が与える熱の力は、命のない「物質」に対しては非常に強力で、木やプラスチックであれば一瞬で粉々に焼き尽くし、鉄などであっても容易く焼き溶かせる。しかし一方で、スタンド能力への抵抗力を持つ「スタンド体」や「スタンド使い」に対しては、その熱の力は大ざっぱに100分の1以下にまで落ちてしまう。このためマジシャンズレッド最強の炎技を敵スタンド使いがまともに食らったとしても、その肉体が焼き尽くされて消し炭になるようなことはない。

ちなみにいったん発火したマジシャンズレッドの炎は、その後でマジシャンズレッドが触れればその体にもダメージを与えてしまう。マジシャンズレッドの顔の巨大なクチバシは、口から炎を吐き出す際の炎熱に耐えるために、口周りのスタンド体が適応し硬質化した結果と推測される。ただそれでも炎熱はクチバシを伝わってクチバシに接する頬肉にわずかなダメージを与え、それは本体アヴドゥルの頬にも線となって表れている。

■使用技■

◆レッド・バインド(赤い荒縄)◆
マジシャンズレッドが口から吐き出す紐状の炎をスタンドの手で操り、敵に巻き付けたりする技。「縄」と呼ばれていることからこの炎は紐状の炎を何本か束ねているようである。熱刺激を発するその縄は、敵に炎熱のダメージを与えられるのはもちろん、有刺鉄線のように相手の抵抗を本能的にためらわせる効果があり、強く相手を束縛できる。
→JC13巻「スタープラチナ」戦、JC19巻「ジャッジメント」戦
◆クロスファイヤーハリケーン◆
人間の身長ほどもある巨大なアンク型(♀に似た形)の炎塊を作り出し、それを敵に投げつける技。マジシャンズレッドが作り出す炎の中で最強の攻撃力を持つ(ちなみに「アンク」は古代エジプト語で「生命」を意味する)。
これを放つ時、マジシャンズレッドは口の前で両腕を交差した姿勢をとり、その場で竜巻のように回転しながら、腕の交差部位に紐状の炎を吹き付け続ける。せき止められた炎は水飴細工のように、交差部位の上下左右に漏れ出しながらも一つの塊を保ち続けてアンク型を形成し、しかる後に両腕を胸の辺りまで下ろすと遠心力で飛び出し敵へと飛んでいく。
強烈に光り輝くその炎塊は、敵がまともに食らえば全身火傷で再起不能にできるほどの力がある。またこの炎塊は応用技として、腕に炎を吹き付けて生成する際に、「層」を設けて複数枚のアンクを作り、それらを一時に飛ばすこともできる。こちらは「クロスファイヤーハリケーンスペシャル(C・F・H・S)」と名付けられており、作中でのその分割数は「7つ」である。
→JC14巻「シルバーチャリオッツ」戦
◆生物探知機◆
その名のとおり、生物探知能力を持つ炎を作り出す技。スタンドの両手を胸の前でバスケットボールを持つかのように構え、そこに炎を吹きつけることで形作られる。前後左右上下に直交する3本の棒状の炎の各両端に、6つの炎が灯された形状を持つ。
この探知機は半径15m以内の「物体の動き」や「生物の呼吸」などに反応してそれに近い炎が激しく揺れ動く性質を持ち、隠れている敵やスタンドの発見に役立てられる。
→JC26巻「ティナー・サックス」&「クリーム」戦

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